英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

文字の大きさ
143 / 262
第二章

141話 面談①

しおりを挟む
「──えー、蜥蜴人リザードマンの代表の方、どうぞ」

 午後からは面談の為、右に孔明、左に書記官を置いて応接室に詰めていた。

「失礼します……」

 入ってきた男は柚葉色をしたやや光沢のある鱗が全身を覆い、ギョロっとした目で私を見つめた。蜥蜴人族はトカゲをそのまま二足歩行にしたような見た目をしている。

 そこが彼ら亜人・獣人が言う「上位種」「下位種」といった区分の由来だろう。竜人や人狼はほとんど人間に近い姿と本来の獣の姿を使い分けるが、蜥蜴人や犬頭族コボルトは獣をそのまま立たせたような姿である。

「蜥蜴人族の代表アイデクスです。ハオラン様の言い付けにより、我々蜥蜴人族もこちらでお世話になりたく参りました」

 無骨な見た目や声とは裏腹に、アイデクスは丁寧な言葉使いで深々と頭を下げた。

 私は内務官がまとめてくれた書類をめくる。

「リザードマンは水場があれば住処はどこでもいいとの事だったが、ファリア近くの川でも大丈夫だろうか。本来リザードマンは沼地を好むと聞いているが……」

「水の気があれば岩場でも大丈夫です」

「なるほど。では家屋などの用意は必要か? 他にも要望があれば今聞いておこう」

「そうですね、特にありません。ただ食事は川や湖で魚を獲るのが我々の生活スタイルですので、地元漁師の方とトラブルにならなければよいのですが……」

「分かった。その点についてはこちらから話を通しておこう。元からファリアは農業中心だからそこまで心配する必要はないぞ」

 私の言葉を受けてアイデクスは安心したように「ありがとうございます」と頭を下げた。

「それでは次は仕事についてだ。何か担当したい仕事はあるか?」

「いえ、どんな仕事でも精一杯やらせて頂きます。……ただ我々は細かい仕事が苦手な種族です。文字を書けぬ者がほとんどで、できることは限られています」

 彼の手を見るにペンを持つのは難しそうだ。

「よし、では街の警備を任せよう。その分兵士は訓練に充てる時間が増えるのでな」

「それでは我々も戦争の際は遠慮なく最前戦に置いてください」

「……いや、それは場合による。それが必要だと考えればそうするし、そうしないかもしれない。私は亜人・獣人だからと言って命の重さを差別したりはしない」

「…………! ……分かりました。レオ様のお心も知らずに無礼なことを申しました。大変申し訳ありません」

「頭を上げてくれ。私はあなた方の上位種・下位種といった考え方は採用しない。長年の文化を否定もしないがここでは無駄に竜人に対して萎縮する必要もない。……今の話はハオランにな内緒でな」

「なッ……! そ、そんなことが……! ……本当に貴方は伝説に登場する神のようなお方だ……。本当に……! 本当にありがとうございます!」

 “伝説”というワードが聞こえてきて私は若干ドキリとしたが、竜人に伝わるそれとは関係ないよかった。

「今日のところはこんなところだな。また何かあれば遠慮せず伝えに来てくれ」

「ありがとうございましたッ……!」

「あっ、ちょっと──」

 アイデクスはぼろぼろと涙を流しながら応接室を後にした。
 あれでは廊下で待っている次の代表者が何事かと驚いてしまうだろう。

 だがアイデクスは私の声も届かないほどおんおんと声をあげて泣いたまま去っていった。




「リザードマンは良い性格をしているな」

「はい。戦場で見た獣人とは違った姿に、私の中の意識を改めねばと思いました」

 蜥蜴人族とはファリアの人々も上手くやっていけそうだ。




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「次どうぞ──」

「よろしくお願いしますにぁ~」

 入ってきたのは若い人間の女性に猫耳と尻尾を生やした姿の獣人。手元の書類によると、これは猫人族の女のようだ。

「名前をどうぞ」

「猫人族代表のミーツにぁ~。人虎の野郎に言われて来てやったにぁ~」

「ん? 猫人族は人虎に従っているのか?」

 ミーツの姿を見るに、猫人族は妖狐族と似たようにほとんど人間に若干の獣要素を合わせた見た目をしている。
 一般に彼らが言う下位種ではない。

「そういう訳じゃないにぁ? でもミーツたちは自分が得になると思った方に動くだけにぁ~」

 イエネコのイメージが強すぎるが、猫とは世界中で自然界を破壊している強力な捕食者である。
 見た目のその甘い声に油断してはいけない。

「まぁ君たちがどう考えてここに来たかは自由だが。……それで、まずはどんな住処が必要だ?」

「レオ様の所がいいにゃ~!」

「は? ……猫人族は十名来ているようだが、悪いが屋敷にそんなに招くことはできない」

「そんな~、酷いにぁ~。ミーツたちは家もなく野垂れ死んじゃうにぁ~……。しくしく、にゃんにゃん」

 ミーツはわざとらしく椅子から崩れ落ち、大きな瞳から零れた涙を丸めた手で大袈裟に拭き取る。

 私は彼女の大根芝居に少々イラついたが、流して話を続ける。

「ゴホン! ……家は別にちゃんと与える。それでは先に仕事を決めよう。仕事場に近いところに家を用意する」

「仕事はひとつだけにぁ~。そ・れ・は、レオ様へのご奉仕にぁ~♡」

 そう言いながらミーツは筒を握るように手を丸めそれを舐りながら上下に動かすという大変下品極まりないポーズをしだした。

「──孔明、笑ってないでコイツをつまみだせ」

「……いえ失礼。ふふ、レオがまさか美女連環の計を使われるとは。ははは! ──痛たたた、あぁ、お腹が痛くなります!」

 孔明はリカードが呂布でこの女が貂蝉だと言うのか。だとしたら私は董卓ではないか。なんと不名誉な。

 抱腹絶倒している孔明と呆れ半分怒り半分の私の様子を見て、秘書官が慌ててミーツをつまみ出した。






「孔明。猫人族はまともな要望をまとめて書類として提出するまで屋敷に入れるな」

「了解致しました。……ふふ、ですがレオ、世継ぎについて考えるのも大切ですよ。あなたはもうすぐ十五。この国での元服を迎えるのですから」

「だとしてもあれはないだろう。あそこまでわかりやすいハニートラップもないぞ」

「ははは! そうですね! ああ可笑しい!」

 こんなに笑っている孔明は初めて見た。
 できればもっとマシなもので笑ってもらいたかったが。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。  効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。  日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。    青年は今日も女の子を口説き回る。 「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」 「変な人!」 ※2025/6/6 完結。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。

石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません 俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。 本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。 幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。 そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。 彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。 それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』 今度もまた年上ヒロインです。 セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。 カクヨムにも投稿中です

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

処理中です...