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Touched on the past ④
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『……なんだよ』
『えらい強気だけどさぁ。それならあらゆる権力使って実力行使に出てもいいんだけど?』
『…………』
『明日からにでも俺の専属ボディーガードになってもらってもいいんだけど?』
『……もしそんなことしたら、俺だって抵抗する』
『どうやって?』
『金輪際、絶対、死んでも、どんな手を使っても、指1本俺に触れさせん』
『…………』
『蛇の生殺し状態にしてやるからな』
数秒間の沈黙が続いた。尚人と涼が、聞いていないフリをしながらも、ソファに座って耳を側立てているのがわかった。向こうの声は聞こえていないだろうが、どんな内容なのかは察しがついているだろう。
電話の向こうで、黒埼がはぁっ、と大きな溜息を吐いたのが聞こえた。
『……わかった。カメラはやめるから』
『当たり前だろ』
『だけど、条件がある』
『……嫌だ』
『言う前から嫌って言わないでくれる?』
『だって絶対ヤバイやつだろ』
『そんなことないって、俺への愛があったら簡単なことだし』
『いや、愛、ないし』
『ほんと、照れ屋だなぁ、アキちゃんは』
『もういいから、条件言え』
『アキちゃん家に泊まるのと、デートする条件にもう1つ加えたい』
『……何?』
『デートのとき、チューはする』
『えー』
『えーじゃないって。もうチューしてるんだし、慣れたもんだろ』
『お前とのチューには慣れたくない。大体、俺が拒んでも無理やりするだろーが。この前の空港んときみたいに。あんとき、後からどれだけ周りの視線が痛かったか知らねーだろ、お前』
『じゃ、やめとく? そしたら本当に実力行使に出るけど』
『…………』
『アキちゃん、よく考えてみて。アキちゃんがどれだけ抵抗してもさ……』
そこで黒埼が一泊置いた。
『俺が本気になったら、意味ないから』
『…………』
神様。俺はなんでこんなやつに惚れられたのでしょうか……。
『これでも凄ぇ譲歩してんだけど』
『…………』
『嫌ならもっとハードル高い条件付けても……「わかった」』
なんとなく事情を飲み込めんだらしい尚人と涼が、喜んでいるのか驚いているのか同情しているのか判断しかねる微妙な顔で晃良を見た。
『ほんとにぃ?? じゃ、アキちゃん、次のデート楽しみにしてるからっ』
明るい声に戻った現金な黒埼に、きっーっとなって、返事もせずに通話を切った。
あのときの会話は思い出すだけでも腹が立つ。あれから真っ直ぐ自室へ向かって、何回、白ブタをどついたことか。
結局あいつの思い通りに事が運んでいるような気がすんだよな。
「晃良くん、夕飯前に風呂入んない?」
尚人の声に我に返った。せっかくの休暇に黒埼のことを考えるのはもったいない。もっとこの状況を楽しまなければ。
「入る」
晃良は立ち上がると、気持ちを切り替えて露天風呂に入る準備を始めた。
『えらい強気だけどさぁ。それならあらゆる権力使って実力行使に出てもいいんだけど?』
『…………』
『明日からにでも俺の専属ボディーガードになってもらってもいいんだけど?』
『……もしそんなことしたら、俺だって抵抗する』
『どうやって?』
『金輪際、絶対、死んでも、どんな手を使っても、指1本俺に触れさせん』
『…………』
『蛇の生殺し状態にしてやるからな』
数秒間の沈黙が続いた。尚人と涼が、聞いていないフリをしながらも、ソファに座って耳を側立てているのがわかった。向こうの声は聞こえていないだろうが、どんな内容なのかは察しがついているだろう。
電話の向こうで、黒埼がはぁっ、と大きな溜息を吐いたのが聞こえた。
『……わかった。カメラはやめるから』
『当たり前だろ』
『だけど、条件がある』
『……嫌だ』
『言う前から嫌って言わないでくれる?』
『だって絶対ヤバイやつだろ』
『そんなことないって、俺への愛があったら簡単なことだし』
『いや、愛、ないし』
『ほんと、照れ屋だなぁ、アキちゃんは』
『もういいから、条件言え』
『アキちゃん家に泊まるのと、デートする条件にもう1つ加えたい』
『……何?』
『デートのとき、チューはする』
『えー』
『えーじゃないって。もうチューしてるんだし、慣れたもんだろ』
『お前とのチューには慣れたくない。大体、俺が拒んでも無理やりするだろーが。この前の空港んときみたいに。あんとき、後からどれだけ周りの視線が痛かったか知らねーだろ、お前』
『じゃ、やめとく? そしたら本当に実力行使に出るけど』
『…………』
『アキちゃん、よく考えてみて。アキちゃんがどれだけ抵抗してもさ……』
そこで黒埼が一泊置いた。
『俺が本気になったら、意味ないから』
『…………』
神様。俺はなんでこんなやつに惚れられたのでしょうか……。
『これでも凄ぇ譲歩してんだけど』
『…………』
『嫌ならもっとハードル高い条件付けても……「わかった」』
なんとなく事情を飲み込めんだらしい尚人と涼が、喜んでいるのか驚いているのか同情しているのか判断しかねる微妙な顔で晃良を見た。
『ほんとにぃ?? じゃ、アキちゃん、次のデート楽しみにしてるからっ』
明るい声に戻った現金な黒埼に、きっーっとなって、返事もせずに通話を切った。
あのときの会話は思い出すだけでも腹が立つ。あれから真っ直ぐ自室へ向かって、何回、白ブタをどついたことか。
結局あいつの思い通りに事が運んでいるような気がすんだよな。
「晃良くん、夕飯前に風呂入んない?」
尚人の声に我に返った。せっかくの休暇に黒埼のことを考えるのはもったいない。もっとこの状況を楽しまなければ。
「入る」
晃良は立ち上がると、気持ちを切り替えて露天風呂に入る準備を始めた。
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