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第九章 次なる戦いに備えて
トモダチ作戦
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サントル帝国を倒す作戦をルークスが思いついた。
しかも実現可能と聞かされ、王宮工房の会議室はどよめきに包まれる。
「それは一体、どうやるのかね?」
今し方の衝撃を忘れたゴーレム班長が、ルークスに問いかけた。
少年は答える。
「まずはゴーレムコマンダーの中から何人か、ノームと友達になってもらいます。それから、今後はノームを友達にしている人をコマンダーとして採用します」
目を点にする文官たち。
エチェントリチも一瞬唖然となったのちに問いただす。
「それだけか? たったそれだけのことで、あの大帝国を倒せるのだと?」
「まずはそこからです。僕は自分が例外だと思っていました。でも、最近同例を二度、別々に見ました。ノームは意外と友達になってくれるものです」
「んあああ、待て! 今何の話をしている!?」
「ノームに頑張ってもらおう、という話です」
話が見えず、エチェントリチはプルデンス参謀長に顔を向けた。
「お前から説明しろ」
「承知しました。ルークス卿はゴーレム以外の事物になると、説明が不得手になります。ですので私から説明をしていたのですが、デリカータ女伯がルークス卿に発言を求めてしまったために、中断しておりました」
「皮肉はやめろ」
参謀長は咳払いした。
「ルークス卿の説明は、作戦の第一段階です。ノームを友達にするゴーレムコマンダーを増やします。目安は、ルークス卿とシルフくらいの関係、精霊が自発的に友達を助けるレベルです」
ゴーレム班長は頭をかきむしる。
「んああ、まさかゴーレムを、精霊の自己判断で動かさせるのか? それは危険だ」
「はい、現状のままゴーレムを任せるのは危険です。そこで作戦の第二段階です」
参謀長は間を入れた。
「第二段階は、友達になったノームの教育です。安全にゴーレムを運用できるよう、人間や社会の脆弱さを学んでもらいます」
「それで安全を確保できたとしても、自己判断する精霊がどれほどの物なのか?」
「グラン・ノームに頼らずとも、自ら敵味方を識別してくれますし、既定行動のゴーレムなど敵ではなくなります。ルークス卿によれば、帝国軍のグラン・ノームは自己判断で工夫して戦ったとのことで、イノリを苦戦させました」
「グラン・ノームは例外ではないのか?」
「フェルームの町で学園の生徒が操るゴーレムがイノリと模擬戦をした際、戦槌を投げました。的に当たるよう工夫したので危うく当たるところでしたが、投げ方については『契約者による指示がなかった』と確認されています。ノーム自ら工夫したものでした。また、このノームは契約者が拘束されたときに、自発的に助けようと動きました。この二例をもってルークス卿は『自分が例外ではない』と認識した次第です」
デリカータ女伯は大きくうなずいた。
「なるほど。ノームを自発的に戦わせることで、戦力が向上するのは理解した。だが、その程度で帝国の物量を覆せるわけではあるまい?」
「短期的には無理です。友達ノームが増え、学習が進むにつれ、戦力は徐々に増強されてゆきますので」
「しかし、それも帝国が真似したら、結局物量ではないか」
「そう思って帝国軍が真似をしてくれれば、本作戦はほぼ成功となります」
あっさりと言う参謀長に、文官のみならず女王陛下も首をかしげた。
ゴーレム班長はなおさらである。
「分からん。それでどうして帝国が倒れるんだ?」
「友達を守るためにノームは自発的に戦ってくれます。では、帝国軍ゴーレムコマンダーにとって『一番危険な存在』とは何でしょう?」
成り行きを見守っていたフローレンティーナ女王の瞳が輝いた。
デリカータ女伯が自分の額をピシャリと叩く。
「なるほど! そういう事か」
「どういう事かね?」
まだ理解していない財務相ら文官たちに、参謀長は説明する。
「ゴーレムコマンダーに限らずサントル帝国の大衆は、常に市民階級に命を脅かされております。精霊が自発的に友達を守る場合、真っ先に攻撃対象になるのは市民です。さらに『危険なのはサントル帝国そのものだ』と精霊たちが共通認識を持てば、矛先は帝国の体制に向けられるでしょう。上手くすれば帝国は崩壊しますし、最低でも精霊の扱いが慎重になるなどの弱体化は期待できます」
「ルークス、あなたは凄いわ!」
フローレンティーナが声を弾ませてルークスの手を握った。
プルデンス参謀長が補足する。
「同盟諸国が行ってきた帝国への工作は全て、大衆対市民、地方対中央など人間同士を争わせるものばかりでした。対策されているので、今はさらに困難となっています。そこにルークス卿は『精霊対人間』の図式を描いたわけです。さすがは『人類史上最も多くの精霊を友にする男』ですな」
「その作戦、何と言いますか?」
「まだ仮称でして、正式名称をルークス卿にお願いしていたのですが?」
プルデンス参謀長に問われ、ルークスは首をひねった。
そのあとで「陛下を休ませる」話になったので、記憶から押し出されていたのだ。
「軍内部ではルークス卿がつけた仮称を用いています――友達作戦です」
「友達作戦?」
「はい。作戦の肝が『精霊と友達になる』ですし、名称から内容を推定される恐れは絶無ですので」
その仮称は、フローレンティーナには好ましく思えた。
「精霊と友達になることで国を守り、サントル帝国に痛撃を与える作戦なのですから、原案のままで良いと思います」
君主の決は下った。
「では、友達作戦、軍は始動いたしたいと謹んで女王陛下に奏上いたします」
フローレンティーナは笑みで応えた。
しかし、これに宮内相が渋い顔をした。
「しかし、サントル帝国が真似をしないこともあるだろう。そうなったら作戦は失敗となるのかね?」
しかも実現可能と聞かされ、王宮工房の会議室はどよめきに包まれる。
「それは一体、どうやるのかね?」
今し方の衝撃を忘れたゴーレム班長が、ルークスに問いかけた。
少年は答える。
「まずはゴーレムコマンダーの中から何人か、ノームと友達になってもらいます。それから、今後はノームを友達にしている人をコマンダーとして採用します」
目を点にする文官たち。
エチェントリチも一瞬唖然となったのちに問いただす。
「それだけか? たったそれだけのことで、あの大帝国を倒せるのだと?」
「まずはそこからです。僕は自分が例外だと思っていました。でも、最近同例を二度、別々に見ました。ノームは意外と友達になってくれるものです」
「んあああ、待て! 今何の話をしている!?」
「ノームに頑張ってもらおう、という話です」
話が見えず、エチェントリチはプルデンス参謀長に顔を向けた。
「お前から説明しろ」
「承知しました。ルークス卿はゴーレム以外の事物になると、説明が不得手になります。ですので私から説明をしていたのですが、デリカータ女伯がルークス卿に発言を求めてしまったために、中断しておりました」
「皮肉はやめろ」
参謀長は咳払いした。
「ルークス卿の説明は、作戦の第一段階です。ノームを友達にするゴーレムコマンダーを増やします。目安は、ルークス卿とシルフくらいの関係、精霊が自発的に友達を助けるレベルです」
ゴーレム班長は頭をかきむしる。
「んああ、まさかゴーレムを、精霊の自己判断で動かさせるのか? それは危険だ」
「はい、現状のままゴーレムを任せるのは危険です。そこで作戦の第二段階です」
参謀長は間を入れた。
「第二段階は、友達になったノームの教育です。安全にゴーレムを運用できるよう、人間や社会の脆弱さを学んでもらいます」
「それで安全を確保できたとしても、自己判断する精霊がどれほどの物なのか?」
「グラン・ノームに頼らずとも、自ら敵味方を識別してくれますし、既定行動のゴーレムなど敵ではなくなります。ルークス卿によれば、帝国軍のグラン・ノームは自己判断で工夫して戦ったとのことで、イノリを苦戦させました」
「グラン・ノームは例外ではないのか?」
「フェルームの町で学園の生徒が操るゴーレムがイノリと模擬戦をした際、戦槌を投げました。的に当たるよう工夫したので危うく当たるところでしたが、投げ方については『契約者による指示がなかった』と確認されています。ノーム自ら工夫したものでした。また、このノームは契約者が拘束されたときに、自発的に助けようと動きました。この二例をもってルークス卿は『自分が例外ではない』と認識した次第です」
デリカータ女伯は大きくうなずいた。
「なるほど。ノームを自発的に戦わせることで、戦力が向上するのは理解した。だが、その程度で帝国の物量を覆せるわけではあるまい?」
「短期的には無理です。友達ノームが増え、学習が進むにつれ、戦力は徐々に増強されてゆきますので」
「しかし、それも帝国が真似したら、結局物量ではないか」
「そう思って帝国軍が真似をしてくれれば、本作戦はほぼ成功となります」
あっさりと言う参謀長に、文官のみならず女王陛下も首をかしげた。
ゴーレム班長はなおさらである。
「分からん。それでどうして帝国が倒れるんだ?」
「友達を守るためにノームは自発的に戦ってくれます。では、帝国軍ゴーレムコマンダーにとって『一番危険な存在』とは何でしょう?」
成り行きを見守っていたフローレンティーナ女王の瞳が輝いた。
デリカータ女伯が自分の額をピシャリと叩く。
「なるほど! そういう事か」
「どういう事かね?」
まだ理解していない財務相ら文官たちに、参謀長は説明する。
「ゴーレムコマンダーに限らずサントル帝国の大衆は、常に市民階級に命を脅かされております。精霊が自発的に友達を守る場合、真っ先に攻撃対象になるのは市民です。さらに『危険なのはサントル帝国そのものだ』と精霊たちが共通認識を持てば、矛先は帝国の体制に向けられるでしょう。上手くすれば帝国は崩壊しますし、最低でも精霊の扱いが慎重になるなどの弱体化は期待できます」
「ルークス、あなたは凄いわ!」
フローレンティーナが声を弾ませてルークスの手を握った。
プルデンス参謀長が補足する。
「同盟諸国が行ってきた帝国への工作は全て、大衆対市民、地方対中央など人間同士を争わせるものばかりでした。対策されているので、今はさらに困難となっています。そこにルークス卿は『精霊対人間』の図式を描いたわけです。さすがは『人類史上最も多くの精霊を友にする男』ですな」
「その作戦、何と言いますか?」
「まだ仮称でして、正式名称をルークス卿にお願いしていたのですが?」
プルデンス参謀長に問われ、ルークスは首をひねった。
そのあとで「陛下を休ませる」話になったので、記憶から押し出されていたのだ。
「軍内部ではルークス卿がつけた仮称を用いています――友達作戦です」
「友達作戦?」
「はい。作戦の肝が『精霊と友達になる』ですし、名称から内容を推定される恐れは絶無ですので」
その仮称は、フローレンティーナには好ましく思えた。
「精霊と友達になることで国を守り、サントル帝国に痛撃を与える作戦なのですから、原案のままで良いと思います」
君主の決は下った。
「では、友達作戦、軍は始動いたしたいと謹んで女王陛下に奏上いたします」
フローレンティーナは笑みで応えた。
しかし、これに宮内相が渋い顔をした。
「しかし、サントル帝国が真似をしないこともあるだろう。そうなったら作戦は失敗となるのかね?」
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