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56話
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まずい、非常にまずいぞこれは……。
「リッツさん! このお饅頭はどうでしょうか!?」
「ダメだ、【カルサス】でもたまに見かけたことがあった!」
「リッツ様、こちらの果物が大変美味しいです!」
「ワフッ!」
「ニエ、ちゃんとお金は払ったんだろうな? 食べてもいいからとにかく探せ!」
俺たちは馬車で【カルサス】へ帰る予定だった。そして現在、【エナミナル】のカーラと来た街に立ち寄っていた。
「リッツさん……何もここまでして探さなくてもいいのでは?」
「エレナさん、俺たちはあくまでティーナの帰省と観光が目的なんだ。お土産を買い忘れたなんていったらみんなが黙っちゃいない……!」
「そ、そうでしょうか?」
エレナさんは知らないんだ。観光というのは『紅蓮の風』にとって一年に一度あるかないかのバカンスだということを――そしてそんな俺たちにとってお土産というのは行けなかった者への労いの証。
もし忘れたなんてことになっていたら……。だが時間がない、もういっそのこと木刀か奇妙なお面でも買って特産品だって言い切るしか――。
「あれ? ……リッツさんじゃないッスか?」
懐かしい声がして振り返るとそこには相変わらず作業着姿のカーラがいた。
「おぉカーラじゃないか! 元気にしてたか?」
「もちろんッス! あれ、そちらの方は?」
「彼女はエレナさん、今知り合いと来てるんだけど、その子の付き人なんだ」
「エレナと申します。以後お見知りおきを」
エレナさんが丁寧にお辞儀をする。
「カーラッス。リッツさんには以前、色々とお世話になったことがあったッスよ」
「よしてくれ、あれは俺のせいでもあったんだから」
挨拶をしているとティーナたちが戻ってくる。
「リッツさん、そちらの方は?」
「ちょうどよかった、紹介するよ」
俺はみんなにカーラを紹介するとカーラもまた自己紹介をした。
「それで、皆さんはここで何をしているッスか?」
「……はっ、そうだった! こんなことしてる場合じゃ、いやこんなことも大事だけど!」
どうしよう……時間がない――。
大慌てで周りに目をやる俺に変わってエレナさんがカーラに説明する。
「色々ありましてこの国で何か良いお土産はないかと探しているんです」
「お土産ッスか……あ、それならちょうどいいのがあるッス!」
カーラに連れられ近くにあった工房に入る。
「リッツさん、本当は完成したら送る予定だったんスけど、これでいいなら持って行ってくれッス!」
カーラが持ってきた木箱には大小様々の鉱石がたくさん入っていた。
「あのときの石――完成したのか?」
「これはまだ試験段階のものであのときのものより小さくて色もないッス……だけど、これからもっと研究して必ず完成させるッス。そしたら一番に送るんで今日はこれで勘弁してくれッス」
「これならお土産にちょうどいいな……カーラありがとう! 本当に助かったよ!」
「へへ、気にしないでくれッス。それよりリッツさん……」
カーラは不思議そうに石を眺めるティーナとニエをみた。
「両手に華みたいッスけど何かあったんスか?」
「誤解だ、ティーナは【カルサス】に嫁いでこっちに帰省に来てたんだ。それに俺たちが観光目的でついてきたってわけ」
「そ、そうッスか。私はてっきり――」
「あら、リッツ様ったらこんな素敵な女性にまで手を付けて。妻である私を放っておくなんて酷いですよ」
「ッ!?」
「ニエ……お前は放っておいてもついてくるだろ。それに誤解を招く言い方はやめろ」
固まったカーラに説明しようとするとエレナさんがきた。
「リッツさん、そろそろ時間がありません。すぐに馬車へ向かいましょう」
「もうそんな時間か! カーラ、また遊びに行くからそのときはよろしくな!」
「えっ、あ、はい! よろしくッス!!」
カーラにもらったお土産を持ち馬車に乗り込むと今度こそ俺たちは帰路に就いた。
「リッツさん! このお饅頭はどうでしょうか!?」
「ダメだ、【カルサス】でもたまに見かけたことがあった!」
「リッツ様、こちらの果物が大変美味しいです!」
「ワフッ!」
「ニエ、ちゃんとお金は払ったんだろうな? 食べてもいいからとにかく探せ!」
俺たちは馬車で【カルサス】へ帰る予定だった。そして現在、【エナミナル】のカーラと来た街に立ち寄っていた。
「リッツさん……何もここまでして探さなくてもいいのでは?」
「エレナさん、俺たちはあくまでティーナの帰省と観光が目的なんだ。お土産を買い忘れたなんていったらみんなが黙っちゃいない……!」
「そ、そうでしょうか?」
エレナさんは知らないんだ。観光というのは『紅蓮の風』にとって一年に一度あるかないかのバカンスだということを――そしてそんな俺たちにとってお土産というのは行けなかった者への労いの証。
もし忘れたなんてことになっていたら……。だが時間がない、もういっそのこと木刀か奇妙なお面でも買って特産品だって言い切るしか――。
「あれ? ……リッツさんじゃないッスか?」
懐かしい声がして振り返るとそこには相変わらず作業着姿のカーラがいた。
「おぉカーラじゃないか! 元気にしてたか?」
「もちろんッス! あれ、そちらの方は?」
「彼女はエレナさん、今知り合いと来てるんだけど、その子の付き人なんだ」
「エレナと申します。以後お見知りおきを」
エレナさんが丁寧にお辞儀をする。
「カーラッス。リッツさんには以前、色々とお世話になったことがあったッスよ」
「よしてくれ、あれは俺のせいでもあったんだから」
挨拶をしているとティーナたちが戻ってくる。
「リッツさん、そちらの方は?」
「ちょうどよかった、紹介するよ」
俺はみんなにカーラを紹介するとカーラもまた自己紹介をした。
「それで、皆さんはここで何をしているッスか?」
「……はっ、そうだった! こんなことしてる場合じゃ、いやこんなことも大事だけど!」
どうしよう……時間がない――。
大慌てで周りに目をやる俺に変わってエレナさんがカーラに説明する。
「色々ありましてこの国で何か良いお土産はないかと探しているんです」
「お土産ッスか……あ、それならちょうどいいのがあるッス!」
カーラに連れられ近くにあった工房に入る。
「リッツさん、本当は完成したら送る予定だったんスけど、これでいいなら持って行ってくれッス!」
カーラが持ってきた木箱には大小様々の鉱石がたくさん入っていた。
「あのときの石――完成したのか?」
「これはまだ試験段階のものであのときのものより小さくて色もないッス……だけど、これからもっと研究して必ず完成させるッス。そしたら一番に送るんで今日はこれで勘弁してくれッス」
「これならお土産にちょうどいいな……カーラありがとう! 本当に助かったよ!」
「へへ、気にしないでくれッス。それよりリッツさん……」
カーラは不思議そうに石を眺めるティーナとニエをみた。
「両手に華みたいッスけど何かあったんスか?」
「誤解だ、ティーナは【カルサス】に嫁いでこっちに帰省に来てたんだ。それに俺たちが観光目的でついてきたってわけ」
「そ、そうッスか。私はてっきり――」
「あら、リッツ様ったらこんな素敵な女性にまで手を付けて。妻である私を放っておくなんて酷いですよ」
「ッ!?」
「ニエ……お前は放っておいてもついてくるだろ。それに誤解を招く言い方はやめろ」
固まったカーラに説明しようとするとエレナさんがきた。
「リッツさん、そろそろ時間がありません。すぐに馬車へ向かいましょう」
「もうそんな時間か! カーラ、また遊びに行くからそのときはよろしくな!」
「えっ、あ、はい! よろしくッス!!」
カーラにもらったお土産を持ち馬車に乗り込むと今度こそ俺たちは帰路に就いた。
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