エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬

文字の大きさ
64 / 150

64話

しおりを挟む
 町は外から来た商人が多く、思ったよりも賑わいを見せていた。

「で、なんでお前までついて来てるんだ」

「気にするな。ルガータにはお前たちを案内してくるといってある」

「子供に心配されるほど方向音痴じゃないぞ……。ていうかリヤンっていくつなんだ? 見た目の割りに口調があってないし、ニエと同じ一族のようだが」

「乙女に歳を聞くとは、礼儀を知らんようだな」

 少女は自分のことを乙女と言わないのを知らないようだな。

 だらだらと歩きながら店を探す。

「まぁよい、私は少なくともお前たちの生まれる前より生きている。訳あって姿はこのままだがな」

「なんだって!?」

 も、もしかして不老不死ってやつ……? いやそんなものあるわけない……ていうかそもそもエリクサーはただの回復薬のはず――。

 俺の反応を気にすることなくリヤンは先を進むと少し先で足を止める。

「さぁ着いたぞ。ルガータと同じで癖はあるが腕は確かだ」

 店に入ると文化が混じり合ったような服がたくさん並んでいた。

「おい、客だ」

 リヤンの声が店内に響くと奥から女性が現れる。

「あぁ? あんたはルガータんとこの……その姿、病気は治ったのかい?」

「この兄ちゃんが治してくれた」

「ふーん……」

 女性は見定めるように俺たちを眺めるとニエを見つめた。

「その髪、あんたら、この子の両親じゃないだろうね?」

「違うよ、この子とはルガータのところであったんだ。ついでにいうが俺たちは成り行きで一緒にいるだけでなんでもないからな」

「押しかけ女房というヤツですね」

 笑顔でニエが付け足すと目の前の店主は溜息を吐く。

 いったいどこでそんな言葉を覚えてくるんだ……。まさか『紅蓮の風』に変なこと吹き込まれてるんじゃないだろうな。

「こんなべっぴんさんに見向きもしないとは、世の中には変な男しかいなくなっちまったのかねぇ。それともあんたまさか――」

 ……なぜそこでリヤンを見る。

「色々と激しかったがそんな趣味があったとはな」

「――はっ? 何言ってんの」

「今衛兵を呼ぶから待ってな」

「ちょ、待て! こいつが暴れるから薬を飲ませるのが大変だっただけだ!」

 そもそも最初から大人しくしてくれればあんなことする必要もなかったんだ。

 どうにか誤魔化しながら事情を説明すると店主はニヤリと笑った。

「冗談だよ。この子がここまで喋れるようになるとはね、私からも礼を言うよ」

「ほんとに勘弁してくれ……」

「すまんすまん! それで、うちに何の用で来たんだい」

「そうだった、ちょっと頼みがあって……」

 俺は鞄から穴が開いた服を取り出す。

「服がほしいんだ。それも普通じゃなくできる限り丈夫な服を」

 女性は服を受け取ると血を気にせず穴の周辺を細かく調べる。

「これはナイフじゃないね……。鋭利なもので一突き……だけど一本じゃない」

 見ただけでそこまでわかるのか。

「あんた、何と戦ってるのか知らないけどこれじゃあ長生きしないよ」

「だったら長生きできるように協力してくれ」

「…………仕方ない。この子の恩もあるからね、ついてきな」

 店主について奥の部屋にいくとそこには異様な布が置いてあった。

「これは……まさか魔物の素材?」

「ご名答。私の裏の顔は魔物の素材を使った生地で服を作る仕立屋さ」

「魔物の素材を服にするなんて聞いたことがないが、そんなこと可能なのか」

「普通じゃ無理だろうね。だが、ルガータと私がいればどんな素材だろうと服に仕立て上げることができる。耐火に耐刃、衝撃吸収までありとあらゆることが可能になるのさ」

 確かに魔物には特徴があり、その素材は鎧や盾、防具として取り付けることによって性能を発揮することはあるがそれを服にするなんて……。

「ま、こんなもの世間に知られれば面倒に巻き込まれかねないから、裏でひっそりとやってるわけだけど。あんた、素材は持ってるかい」

「あ、あぁそれなら」

 俺は大量にある魔物の素材を床に並べた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです

一色孝太郎
ファンタジー
 前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。  これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。 ※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します ※本作品は他サイト様でも同時掲載しております ※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ) ※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...