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95話
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目の前で話を聞いた貴族たちは顔を合わせると笑い出した。
「あーはっはっはっは!! 突然何かと思えば、【エナミナル】が滅ぶだと? バカも休み休み言え!」
「信じてくれよ! 今のうちに兵をまとめておかないとヤバいんだって!」
「ならなぜ城へ報告しない?」
「時間がないんだって、明日、ここを死守しなければこの国は滅んでしまう」
「魔物程度我らの力だけで十分だ」
貴族たちはまったく聞く気がないどころか酒を手に取り飲み始める。
くそ、こいつらじゃ話にならない……。
「リッツ様、どうでしたか」
「予想通り信じてもらえなかったどころか、連中さんはこんな場所で酒盛りを始めたよ」
呆れてものも言えないが、普通に考えればいきなり国が滅びますなんて言われて、はいそうですかと信じる方がおかしいのかも知れない。
なぜかティーナやファーデン家のみんなは信じそうな気がするが、そういうところが貴族からすれば変なんだろうな。
すっかり夜になり笑い声の響くテントを背に歩いていると兵が近寄ってくる。
「失礼ですが隊長に会って頂けませんか?」
「別にいいがあまり長居はできないぞ」
兵に案内されテントに入ると屈強な身体つきをした男がこちらに目を配る。兵にお願いされ明日起こることをもう一度説明すると、男は顎に手を当てた。
「ふぅむ、にわかには信じ難いな」
「あいにく証拠はないがね。お偉いさんは一切話を聞いてくれなかったよ」
「――わかった。おい、動ける者を集めろ」
「はッ!」
兵は返事をすると外へ出ていった。
「信じるのか? 上が黙っちゃいないぞ」
「…………そうだな。君は『紅蓮の風』を知っているか」
「知ってるも何も、そこの団長は俺の師匠だよ」
「なんと!? あの者たちに弟子がいたとは――。私は以前、別の現場で魔物の討伐をしていたのだが一度彼らの助けを借りたんだ。そこで副団長の男に言われたのだ……。ろくに前線で戦いもしない上について、命を落としたら笑えないと」
上役ってのは目的の達成と被害を考え、最善の策を練るのが役割だと師匠は言っていた。
普通は最前線で頑張るような人っていないんじゃないのかな。……師匠だけは別として。
話を聞いていると隊長は続けて熱く語り始める。
「その言葉で私は目が覚めたのだよ。我らがお仕えしているのは王であり、守るべきは国なのだとな」
「そ、そうか。その考えは間違ってないと思うぞ」
だけど貴族のいざこざは面倒だと聞くし気を付けてね――。
貴族を殴った俺がいえたことじゃないなと一人でツッコんでいると、隊長は机に地図を広げた。
「今から城に使いを出したところでここまでは一日じゃ足りん。我々でなんとかするしかないだろう。すまないが君たちにも協力してもらいたい」
「もちろんさ、心強い味方ができてよかったよ」
俺たちは握手を交わすと地図を見てあれこれと対策を練った。四方から魔物が来るとすれば最低限捨てなきゃいけない場所もでてくる。
兵だって数は少ないしできれば犠牲者を出したくはない。最悪の場合、囮や撤退をしながら対処するということも考えておくべきだ。
ニエとアンジェロを先に休ませ、慣れない守りの手を隊長と入念に考えているとあっという間に空は白けていった。
「あーはっはっはっは!! 突然何かと思えば、【エナミナル】が滅ぶだと? バカも休み休み言え!」
「信じてくれよ! 今のうちに兵をまとめておかないとヤバいんだって!」
「ならなぜ城へ報告しない?」
「時間がないんだって、明日、ここを死守しなければこの国は滅んでしまう」
「魔物程度我らの力だけで十分だ」
貴族たちはまったく聞く気がないどころか酒を手に取り飲み始める。
くそ、こいつらじゃ話にならない……。
「リッツ様、どうでしたか」
「予想通り信じてもらえなかったどころか、連中さんはこんな場所で酒盛りを始めたよ」
呆れてものも言えないが、普通に考えればいきなり国が滅びますなんて言われて、はいそうですかと信じる方がおかしいのかも知れない。
なぜかティーナやファーデン家のみんなは信じそうな気がするが、そういうところが貴族からすれば変なんだろうな。
すっかり夜になり笑い声の響くテントを背に歩いていると兵が近寄ってくる。
「失礼ですが隊長に会って頂けませんか?」
「別にいいがあまり長居はできないぞ」
兵に案内されテントに入ると屈強な身体つきをした男がこちらに目を配る。兵にお願いされ明日起こることをもう一度説明すると、男は顎に手を当てた。
「ふぅむ、にわかには信じ難いな」
「あいにく証拠はないがね。お偉いさんは一切話を聞いてくれなかったよ」
「――わかった。おい、動ける者を集めろ」
「はッ!」
兵は返事をすると外へ出ていった。
「信じるのか? 上が黙っちゃいないぞ」
「…………そうだな。君は『紅蓮の風』を知っているか」
「知ってるも何も、そこの団長は俺の師匠だよ」
「なんと!? あの者たちに弟子がいたとは――。私は以前、別の現場で魔物の討伐をしていたのだが一度彼らの助けを借りたんだ。そこで副団長の男に言われたのだ……。ろくに前線で戦いもしない上について、命を落としたら笑えないと」
上役ってのは目的の達成と被害を考え、最善の策を練るのが役割だと師匠は言っていた。
普通は最前線で頑張るような人っていないんじゃないのかな。……師匠だけは別として。
話を聞いていると隊長は続けて熱く語り始める。
「その言葉で私は目が覚めたのだよ。我らがお仕えしているのは王であり、守るべきは国なのだとな」
「そ、そうか。その考えは間違ってないと思うぞ」
だけど貴族のいざこざは面倒だと聞くし気を付けてね――。
貴族を殴った俺がいえたことじゃないなと一人でツッコんでいると、隊長は机に地図を広げた。
「今から城に使いを出したところでここまでは一日じゃ足りん。我々でなんとかするしかないだろう。すまないが君たちにも協力してもらいたい」
「もちろんさ、心強い味方ができてよかったよ」
俺たちは握手を交わすと地図を見てあれこれと対策を練った。四方から魔物が来るとすれば最低限捨てなきゃいけない場所もでてくる。
兵だって数は少ないしできれば犠牲者を出したくはない。最悪の場合、囮や撤退をしながら対処するということも考えておくべきだ。
ニエとアンジェロを先に休ませ、慣れない守りの手を隊長と入念に考えているとあっという間に空は白けていった。
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