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135話
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「うおおおぉぉぉ草がぁ……草が襲ってくるううううぅぅッ!!」
「リッツ、喜ぶか泣くかどっちかにしなさい」
「リッツ様ーあそこに綺麗な花がありますよー」
「ニエちゃん、あれは魔物だよ。擬態する珍しいタイプで近づくと襲ってくるんだ」
「本当ですか! リッツ様ーその花、魔物らしいですから近づいちゃダメですー!」
「アッヒャーーーーー!!」
どうやら俺は果ての谷を甘くみていたようだ。
霧でほとんど前が見えない道を進んだと思ったら今度は急に密林に入り樹々の迷路が現れた。
見たこともない草だと大喜びで近づけば魔物だったりと嬉しさと悲しさが押し寄せてくる。
「穢れの影響がここまで出てるなんておかしいわね」
「エリクシールの浄化は続いてるはずだけど……」
そういえばエリクシールってどんな草なんだろう。
大きいのかな? いや、もしかすると意外に小さいのかも……どんなんだろうなぁっ……!
「おーいみんなー! 早く行こうぜー!」
「ティーナさんみてください! リッツ様の眼が欲にまみれてます!」
「そういえばリッツさんって会った時からこんなんでしたね……」
「ワンッ」
「兄さんと同じ守護者とは思えないわ」
「き、きっとリッツさんにも考えがあるんだよ」
「あの子、私が背負ってたほうがよかったかしら」
◇
ついにここまでたどり着いた。
この先に聖域が……。
「――これ、どうやって渡るの?」
目の前には大きな崖、上空から薄っすら差し込んだ光は、辺り一面に立ち込める濃霧をキラキラと照らす。
話ではこの先に聖域があるらしいが何もみえない。
「リッツ様、向こうまで跳んだりできませんか?」
「いや無理だろ……。なぁリヤン、こんな崖があるんだったら船でそのままくればよかったんじゃないか?」
ルルが目を覚まし、とりあえずは一人で歩けるようにはなったが、いつまた異変が起きるかわからない。
一旦船に戻ったほうがいい気がする。
「いけない理由がわかるからそっちにいってみなさい」
「別になんにも――うぉっ!?」
急に壁が生えた……。
「どうなってんだこれ」
「この先はまぐれでも渡れないように作られてるの。だから行き方を知る私たちにしか聖域に辿り着くことはできない――はずだった」
「どうやら先客がいるようね」
「師匠、どういうことですか」
「痕跡を消そうとしてるつもりだろうけど綺麗すぎるのよ。間違えて踏み込んだにしては道筋に迷いがない」
「もしかしてリヤンたちと同じ一族でしょうか?」
「どうかしらね。ニエちゃんのように生き残りがいてもおかしくはないけど、なぜ今になって聖域にきたのか……」
「そうやって時間をかけすぎるのがお前の悪いところだ。師もいってただろう、直感型のお前に半端な思案はいらない」
アルフレッドさんは師匠と付き合いが長いんだったな。
師もいたってことは同じ環境で修行してたんだろう。
「あの、師匠の師匠ってどんな人だったんですか?」
「風変わりな人だよ。時代が時代なら『英雄』と呼ばれていたかもしれないな」
「アル、お喋りはそこまでよ。何者かわからないなら先を急ぎましょう」
「はいはい――っということで、あとの詳しい話はミレイユから直接聞いてくれ」
師匠を育てた人か……どんな人だったんだろうな。
帰ったらじっくり話を聞かせてもらおう。
「リッツ、喜ぶか泣くかどっちかにしなさい」
「リッツ様ーあそこに綺麗な花がありますよー」
「ニエちゃん、あれは魔物だよ。擬態する珍しいタイプで近づくと襲ってくるんだ」
「本当ですか! リッツ様ーその花、魔物らしいですから近づいちゃダメですー!」
「アッヒャーーーーー!!」
どうやら俺は果ての谷を甘くみていたようだ。
霧でほとんど前が見えない道を進んだと思ったら今度は急に密林に入り樹々の迷路が現れた。
見たこともない草だと大喜びで近づけば魔物だったりと嬉しさと悲しさが押し寄せてくる。
「穢れの影響がここまで出てるなんておかしいわね」
「エリクシールの浄化は続いてるはずだけど……」
そういえばエリクシールってどんな草なんだろう。
大きいのかな? いや、もしかすると意外に小さいのかも……どんなんだろうなぁっ……!
「おーいみんなー! 早く行こうぜー!」
「ティーナさんみてください! リッツ様の眼が欲にまみれてます!」
「そういえばリッツさんって会った時からこんなんでしたね……」
「ワンッ」
「兄さんと同じ守護者とは思えないわ」
「き、きっとリッツさんにも考えがあるんだよ」
「あの子、私が背負ってたほうがよかったかしら」
◇
ついにここまでたどり着いた。
この先に聖域が……。
「――これ、どうやって渡るの?」
目の前には大きな崖、上空から薄っすら差し込んだ光は、辺り一面に立ち込める濃霧をキラキラと照らす。
話ではこの先に聖域があるらしいが何もみえない。
「リッツ様、向こうまで跳んだりできませんか?」
「いや無理だろ……。なぁリヤン、こんな崖があるんだったら船でそのままくればよかったんじゃないか?」
ルルが目を覚まし、とりあえずは一人で歩けるようにはなったが、いつまた異変が起きるかわからない。
一旦船に戻ったほうがいい気がする。
「いけない理由がわかるからそっちにいってみなさい」
「別になんにも――うぉっ!?」
急に壁が生えた……。
「どうなってんだこれ」
「この先はまぐれでも渡れないように作られてるの。だから行き方を知る私たちにしか聖域に辿り着くことはできない――はずだった」
「どうやら先客がいるようね」
「師匠、どういうことですか」
「痕跡を消そうとしてるつもりだろうけど綺麗すぎるのよ。間違えて踏み込んだにしては道筋に迷いがない」
「もしかしてリヤンたちと同じ一族でしょうか?」
「どうかしらね。ニエちゃんのように生き残りがいてもおかしくはないけど、なぜ今になって聖域にきたのか……」
「そうやって時間をかけすぎるのがお前の悪いところだ。師もいってただろう、直感型のお前に半端な思案はいらない」
アルフレッドさんは師匠と付き合いが長いんだったな。
師もいたってことは同じ環境で修行してたんだろう。
「あの、師匠の師匠ってどんな人だったんですか?」
「風変わりな人だよ。時代が時代なら『英雄』と呼ばれていたかもしれないな」
「アル、お喋りはそこまでよ。何者かわからないなら先を急ぎましょう」
「はいはい――っということで、あとの詳しい話はミレイユから直接聞いてくれ」
師匠を育てた人か……どんな人だったんだろうな。
帰ったらじっくり話を聞かせてもらおう。
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