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64話
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町は外から来た商人が多く、思ったよりも賑わいを見せていた。
「で、なんでお前までついて来てるんだ」
「気にするな。ルガータにはお前たちを案内してくるといってある」
「子供に心配されるほど方向音痴じゃないぞ……。ていうかリヤンっていくつなんだ? 見た目の割りに口調があってないし、ニエと同じ一族のようだが」
「乙女に歳を聞くとは、礼儀を知らんようだな」
少女は自分のことを乙女と言わないのを知らないようだな。
だらだらと歩きながら店を探す。
「まぁよい、私は少なくともお前たちの生まれる前より生きている。訳あって姿はこのままだがな」
「なんだって!?」
も、もしかして不老不死ってやつ……? いやそんなものあるわけない……ていうかそもそもエリクサーはただの回復薬のはず――。
俺の反応を気にすることなくリヤンは先を進むと少し先で足を止める。
「さぁ着いたぞ。ルガータと同じで癖はあるが腕は確かだ」
店に入ると文化が混じり合ったような服がたくさん並んでいた。
「おい、客だ」
リヤンの声が店内に響くと奥から女性が現れる。
「あぁ? あんたはルガータんとこの……その姿、病気は治ったのかい?」
「この兄ちゃんが治してくれた」
「ふーん……」
女性は見定めるように俺たちを眺めるとニエを見つめた。
「その髪、あんたら、この子の両親じゃないだろうね?」
「違うよ、この子とはルガータのところであったんだ。ついでにいうが俺たちは成り行きで一緒にいるだけでなんでもないからな」
「押しかけ女房というヤツですね」
笑顔でニエが付け足すと目の前の店主は溜息を吐く。
いったいどこでそんな言葉を覚えてくるんだ……。まさか『紅蓮の風』に変なこと吹き込まれてるんじゃないだろうな。
「こんなべっぴんさんに見向きもしないとは、世の中には変な男しかいなくなっちまったのかねぇ。それともあんたまさか――」
……なぜそこでリヤンを見る。
「色々と激しかったがそんな趣味があったとはな」
「――はっ? 何言ってんの」
「今衛兵を呼ぶから待ってな」
「ちょ、待て! こいつが暴れるから薬を飲ませるのが大変だっただけだ!」
そもそも最初から大人しくしてくれればあんなことする必要もなかったんだ。
どうにか誤魔化しながら事情を説明すると店主はニヤリと笑った。
「冗談だよ。この子がここまで喋れるようになるとはね、私からも礼を言うよ」
「ほんとに勘弁してくれ……」
「すまんすまん! それで、うちに何の用で来たんだい」
「そうだった、ちょっと頼みがあって……」
俺は鞄から穴が開いた服を取り出す。
「服がほしいんだ。それも普通じゃなくできる限り丈夫な服を」
女性は服を受け取ると血を気にせず穴の周辺を細かく調べる。
「これはナイフじゃないね……。鋭利なもので一突き……だけど一本じゃない」
見ただけでそこまでわかるのか。
「あんた、何と戦ってるのか知らないけどこれじゃあ長生きしないよ」
「だったら長生きできるように協力してくれ」
「…………仕方ない。この子の恩もあるからね、ついてきな」
店主について奥の部屋にいくとそこには異様な布が置いてあった。
「これは……まさか魔物の素材?」
「ご名答。私の裏の顔は魔物の素材を使った生地で服を作る仕立屋さ」
「魔物の素材を服にするなんて聞いたことがないが、そんなこと可能なのか」
「普通じゃ無理だろうね。だが、ルガータと私がいればどんな素材だろうと服に仕立て上げることができる。耐火に耐刃、衝撃吸収までありとあらゆることが可能になるのさ」
確かに魔物には特徴があり、その素材は鎧や盾、防具として取り付けることによって性能を発揮することはあるがそれを服にするなんて……。
「ま、こんなもの世間に知られれば面倒に巻き込まれかねないから、裏でひっそりとやってるわけだけど。あんた、素材は持ってるかい」
「あ、あぁそれなら」
俺は大量にある魔物の素材を床に並べた。
「で、なんでお前までついて来てるんだ」
「気にするな。ルガータにはお前たちを案内してくるといってある」
「子供に心配されるほど方向音痴じゃないぞ……。ていうかリヤンっていくつなんだ? 見た目の割りに口調があってないし、ニエと同じ一族のようだが」
「乙女に歳を聞くとは、礼儀を知らんようだな」
少女は自分のことを乙女と言わないのを知らないようだな。
だらだらと歩きながら店を探す。
「まぁよい、私は少なくともお前たちの生まれる前より生きている。訳あって姿はこのままだがな」
「なんだって!?」
も、もしかして不老不死ってやつ……? いやそんなものあるわけない……ていうかそもそもエリクサーはただの回復薬のはず――。
俺の反応を気にすることなくリヤンは先を進むと少し先で足を止める。
「さぁ着いたぞ。ルガータと同じで癖はあるが腕は確かだ」
店に入ると文化が混じり合ったような服がたくさん並んでいた。
「おい、客だ」
リヤンの声が店内に響くと奥から女性が現れる。
「あぁ? あんたはルガータんとこの……その姿、病気は治ったのかい?」
「この兄ちゃんが治してくれた」
「ふーん……」
女性は見定めるように俺たちを眺めるとニエを見つめた。
「その髪、あんたら、この子の両親じゃないだろうね?」
「違うよ、この子とはルガータのところであったんだ。ついでにいうが俺たちは成り行きで一緒にいるだけでなんでもないからな」
「押しかけ女房というヤツですね」
笑顔でニエが付け足すと目の前の店主は溜息を吐く。
いったいどこでそんな言葉を覚えてくるんだ……。まさか『紅蓮の風』に変なこと吹き込まれてるんじゃないだろうな。
「こんなべっぴんさんに見向きもしないとは、世の中には変な男しかいなくなっちまったのかねぇ。それともあんたまさか――」
……なぜそこでリヤンを見る。
「色々と激しかったがそんな趣味があったとはな」
「――はっ? 何言ってんの」
「今衛兵を呼ぶから待ってな」
「ちょ、待て! こいつが暴れるから薬を飲ませるのが大変だっただけだ!」
そもそも最初から大人しくしてくれればあんなことする必要もなかったんだ。
どうにか誤魔化しながら事情を説明すると店主はニヤリと笑った。
「冗談だよ。この子がここまで喋れるようになるとはね、私からも礼を言うよ」
「ほんとに勘弁してくれ……」
「すまんすまん! それで、うちに何の用で来たんだい」
「そうだった、ちょっと頼みがあって……」
俺は鞄から穴が開いた服を取り出す。
「服がほしいんだ。それも普通じゃなくできる限り丈夫な服を」
女性は服を受け取ると血を気にせず穴の周辺を細かく調べる。
「これはナイフじゃないね……。鋭利なもので一突き……だけど一本じゃない」
見ただけでそこまでわかるのか。
「あんた、何と戦ってるのか知らないけどこれじゃあ長生きしないよ」
「だったら長生きできるように協力してくれ」
「…………仕方ない。この子の恩もあるからね、ついてきな」
店主について奥の部屋にいくとそこには異様な布が置いてあった。
「これは……まさか魔物の素材?」
「ご名答。私の裏の顔は魔物の素材を使った生地で服を作る仕立屋さ」
「魔物の素材を服にするなんて聞いたことがないが、そんなこと可能なのか」
「普通じゃ無理だろうね。だが、ルガータと私がいればどんな素材だろうと服に仕立て上げることができる。耐火に耐刃、衝撃吸収までありとあらゆることが可能になるのさ」
確かに魔物には特徴があり、その素材は鎧や盾、防具として取り付けることによって性能を発揮することはあるがそれを服にするなんて……。
「ま、こんなもの世間に知られれば面倒に巻き込まれかねないから、裏でひっそりとやってるわけだけど。あんた、素材は持ってるかい」
「あ、あぁそれなら」
俺は大量にある魔物の素材を床に並べた。
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