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38話
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山頂から見下ろすと魔物がゆっくりだがこちらに進んでいる。
数が多いな……これじゃあ兵が来たとしても被害がでてしまう。
「あれをみてもついてくる気か?」
「はい! リッツ様のお側であればいつでも死ぬ覚悟はできています」
笑顔でそんなことを言われても困るんだが……。こうなりゃ少し本気を出さないとな。
俺は透き通るような見た目をしている草を取り出した。
「リッツ様、その綺麗な草はなんでしょうか?」
「これは朧草といって、ある素材にしか使えないんだが、俺にはもう一つ使い道があってね」
俺は朧草を口に運ぶ。
う~ん瑞々しくて美味しい! これは保存が難しいから本当にこの鞄があってよかった。
「私も一口頂いてよろしいでしょうか?」
「俺以外は食べたって何も効果がないし、それにただの草だよ?」
「構いません。リッツ様の趣向を知るというのは私にとって大切なことですから」
朧草をニエの口元に持っていくと一口だけ齧る。
「瑞々しくてとても美味しいですね」
「お、ニエはこの味がわかるのか!?」
今までどれほど美味い草や葉をみんなに紹介しても、口を揃えていうのは「青臭い」の一言だった。青臭い――良い意味でも悪い意味でも使われる言葉だが、昨今は悪い意味でしか耳にすることがない。
唯一師匠だけは美味しいといってたが、まさかほかにも仲間がいたとは!
「ところで、先ほど仰っていたリッツ様にとっての効果というのは何なのでしょう?」
「俺は『草』というスキルを持ってるんだが実は色々と効果があってな」
俺は近くにあった岩を持ち上げた。
「この通り、『草食』といって食べた草によってバカ力がでる」
「うふふ、面白いスキルですね」
ニエは目の前で小さく拍手する。
力持ちアピールをしてみたが正確には全ての身体能力が向上すると言った方がいい。知っているのは師匠と騎士団のみんなくらいだ。
「アンジェロ、攻撃は俺がやるから後ろで待機して、村の方へ行こうとする魔物がいれば教えてくれ。ヤバくなったらすぐにニエを連れて逃げろ」
「ワフッ!」
アンジェロにニエが乗るのを確認すると俺は岩を魔物に向け投げつけ、すぐに駆け下り魔物の大群に突っ込んでいく。
「はあああぁぁぁッ……でりゃああああああああッ!!」
魔物を殴り飛ばし空いた場所に陣取ると魔物は俺を中心に四方から向かってくる。
さすがに数だけは多いな。
ニエの安全を確認しつつアンジェロと共に魔物を倒していく。相手が悪いとわかったのか残り少ない魔物は四方に散って逃げていった。
「これでもう大丈夫だろう。ニエ、怪我はないな?」
「はい、リッツ様もご無事でよかったです」
帰ろうとしたところで偵察の隊がやってくる。
「聖人様! こ、これはいったい何が!?」
「ちょうどいい、ある程度片付けたんだけど少しだけ逃げられた」
「ある程度って……こ、これがですか?」
兵が指した場所には大量の魔物が倒れていた。
「さすがに疲れたよ。俺は王様にこのことを知らせに戻るからあとは任せていい?」
「はい! 必ずや我々が逃げた魔物どもを倒してみせますので、後はお任せください!」
「万が一何かあればすぐに呼んで。あ、あとこれ、また大群がきたら命を優先に逃げてくれ」
俺は小型の回復薬を出し隊に渡す。
「こ、これが噂の……奇跡の薬……!」
「俺、家宝にしようかな……」
「あぁ、使うのが勿体ないくらいだ。殿下のために取っておくというのも良いだろう」
いや使ってくれよ……。あんたらの殿下にはたくさんプレゼントしてやるから。
薬をもらい浮かれている兵たちの前に隊長が出てくる。
「馬鹿もの! 聖人様は我らに生きて王にお仕えしろと仰って下さったのだ。己の身を軽んじる者に聖人様の奇跡を持つ資格などない!!」
回復薬を持つために必要な資格もないですよ。……もう長居すると面倒そうだな。
「それじゃあみんな、あとは任せたから!」
俺はニエを抱きかかえ、人目のない場所まで走るとアンジェロに乗り城へ戻った。
数が多いな……これじゃあ兵が来たとしても被害がでてしまう。
「あれをみてもついてくる気か?」
「はい! リッツ様のお側であればいつでも死ぬ覚悟はできています」
笑顔でそんなことを言われても困るんだが……。こうなりゃ少し本気を出さないとな。
俺は透き通るような見た目をしている草を取り出した。
「リッツ様、その綺麗な草はなんでしょうか?」
「これは朧草といって、ある素材にしか使えないんだが、俺にはもう一つ使い道があってね」
俺は朧草を口に運ぶ。
う~ん瑞々しくて美味しい! これは保存が難しいから本当にこの鞄があってよかった。
「私も一口頂いてよろしいでしょうか?」
「俺以外は食べたって何も効果がないし、それにただの草だよ?」
「構いません。リッツ様の趣向を知るというのは私にとって大切なことですから」
朧草をニエの口元に持っていくと一口だけ齧る。
「瑞々しくてとても美味しいですね」
「お、ニエはこの味がわかるのか!?」
今までどれほど美味い草や葉をみんなに紹介しても、口を揃えていうのは「青臭い」の一言だった。青臭い――良い意味でも悪い意味でも使われる言葉だが、昨今は悪い意味でしか耳にすることがない。
唯一師匠だけは美味しいといってたが、まさかほかにも仲間がいたとは!
「ところで、先ほど仰っていたリッツ様にとっての効果というのは何なのでしょう?」
「俺は『草』というスキルを持ってるんだが実は色々と効果があってな」
俺は近くにあった岩を持ち上げた。
「この通り、『草食』といって食べた草によってバカ力がでる」
「うふふ、面白いスキルですね」
ニエは目の前で小さく拍手する。
力持ちアピールをしてみたが正確には全ての身体能力が向上すると言った方がいい。知っているのは師匠と騎士団のみんなくらいだ。
「アンジェロ、攻撃は俺がやるから後ろで待機して、村の方へ行こうとする魔物がいれば教えてくれ。ヤバくなったらすぐにニエを連れて逃げろ」
「ワフッ!」
アンジェロにニエが乗るのを確認すると俺は岩を魔物に向け投げつけ、すぐに駆け下り魔物の大群に突っ込んでいく。
「はあああぁぁぁッ……でりゃああああああああッ!!」
魔物を殴り飛ばし空いた場所に陣取ると魔物は俺を中心に四方から向かってくる。
さすがに数だけは多いな。
ニエの安全を確認しつつアンジェロと共に魔物を倒していく。相手が悪いとわかったのか残り少ない魔物は四方に散って逃げていった。
「これでもう大丈夫だろう。ニエ、怪我はないな?」
「はい、リッツ様もご無事でよかったです」
帰ろうとしたところで偵察の隊がやってくる。
「聖人様! こ、これはいったい何が!?」
「ちょうどいい、ある程度片付けたんだけど少しだけ逃げられた」
「ある程度って……こ、これがですか?」
兵が指した場所には大量の魔物が倒れていた。
「さすがに疲れたよ。俺は王様にこのことを知らせに戻るからあとは任せていい?」
「はい! 必ずや我々が逃げた魔物どもを倒してみせますので、後はお任せください!」
「万が一何かあればすぐに呼んで。あ、あとこれ、また大群がきたら命を優先に逃げてくれ」
俺は小型の回復薬を出し隊に渡す。
「こ、これが噂の……奇跡の薬……!」
「俺、家宝にしようかな……」
「あぁ、使うのが勿体ないくらいだ。殿下のために取っておくというのも良いだろう」
いや使ってくれよ……。あんたらの殿下にはたくさんプレゼントしてやるから。
薬をもらい浮かれている兵たちの前に隊長が出てくる。
「馬鹿もの! 聖人様は我らに生きて王にお仕えしろと仰って下さったのだ。己の身を軽んじる者に聖人様の奇跡を持つ資格などない!!」
回復薬を持つために必要な資格もないですよ。……もう長居すると面倒そうだな。
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俺はニエを抱きかかえ、人目のない場所まで走るとアンジェロに乗り城へ戻った。
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