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93話 ミレイユサイド
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馬車が古びた教会の敷地へ入っていくと数人の男が出てくる。
「やっときたな、そろそろ材料がなくなる頃だったぞ」
「王様もいい加減うるさかったし数さえ揃えときゃ少しは静まるだろう」
男たちはシルエの乗った馬車を止めると荷を降ろし始めた。
「あんたらのリーダーとはいつ合わせてくれるんだ」
「わかってるからちょっと待ってろ」
男が教会に入り、しばらく経つとシルエは教会の中へ案内される。
「アルフレッド様、連れて来ました」
「あんたがリーダーか? いい加減俺たちを組織に入れる気にはなったか」
「そうだな、君が持ってきたモノ次第では考えてやろう」
金髪の男性が立ち上がるとシルエは袋からクサモドキを出した。
「こいつはボスからだ。どうだ、こんな草見たことないだろう」
「それはまさか――」
気が付くとシルエの側にアルフレッドが立っており、クサモドキを手に取り眺めている。
「ッ!!」
「なかなか面白いモノを持ってきたじゃないか、今後の働きに期待しているぞ」
「あっ、あぁ……」
シルエの肩を軽く叩きアルフレッドは奥に消えていった。
「おめでとう、これであんたらは俺たちの仲間だな」
「それで、まず何をすればいい?」
「特に変わることはない。今までどおりさ」
「積荷を運ぶだけで数日だぞ、いつまでこんな雑用ばかりさせるつもりだ」
「わかってないな。その働きがいずれ世界を、そして人々を救うんだよ。聖者様とアルフレッド様がいれば世界の変革はもうすぐだ」
「……誰だその聖者ってのは?」
「我々にエリクサーの存在を教えてくれた方だよ。アルフレッド様と聖者様がいれば人類は新たな進化を遂げる。不死という、命に縛られることのない、自由な存在へとな」
「おいおい、そんな夢物語みてぇな話信じろってのか」
「聖者様に会えばお前も信じるさ。そのためには多少の犠牲などちっぽけなもの」
男はボロボロになった教会のシンボルを見上げる。
「こんなちまちまと……組織がやれることなんざたかが知れてるじゃねぇか」
「せっかくだ、入ったばかりのお前に良いことを教えてやろう。近日中に【エナミナル】は滅ぶことになる」
シルエは一瞬だが何を言われたのかわからないように固まった。
「あの国は軍事国家だぞ。そんな簡単に落とせるわけがねぇ、大口叩くのもいいがもっと現実味のある話をしてくれ」
「はっはっはっは! 国に帰って知らせを待ってるといい」
シルエは冗談とも聞こえる言葉を背に馬車へ戻ると近くの村で宿を取った。
◇
「国落としか……あいつならやりかねないな」
「腕の立ちそうなやつは何人か見掛けたが、国一つを滅ぼすなんて絶対に無理だろ」
宿屋の一室でシルエから話を聞いたウェッジは眉一つ動かさず表情は硬いままだった。
「あいつにとって組織など駒の一つに過ぎん、戦力に入れてないんだろう」
「だったら尚更だ、聖者ってのがどんなヤツか知らんが二人で落とせるほど国は甘くねぇ」
シルエが納得できないでいると部屋の扉が開かれミレイユが入ってくる。
「騎士団の到着は明日になるから、合流したら行くわよ」
「団長、ついでに悪いというかいつも通りというか、そんな知らせがある」
ウェッジが促すと、シルエはミレイユに教会で聞いた話を説明した。
「……わかった。これが終わったら騎士団に引き継いで、私たちはすぐに【エナミナル】へ向かいましょう」
「お、おい、こんな話を信じるってのか!?」
ミレイユは静かに溜め息をついた。
「昔、『ヴェーダ』の一部が村を狙っていると報告が入ってね。すぐに向かったんだけど、着いたときには村人は殺され、薬草や薬は強奪された後だったわ」
「目的のためには手段を選ばないってことか」
重苦しい空気のなかウェッジは組んでいた腕を解く。
「だが、今回は手がない訳じゃない。なんたってあんたが情報をとってきてくれたからな」
「しかしここから【エナミナル】となると……馬を走らせればなんとかなるかもしれないが、それほど早く事が片付くだろうか」
「ま、今は焦っても仕方ないわ。明日に備えてゆっくり休みましょう」
二人が出て行くとシルエは窓の外を眺めた。
「やっときたな、そろそろ材料がなくなる頃だったぞ」
「王様もいい加減うるさかったし数さえ揃えときゃ少しは静まるだろう」
男たちはシルエの乗った馬車を止めると荷を降ろし始めた。
「あんたらのリーダーとはいつ合わせてくれるんだ」
「わかってるからちょっと待ってろ」
男が教会に入り、しばらく経つとシルエは教会の中へ案内される。
「アルフレッド様、連れて来ました」
「あんたがリーダーか? いい加減俺たちを組織に入れる気にはなったか」
「そうだな、君が持ってきたモノ次第では考えてやろう」
金髪の男性が立ち上がるとシルエは袋からクサモドキを出した。
「こいつはボスからだ。どうだ、こんな草見たことないだろう」
「それはまさか――」
気が付くとシルエの側にアルフレッドが立っており、クサモドキを手に取り眺めている。
「ッ!!」
「なかなか面白いモノを持ってきたじゃないか、今後の働きに期待しているぞ」
「あっ、あぁ……」
シルエの肩を軽く叩きアルフレッドは奥に消えていった。
「おめでとう、これであんたらは俺たちの仲間だな」
「それで、まず何をすればいい?」
「特に変わることはない。今までどおりさ」
「積荷を運ぶだけで数日だぞ、いつまでこんな雑用ばかりさせるつもりだ」
「わかってないな。その働きがいずれ世界を、そして人々を救うんだよ。聖者様とアルフレッド様がいれば世界の変革はもうすぐだ」
「……誰だその聖者ってのは?」
「我々にエリクサーの存在を教えてくれた方だよ。アルフレッド様と聖者様がいれば人類は新たな進化を遂げる。不死という、命に縛られることのない、自由な存在へとな」
「おいおい、そんな夢物語みてぇな話信じろってのか」
「聖者様に会えばお前も信じるさ。そのためには多少の犠牲などちっぽけなもの」
男はボロボロになった教会のシンボルを見上げる。
「こんなちまちまと……組織がやれることなんざたかが知れてるじゃねぇか」
「せっかくだ、入ったばかりのお前に良いことを教えてやろう。近日中に【エナミナル】は滅ぶことになる」
シルエは一瞬だが何を言われたのかわからないように固まった。
「あの国は軍事国家だぞ。そんな簡単に落とせるわけがねぇ、大口叩くのもいいがもっと現実味のある話をしてくれ」
「はっはっはっは! 国に帰って知らせを待ってるといい」
シルエは冗談とも聞こえる言葉を背に馬車へ戻ると近くの村で宿を取った。
◇
「国落としか……あいつならやりかねないな」
「腕の立ちそうなやつは何人か見掛けたが、国一つを滅ぼすなんて絶対に無理だろ」
宿屋の一室でシルエから話を聞いたウェッジは眉一つ動かさず表情は硬いままだった。
「あいつにとって組織など駒の一つに過ぎん、戦力に入れてないんだろう」
「だったら尚更だ、聖者ってのがどんなヤツか知らんが二人で落とせるほど国は甘くねぇ」
シルエが納得できないでいると部屋の扉が開かれミレイユが入ってくる。
「騎士団の到着は明日になるから、合流したら行くわよ」
「団長、ついでに悪いというかいつも通りというか、そんな知らせがある」
ウェッジが促すと、シルエはミレイユに教会で聞いた話を説明した。
「……わかった。これが終わったら騎士団に引き継いで、私たちはすぐに【エナミナル】へ向かいましょう」
「お、おい、こんな話を信じるってのか!?」
ミレイユは静かに溜め息をついた。
「昔、『ヴェーダ』の一部が村を狙っていると報告が入ってね。すぐに向かったんだけど、着いたときには村人は殺され、薬草や薬は強奪された後だったわ」
「目的のためには手段を選ばないってことか」
重苦しい空気のなかウェッジは組んでいた腕を解く。
「だが、今回は手がない訳じゃない。なんたってあんたが情報をとってきてくれたからな」
「しかしここから【エナミナル】となると……馬を走らせればなんとかなるかもしれないが、それほど早く事が片付くだろうか」
「ま、今は焦っても仕方ないわ。明日に備えてゆっくり休みましょう」
二人が出て行くとシルエは窓の外を眺めた。
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