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119話
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「どう? 少しは落ち着いた?」
「……はい、ご迷惑をお掛けしました」
呼ばれて部屋に入ると師匠がベッドに座るニエの背中を擦っていた。
宿に着いてすぐ、師匠は一旦俺とニエを離すことにした。当人が俺を前にするとダメになってしまうから原因は俺なのかもしれないということでだった。
アンジェロはニエの側に座ってゴロゴロしている。
「――俺のことで何かあったみたいだけど、話せそうか?」
さっきまでは一言声を掛けるだけで首を振ったからな。
恐る恐る慎重に声を掛けるとニエは深呼吸して俺をみた。
「誰かに呼ばれたんです。リッツ様が泣いてるって、一人にしちゃダメって――不安になって慌ててリッツ様を見に行ったんです。そしたら消えそうというか、わからないんですけどいなくなるような気がして……。まだ視たわけじゃないのに……」
「変ね。私には何も聞こえなかったし、あの場には私たち以外の気配はなかったわ」
師匠の口調は淡々としているがニエが言っていることを否定しているわけではない。
無駄な言葉は状況を惑わせるというのが俺と師匠の間で問題が起きたときの鉄則だ。
「だとすると『見えない何か』か、誰かのスキルか。幽霊なんてのはよく子供を怖がらせるために使われますがちょっと信憑性がないですね」
「ニエちゃんにとって関係性のある場所というのならまだわかるけどね。そうなるとほかに考えられるとすれば――」
師匠は仰向けで寝そべっているアンジェロに目を向けた。
「あなたがやったの?」
「ワフッ?」
「まさか……。いや、ないとは言い切れませんね。何か神獣に力があるのかもしれませんし戻ったらウムトに聞いてみましょう」
一夜明け屋敷へ帰る道中、念のためニエを乗せたアンジェロの側を俺は走ることにした。
◇
「声、ですか?」
「あぁ、ニエが聞いたらしいんだ。もしかしたら神獣にそういう力みたいなのがあるのかなと思って」
「意志を感じるということであれば何度かありますね」
「言葉としてはっきり聞こえたとかはない?」
「ん~さすがにそこまでは……リヤンなら何か知ってるかもしれません。僕も話があるのでついでに聞いておきますね」
「すまんがよろしく頼むよ」
ウムトの部屋を出て寝室に戻ると、アンジェロの前でニエが自分の目を手で覆い座っていた。
「……ニエ、何やってんだ?」
「むむっ! この声はリッツ様ですね!」
俺の寝室なんだから来るとしても俺かハリスしかいないんだけどな。
答え合わせをするように手を外し俺を見るとニエはニコッと笑顔をみせる。
「正解だ。それで、新しい遊びでも思いついたのか」
「私、気付いちゃったんです。あの声の正体がアンジェロだったなら、今まで声を出さなかったのは恥ずかしかったからじゃないのかと!」
「なるほど、見てませんよという意思表示をすればまた声が聞けるかもしれないというわけだ」
「さすがリッツ様、その通りです! さぁアンジェロ、いい加減諦めて喋りなさい!」
「ワフッ」
返事はしたがニエには何も届いていないようだな。
俺たちの言葉を理解してるようだし、確かに可能性は無きにしも非ずだが。
「とりあえず帰ってきたばかりだし今日はもう休んだらどうだ。俺は風呂に行くけど、なんなら先に入るか?」
「リッツ様、お風呂は今ミレイユさんが入ってますよ」
「師匠はみんなの様子を見てくるっていってただろ」
「あれ? そうでしたっけ」
「とりあえず俺は風呂に行く。疲れてるようなら先に休んでてもいいからな」
さすがにあんなことがあったあとだから少しパニックになっているのかもしれない。ゆっくり休ませてあげたほうがいいな。
「……はい、ご迷惑をお掛けしました」
呼ばれて部屋に入ると師匠がベッドに座るニエの背中を擦っていた。
宿に着いてすぐ、師匠は一旦俺とニエを離すことにした。当人が俺を前にするとダメになってしまうから原因は俺なのかもしれないということでだった。
アンジェロはニエの側に座ってゴロゴロしている。
「――俺のことで何かあったみたいだけど、話せそうか?」
さっきまでは一言声を掛けるだけで首を振ったからな。
恐る恐る慎重に声を掛けるとニエは深呼吸して俺をみた。
「誰かに呼ばれたんです。リッツ様が泣いてるって、一人にしちゃダメって――不安になって慌ててリッツ様を見に行ったんです。そしたら消えそうというか、わからないんですけどいなくなるような気がして……。まだ視たわけじゃないのに……」
「変ね。私には何も聞こえなかったし、あの場には私たち以外の気配はなかったわ」
師匠の口調は淡々としているがニエが言っていることを否定しているわけではない。
無駄な言葉は状況を惑わせるというのが俺と師匠の間で問題が起きたときの鉄則だ。
「だとすると『見えない何か』か、誰かのスキルか。幽霊なんてのはよく子供を怖がらせるために使われますがちょっと信憑性がないですね」
「ニエちゃんにとって関係性のある場所というのならまだわかるけどね。そうなるとほかに考えられるとすれば――」
師匠は仰向けで寝そべっているアンジェロに目を向けた。
「あなたがやったの?」
「ワフッ?」
「まさか……。いや、ないとは言い切れませんね。何か神獣に力があるのかもしれませんし戻ったらウムトに聞いてみましょう」
一夜明け屋敷へ帰る道中、念のためニエを乗せたアンジェロの側を俺は走ることにした。
◇
「声、ですか?」
「あぁ、ニエが聞いたらしいんだ。もしかしたら神獣にそういう力みたいなのがあるのかなと思って」
「意志を感じるということであれば何度かありますね」
「言葉としてはっきり聞こえたとかはない?」
「ん~さすがにそこまでは……リヤンなら何か知ってるかもしれません。僕も話があるのでついでに聞いておきますね」
「すまんがよろしく頼むよ」
ウムトの部屋を出て寝室に戻ると、アンジェロの前でニエが自分の目を手で覆い座っていた。
「……ニエ、何やってんだ?」
「むむっ! この声はリッツ様ですね!」
俺の寝室なんだから来るとしても俺かハリスしかいないんだけどな。
答え合わせをするように手を外し俺を見るとニエはニコッと笑顔をみせる。
「正解だ。それで、新しい遊びでも思いついたのか」
「私、気付いちゃったんです。あの声の正体がアンジェロだったなら、今まで声を出さなかったのは恥ずかしかったからじゃないのかと!」
「なるほど、見てませんよという意思表示をすればまた声が聞けるかもしれないというわけだ」
「さすがリッツ様、その通りです! さぁアンジェロ、いい加減諦めて喋りなさい!」
「ワフッ」
返事はしたがニエには何も届いていないようだな。
俺たちの言葉を理解してるようだし、確かに可能性は無きにしも非ずだが。
「とりあえず帰ってきたばかりだし今日はもう休んだらどうだ。俺は風呂に行くけど、なんなら先に入るか?」
「リッツ様、お風呂は今ミレイユさんが入ってますよ」
「師匠はみんなの様子を見てくるっていってただろ」
「あれ? そうでしたっけ」
「とりあえず俺は風呂に行く。疲れてるようなら先に休んでてもいいからな」
さすがにあんなことがあったあとだから少しパニックになっているのかもしれない。ゆっくり休ませてあげたほうがいいな。
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