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12話
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急遽作られたテントの中にエレナさんが入ってくる。
「この子で最後です」
ぐったりと動かない少年にエリクサーを数滴飲ませると光に包まれていく。
「あれ、お姉ちゃんだれ……」
「もう大丈夫よ、病気は治ったからお父さんとお母さんのところに戻りなさい」
ティーナが丁寧に促すと男の子はお辞儀をしてエレナさんと出ていった。
「これでひと段落着いたな」
「お疲れさまでした。あの、リッツさんがいなかったら今頃どうなっていたか……」
「いや、みんなの協力があったからだよ。お前もな」
「ワフッ」
俺一人じゃここまでやれなかっただろうな。
アンジェロを撫でまわすと二人で外へ出る。
「私はファーデン家の使いである! こちらにティーナ・レブラント嬢はおられるか!?」
馬上から叫ぶ人の元へティーナとエレナさんが向かう。
「は、はい! 私がティーナです!」
「おぉご無事でしたか! 本来であれば出迎えすべきところ、疫病が広がり迂闊に動くことができなくなってしまい……大変申し訳ありませぬ。ところで村の者たちが薬を持ってきたとお聞きしたのですがこれはいったい?」
ティーナたちの元に村人が押し寄せてくる。
「聖人様だよ! 聖人様が持っていた薬をティーナ様が譲ってくれるよう交渉したんだ!」
「この国へ来たばかりだというのに支度金まで出してくれて……」
「その聖人様というのはどこにいるのだ?」
村人たちに合わせティーナたちも一斉に俺をみた。
はっ……?
「ワン!」
俺の変わりにアンジェロが返事をする。
「そこの者もティーナ嬢と共に同行してもらってもいいだろうか?」
「いいですけど……ちょっと訳ありですよ俺」
「それならば大丈夫だ。我が主はそんな小さなことなど気にはせぬ」
おいおい、ヤバい貴族なんじゃないだろうな……。
案内された馬車へと乗り込む。
「あの、巻き込んでしまったみたいで申し訳ありません」
膝にアンジェロを乗せたままティーナは謝罪した。
「気にするな。それよりもファーデン家ってどんな人たちなんだ?」
「それが……私もよく知らないのです。エレナは何か知ってる?」
「伯爵家でありながら人柄はずいぶんと変わっている、そうお聞きしたことがあります」
「ふーん、その変わっている人たちがなんでティーナを迎え入れようと思ったんだろうな」
やっぱりスキルなのかな。どうしてもほしかったスキルを手に入れたくてティーナを――。
エレナさんが俺を睨んでいる。
「あーごめん! 気になっただけで俺には関係なかったね!」
「……昔、一度だけお父様とお母様が私のパーティを開いてくれたときがありました。そのときどうやらご子息の方がいたらしく、私を気にかけてくれていたらしいのです」
貴族は婚約だけでも早いって聞くしそんなもんなんだろうな。
ティーナが苦笑いしながらアンジェロを撫でているとエレナさんは手を叩いた。
「さ、理由はどうあれお嬢様はこれから嫁ぐ身、相手方へ失礼があってはいけません。最低限、作法だけでも思い返しましょう」
「え~もうほとんど覚えてないよぅ……確か立っているときは左手を上に重ねて……あー! どうしよう、服が汚れてる!」
「宿に行く暇がありませんでしたからね。仕方がありません、水で軽く拭いて誤魔化しましょう。髪もそのままではお転婆と思われてしまいます。少しおろしましょう」
ティーナの体裁が整う頃、馬車は歩みを止めた。
「ご到着致しました。足元にお気をつけて」
馬車の扉が開けられるとアンジェロに続きエレナさんが外へ出る。
「落ち着いて、深呼吸だ」
「は……はい!」
ティーナは深呼吸すると馬車を降りた。
お~でかい屋敷だな……それに草花があんなに!
「お待ちしておりましたティーナ様。そして――聖人様と呼ぶべきでしょうか?」
「俺はリッツだ、聖人なんてやめてくれ」
「ほっほっほ、左様でしたか。私は執事のバトラと申します。それでは屋敷へ参りましょう」
「この子で最後です」
ぐったりと動かない少年にエリクサーを数滴飲ませると光に包まれていく。
「あれ、お姉ちゃんだれ……」
「もう大丈夫よ、病気は治ったからお父さんとお母さんのところに戻りなさい」
ティーナが丁寧に促すと男の子はお辞儀をしてエレナさんと出ていった。
「これでひと段落着いたな」
「お疲れさまでした。あの、リッツさんがいなかったら今頃どうなっていたか……」
「いや、みんなの協力があったからだよ。お前もな」
「ワフッ」
俺一人じゃここまでやれなかっただろうな。
アンジェロを撫でまわすと二人で外へ出る。
「私はファーデン家の使いである! こちらにティーナ・レブラント嬢はおられるか!?」
馬上から叫ぶ人の元へティーナとエレナさんが向かう。
「は、はい! 私がティーナです!」
「おぉご無事でしたか! 本来であれば出迎えすべきところ、疫病が広がり迂闊に動くことができなくなってしまい……大変申し訳ありませぬ。ところで村の者たちが薬を持ってきたとお聞きしたのですがこれはいったい?」
ティーナたちの元に村人が押し寄せてくる。
「聖人様だよ! 聖人様が持っていた薬をティーナ様が譲ってくれるよう交渉したんだ!」
「この国へ来たばかりだというのに支度金まで出してくれて……」
「その聖人様というのはどこにいるのだ?」
村人たちに合わせティーナたちも一斉に俺をみた。
はっ……?
「ワン!」
俺の変わりにアンジェロが返事をする。
「そこの者もティーナ嬢と共に同行してもらってもいいだろうか?」
「いいですけど……ちょっと訳ありですよ俺」
「それならば大丈夫だ。我が主はそんな小さなことなど気にはせぬ」
おいおい、ヤバい貴族なんじゃないだろうな……。
案内された馬車へと乗り込む。
「あの、巻き込んでしまったみたいで申し訳ありません」
膝にアンジェロを乗せたままティーナは謝罪した。
「気にするな。それよりもファーデン家ってどんな人たちなんだ?」
「それが……私もよく知らないのです。エレナは何か知ってる?」
「伯爵家でありながら人柄はずいぶんと変わっている、そうお聞きしたことがあります」
「ふーん、その変わっている人たちがなんでティーナを迎え入れようと思ったんだろうな」
やっぱりスキルなのかな。どうしてもほしかったスキルを手に入れたくてティーナを――。
エレナさんが俺を睨んでいる。
「あーごめん! 気になっただけで俺には関係なかったね!」
「……昔、一度だけお父様とお母様が私のパーティを開いてくれたときがありました。そのときどうやらご子息の方がいたらしく、私を気にかけてくれていたらしいのです」
貴族は婚約だけでも早いって聞くしそんなもんなんだろうな。
ティーナが苦笑いしながらアンジェロを撫でているとエレナさんは手を叩いた。
「さ、理由はどうあれお嬢様はこれから嫁ぐ身、相手方へ失礼があってはいけません。最低限、作法だけでも思い返しましょう」
「え~もうほとんど覚えてないよぅ……確か立っているときは左手を上に重ねて……あー! どうしよう、服が汚れてる!」
「宿に行く暇がありませんでしたからね。仕方がありません、水で軽く拭いて誤魔化しましょう。髪もそのままではお転婆と思われてしまいます。少しおろしましょう」
ティーナの体裁が整う頃、馬車は歩みを止めた。
「ご到着致しました。足元にお気をつけて」
馬車の扉が開けられるとアンジェロに続きエレナさんが外へ出る。
「落ち着いて、深呼吸だ」
「は……はい!」
ティーナは深呼吸すると馬車を降りた。
お~でかい屋敷だな……それに草花があんなに!
「お待ちしておりましたティーナ様。そして――聖人様と呼ぶべきでしょうか?」
「俺はリッツだ、聖人なんてやめてくれ」
「ほっほっほ、左様でしたか。私は執事のバトラと申します。それでは屋敷へ参りましょう」
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