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Just the beginning ⑦
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「そう言うなら、尚人だってそうじゃん」
「まあ、そうだな」
尚人は男も女も恋愛対象になるバイセクシュアルだ。そして、涼とは違うタイプの男前だった。背が高く、すっきりとした顔立ちで、芸能人でもおかしくないくらいの正統派イケメンだった。物腰も柔らかく男女問わずモテる。しかし、涼と同様、特定の恋人は作らず、「精力処理」として必要なときに適当に相手を見つけていた。ただ涼と違うところは、複数いる相手とは友人として付き合っており、一夜限りというわけではなかった。つまりは「セフレ」が何人かいる、ということになるのだろう。
章良は、こういった割り切った関係、というのがどうも苦手だった。知り合いになった時点で、情が沸いてしまう。なので、そういう関係になる男たちとは一応きちんとお付き合いしてきた(長くは続かなかったが)。
家には相手を連れ込まないルールがあったので、偶然外で出くわす以外には、今までお互いの相手を見たこともない。
「朝飯できた。食べよ」
尚人が簡単な朝食を作って、運んできてくれた。3人の中で抜きん出て料理の腕が上手い尚人が、3人が揃ったときにはいつも腕を振るってくれた。
「スクランブルエッグじゃん。うまそう」
「章良くん好きでしょ?」
「うん」
「なんだよ、尚人。章良くんにはいっつも好物作るくせに、俺にはなんもないじゃん」
「涼ちゃんは偏食だからじゃん。重いもんしか食べないし。朝から唐揚げとか焼きそばとか作らんないから」
「いいじゃん。朝から食える、俺」
「自分で作って。焼きそばはインスタントだったらあるから」
尚人が冷たく答えると、涼はぶつぶつと文句を言いながらも、出されたスクランブルエッグとトーストを食べ始め、結局全て平らげた。満腹になって満足した顔で章良と尚人を見ながら尋ねてきた。
「2人とも近い内に休みある?」
「俺は今のが終わったらしばらく空いてる。急な依頼がない限り」
「俺も一段落したかな。小さい警護が2、3個あるけど、それ以降は今のところ白紙。涼ちゃんは?」
「俺はなんもない。久しぶりに休めるわ」
「そしたら来週辺りには3人ともゆっくりできるんじゃない?」
「なあ、そしたら、どっかいこーぜ。最近忙しくてどこも行ってないし」
「はあ? お前、アメリカから帰ってきたとこだろ?」
「仕事と旅行は違うって! 近場でもいいから、どっかホリデーで行きたい。海とか。温泉とか」
「俺、海、興味ない」
「ほんと、尚人ってアウトドア嫌いだな」
「ぜんっぜん興味ない。キャンプとか。バーベキューとか。なんでわざわざ外で食ったり寝たりする必要があるわけ?」
「いや、それが楽しいんだろ? こう、自然に囲まれて、解放的で」
「日に焼けるし、虫に刺されるし、いいことないじゃん。俺、自然と仲良くなれないタイプだから」
「はあ……」
「そんなら、温泉でいいから! いこっ!!」
「まあ、俺はどっちでもいいけど……」
「そしたら、尚人、アレンジ頼むな!」
「えー、言い出しっぺは涼ちゃんなんだから、涼ちゃんやってよ」
「お前がやったほうが早いだろ? その得意の能力使って、ちゃちゃっとやっといて」
「もう……。こういうときに利用されるの納得いかないんだけど」
そう言いながらも、結局尚人が全て旅のアレンジをしてくれたらしい。その日中には宿泊先からレンタカーの手配まで必要なことは終わったと尚人から報告を受けた。
この尚人の「能力」と言うのは、複数の処理を同時に作業しても効率を落とさずこなすことができるという珍しい能力だった。この能力を持った者は「スーパータスカー」などと呼ばれ、全人口の2%ほどしか存在しないのではと言われている。尚人からすると、電話をしながらPCで調べ物をし、同時に文章作成などするのは全く普通のことだった。ただ、仕事以外のこういうときによくアレンジを頼まれるので(主に涼から)、本人は納得がいかないらしい。
温泉、久しぶりだし、楽しみだな。
そう思って章良は楽しみにしていたのだが。来週末に行く予定だったその温泉旅行は、急に舞い込んだ依頼により、残念ながら中止となってしまったのだった。
「まあ、そうだな」
尚人は男も女も恋愛対象になるバイセクシュアルだ。そして、涼とは違うタイプの男前だった。背が高く、すっきりとした顔立ちで、芸能人でもおかしくないくらいの正統派イケメンだった。物腰も柔らかく男女問わずモテる。しかし、涼と同様、特定の恋人は作らず、「精力処理」として必要なときに適当に相手を見つけていた。ただ涼と違うところは、複数いる相手とは友人として付き合っており、一夜限りというわけではなかった。つまりは「セフレ」が何人かいる、ということになるのだろう。
章良は、こういった割り切った関係、というのがどうも苦手だった。知り合いになった時点で、情が沸いてしまう。なので、そういう関係になる男たちとは一応きちんとお付き合いしてきた(長くは続かなかったが)。
家には相手を連れ込まないルールがあったので、偶然外で出くわす以外には、今までお互いの相手を見たこともない。
「朝飯できた。食べよ」
尚人が簡単な朝食を作って、運んできてくれた。3人の中で抜きん出て料理の腕が上手い尚人が、3人が揃ったときにはいつも腕を振るってくれた。
「スクランブルエッグじゃん。うまそう」
「章良くん好きでしょ?」
「うん」
「なんだよ、尚人。章良くんにはいっつも好物作るくせに、俺にはなんもないじゃん」
「涼ちゃんは偏食だからじゃん。重いもんしか食べないし。朝から唐揚げとか焼きそばとか作らんないから」
「いいじゃん。朝から食える、俺」
「自分で作って。焼きそばはインスタントだったらあるから」
尚人が冷たく答えると、涼はぶつぶつと文句を言いながらも、出されたスクランブルエッグとトーストを食べ始め、結局全て平らげた。満腹になって満足した顔で章良と尚人を見ながら尋ねてきた。
「2人とも近い内に休みある?」
「俺は今のが終わったらしばらく空いてる。急な依頼がない限り」
「俺も一段落したかな。小さい警護が2、3個あるけど、それ以降は今のところ白紙。涼ちゃんは?」
「俺はなんもない。久しぶりに休めるわ」
「そしたら来週辺りには3人ともゆっくりできるんじゃない?」
「なあ、そしたら、どっかいこーぜ。最近忙しくてどこも行ってないし」
「はあ? お前、アメリカから帰ってきたとこだろ?」
「仕事と旅行は違うって! 近場でもいいから、どっかホリデーで行きたい。海とか。温泉とか」
「俺、海、興味ない」
「ほんと、尚人ってアウトドア嫌いだな」
「ぜんっぜん興味ない。キャンプとか。バーベキューとか。なんでわざわざ外で食ったり寝たりする必要があるわけ?」
「いや、それが楽しいんだろ? こう、自然に囲まれて、解放的で」
「日に焼けるし、虫に刺されるし、いいことないじゃん。俺、自然と仲良くなれないタイプだから」
「はあ……」
「そんなら、温泉でいいから! いこっ!!」
「まあ、俺はどっちでもいいけど……」
「そしたら、尚人、アレンジ頼むな!」
「えー、言い出しっぺは涼ちゃんなんだから、涼ちゃんやってよ」
「お前がやったほうが早いだろ? その得意の能力使って、ちゃちゃっとやっといて」
「もう……。こういうときに利用されるの納得いかないんだけど」
そう言いながらも、結局尚人が全て旅のアレンジをしてくれたらしい。その日中には宿泊先からレンタカーの手配まで必要なことは終わったと尚人から報告を受けた。
この尚人の「能力」と言うのは、複数の処理を同時に作業しても効率を落とさずこなすことができるという珍しい能力だった。この能力を持った者は「スーパータスカー」などと呼ばれ、全人口の2%ほどしか存在しないのではと言われている。尚人からすると、電話をしながらPCで調べ物をし、同時に文章作成などするのは全く普通のことだった。ただ、仕事以外のこういうときによくアレンジを頼まれるので(主に涼から)、本人は納得がいかないらしい。
温泉、久しぶりだし、楽しみだな。
そう思って章良は楽しみにしていたのだが。来週末に行く予定だったその温泉旅行は、急に舞い込んだ依頼により、残念ながら中止となってしまったのだった。
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