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婚約破棄?
しおりを挟む工事現場で大きな落盤事故が発生。
怪我をした人たちの救助を優先するように王命が下った。
私──カリンは必死に病院に運ばれてくる負傷者たちに祈りを捧げているうちに、自分の能力を上回るパワーを使い果たしてしまった。
頭がガンガンと痛み、歩けばふらふらとしてしまう。
それでもいつも通り業務をこなさなければならない。だが、茶目っ気のある国王様は温かい言葉をかけて下さった。
「ご苦労だった。身体をゆっくりと休めるように、しばらくは他の魔法使いに任せなさい。これは王命だよ」
最後まで言いおわるとガハハ! と豪快に笑った。
その言葉に甘えさせてもらうことにして、いまは自宅でゆったりとくつろいでいる。
長年、毎日お祈りを捧げてきた私にとってこんなにくつろげるのは何よりのご褒美だった。
でも、そんな大切な時間はいきなり家に飛び込んできたふたりの人物によって邪魔されてしまう……。
「お前とは婚約破棄する! 優しさのカケラもない無能な聖女なんかと誰が結婚するかよ! 国から出ていけ!」
私に向かって物凄い剣幕で怒鳴りつけるのは婚約者のアルフレッド王太子殿下。
「残念ですわね、カリン様……。」
アルフレッド殿下の隣には、最近『聖女の力』に目覚めたボニーノがいた。
哀れむような視線で私を嘲笑してくる。
「……ちょっと待ってください! なぜいきなりこんな話になるのですか??」
「お前が無能だからだよ! ボニーノは聖女として毎日お祈りをしているのに、お前はこんなところでサボっているじゃないか!」
ボニーノは新人の聖女だった。まだ力が不安定で救護のお祈りを捧げることはできない。だから簡単な業務を割り振られているだけなのに……。
「私は業務を放棄したわけではありません。事故が──」
「言い訳は要らない! ともかく、今後私の婚約者の振りなどするなよ! お前にはもうすぐ王命が下るはずだ」
私が説明しようとするのを遮ったアルフレッド殿下が顔を真っ赤にして怒鳴りつけてくる。それにボニーノも続いた。
「私が聖女としても王妃としても相応しいようです、カリン様はご心配なさらずこの国ではないどこかでお幸せに……!」
私から王太子を奪えて嬉しいのか、ボニーノは勝ち誇ったようにうっすらと笑みを浮かべている。
「……アルフレッド殿下には婚約者として一度だけ忠告しておきます。ボニーノと結婚するつもりなら今はやめておいた方がよろしいですわ」
「見苦しいな……。邪魔しようとしたって無駄だ。仕事を放棄した証拠もそろってる。今から王宮に来てもらおうか」
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