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追放されるのは……
しおりを挟む王宮へ向かう馬車の中は、いちゃいちゃと仲睦まじげに身体を寄せ合うふたりのせいで地獄のようだった。
馬車を降りて執務室へと向かうと、国王様が白く蓄えたヒゲを撫でつけながら出迎えてくれた。
「お父様、カリンを連れて参りました」
「カリンはここに座りなさい」
私は返事をすると、ふかふかの一人がけのソファに腰を下ろした。
アルフレッド殿下たちはこれから下される王命を期待してニヤニヤとしている。
「お前を国外追放する」
国王様が静かに王命を下した。
「……残念だったな?」
「あぁ、その通りだな。私の血を引く実の息子がこんなにも出来が悪いなんて」
「え?」
「国外追放するのはお前だよ、アルフレッド」
アルフレッド殿下は口をぽかんと開けたまま、国王様を見つめている。隣にいるボニーノも大きく目を見開いていた。
「国のためにこんなにも尽くしてくれているカリンのことを貶めようと散々やってくれたな」
国王様は紙の束を手に持つと、勢いよくアルフレッド殿下たちに投げつけた。
舞い上がった紙がヒラヒラと宙を舞う。
目の前に落ちたものを拾い上げてみると、
『聖女カリン、仕事を放棄して休みを満喫?』
隠し撮りされた私の写真、事実とは反する見出しが書いてあった。
「新聞社に圧力をかけて書かせたそうだな」
「こ、これは……」
「これだけじゃない、まだまだあるぞ」
血の気が引いたように真っ青になったアルフレッド殿下は、力尽きたように膝から崩れ落ちた。
「王命だ、アルフレッドを国外追放とする」
国王様が近衛騎士に号令をかけると、アルフレッドの脇を抱えて部屋から連れ出そうとする。
「……これは誤解だ! 全てこの女のせいだ! 僕は騙され──」
「私の息子はお前だけじゃないと分かっているだろう? 命令に背くならこの場で処刑するまでだ」
引き摺られながら必死に弁明をするも、国王様の毅然とした態度は変わらない。アルフレッドが出ていくのを見送ったあと、ボニーノに向き直ると、まっすぐ見据えながら尋ねた。
「さて、お前さんはどうするかね? ここに残るのもよし、後を追って出るのもよし」
「……ここに、残りたい……です……」
「だそうだが、どうする? カリン」
「私は構いません。聖女の力を持つなら、逃すより、育てた方がよろしいかと思います」
「そうか、分かった。カリンの好きなようにしてくれ。……本当は反逆罪になってもおかしくないところだったが、今日のところは見逃してやろう」
私の言うことを聞かないようならいつでも罪人にすることができる、という意味だろう。
ボニーノもそれを理解したようで、肩を震わせながら謝罪の言葉を口にした。
これからボニーノを聖女として育てられるのが楽しみで仕方がない。
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