エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬

文字の大きさ
11 / 150

11話

しおりを挟む
「ッ!? と、止まれ! 止まれーーー!」

 街の入り口で番兵が両手を振り馬車を止める。

「こ、これはいったい何事だ!?」

「兵隊さん! 俺たちゃ急ぎなんだ、入れてくれ!」

「街は疫病だらけだ。拡大を防ぐためにも理由がなければ入れることはできん」

「その薬を持ってきたんだよ!」

「医者すら手が出せないというのに薬があるわけないだろう!」

 外から言い争う声が聞こえるとティーナが身を乗り出した。

「驚かせてしまってすみません! 私はティーナ・レブラント、ファーデン家へ嫁ぐためこちらにくる矢先、疫病が発生したとお聞きし薬をお持ちしました!」

「レブラント? そういえば使いが来たら知らせろと――」

「そんなことより今は一刻を争う状況なんです! どうかここを通してください!!」

「わ、わかりました。中は酷い状態です……お気をつけて」

 街に入るとあちこちで人が倒れている。

「おい、しっかりしろ」

 倒れていた男性に薬を飲ませると変色していた体はすぐに元通りになっていく。

「あれ、俺は……」

「もう大丈夫、薬を持ってきたから安心してくれ」

「あ、ありがとうございます! あ、あの、教会に重病者が集められていて私の妻もそこに……どうかお助けください!」

「わかった、なんとかしてみる」

 広場に止められた馬車を中心に村人たちが薬を配り始めている。

 ここは任せても大丈夫みたいだな。

「ティーナ、教会に重病者が集められているらしい。俺はそっちへ向かう!」

「ワン!」

 アンジェロが駆け寄ってくるとティーナはしっかりと頷いた。

「わかりました! こちらが落ち着いたらすぐに私たちも向かいます!」

 教会の扉を開けると大勢の人が寝かされ、手当てをしていたシスターがこちらに気付く。

「どなたですか……ここは危険です。早く……出ていってください」

 俺を追い出そうと訴えるシスターの顔はすでに変色していた。

 この人……よくこの状態で……。

「薬を持ってきた! あなたもすぐにこれを飲んでくれ!」

「特効薬はないはず……それに、ここにはもう手の施しようのない方々でいっぱいです……」

「大丈夫、これは絶対に治る! 怪しいモノじゃない、えーっとこの薬は――美味いッ!」

 薬を飲み干した俺を、シスターは眉間にしわを寄せたままジッとみる。

 くそ、今一つ信用してもらえないか!

「ワンッ!!!!」

 アンジェロの声が教会に響く。

 なんだ……今、一瞬何かが変わったような――。

「い、今の気配は神獣様!? ま、まさか……あなたは聖人様なのですか!?」

 聖人……? なんのことか知らんが――。

「とにかくこれを飲んでくれ、飲めば助かるんだ!」

「これが神の思し召しなのですね……最後までお仕えして、本当によかった……」

 シスターは涙を流し、俺から薬を受け取ると一気に飲み干した。

「――――あれっ? か、体が……奇跡でしょうか……」

「よし、このまま全員治すぞ!」

「は、はい!」

――――

――

「ふー、これで最後だな」

「本当に……治ったんだ……!」

「奇跡よ、聖人様が奇跡を起こしてくださったのよ!」

 教会に歓喜の声が響くとみんなは俺に向かって頭を下げる。

 そんなたいそれたものじゃないんだがな。

「皆さん、ほかに病気の人がいれば街の広場に集めてください。そこで薬を配っています」

 一通り説明を終えるとアンジェロと広場へ戻る。

「ティーナ、教会のほうはもう大丈夫だ」

「えっ、もうですか!?」

 やはり量だけならこっちのほうが多いみたいだな。

「俺もすぐ手伝う、何をすればいい?」

 ティーナに指示を仰ごうとしているとエレナさんが走ってくる。

「お嬢様大変です! リッツさんもちょうどよかった、すぐに来てください!」

 エレナさんの後を追うとその先では赤子を抱えた夫婦がいた。

「エレナ、いったいどうしたの?」

「お嬢様、この赤子はもう薬をほとんど飲み込めない状態で、私たちではどうにも……」

「お願いです! どうか、どうかこの子をお助け下さい!」

 懇願されたティーナは一歩後退る。

「そ、そんな…………リッツさん! 何か方法はないですか!?」

 あるにはあるが……あれは……。

「ワン! ワン!」

 アンジェロが俺の眼をジッと見つめてくる。

 そうだな、ここで使わずにどこで使うというんだ。

「みんなに一つお願いがある、今からみせる薬だけは絶対に他言しないでくれ」

 俺は鞄からエリクサーを取り出すと数滴だけ赤子に飲ませた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

処理中です...