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第三章
169話 集結
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「父上、通信機越しには話しましたが、こうして顔を合わせるのは久しぶりですね」
「ああ、それも兵士を介してだからな。元気そうで良かった。……そして皇女殿下、この度はどのような経緯でこのようなことに?」
いつも通りならウィルフリードで一休みしてから出発するが、今回は父にも同時に出発してもらい、外で合流することになった。
「私がどうしてもと言ったの。レオは悪くないわ」
「申し訳ありません父上。戦いが始まれば後ろに下げさせますので……」
「……仕方ありませんね。レオ、しっかりお守りするんだぞ」
父も事情を察してくれたのか、それ以上は何も言わなかった。
「レオ様お久しぶりです」
「アルガーか」
「一度直接お会いしてお礼を言いたかったのです。タリオに準貴族の地位を授けて下さりありがとうございます」
アルガーはそう言い馬上で手網を握りつつも私に顔を向けて頭を下げた。
「礼を言うのは私の方だ。親子二代に渡ってお前たちには本当に世話になっているよ」
「いえ。ありがたいお言葉、感謝します。──それでは」
アルガーはこうした短い挨拶を済ませると先頭集団の方へ駆けていった。いつもの露払いである。
「それでは父上、詳しい話は夜リーンに着いてから孔明を交えてにしましょう」
「そうだな。では俺はウィルフリード本軍の方へ戻る」
そう言い残し父は右に逸れていった。
そしてまた私の周りを歳三と妖狐族の部隊が取り囲み、厳重な護衛体制のまま進軍を続ける。
「ねぇ、これどこまで行くの? 私お腹が空いちゃったわ」
後ろを振り返ると、長い黒髪を風になびかせながら困り顔でエルシャがそう言う。
「悪いが昼は抜きだ。……どこまで行くかだが、先程父と話したようにリーンまで一気にこの森を抜ける。宿場町だからリーンに着けば美味しいものが食べられるぞ」
「そう……」
森にはハオランが人狼族にも軍に加わるよう伝えに行ってくれている。恐らく犬頭族や他の森に住む獣人たちも参戦してくれるはずだ。むしろその約束で住居や仕事の手配をしているのだからその分は働いて貰わないと困る。
「どうしてもと言うなら、馬につけている右の前から三番目のポーチに水と乾パンが入っているぞ」
「い、いえ……、遠慮しとくわ……」
「まあしっかりと本陣を設営すればそれなりの食事はとれるが、野宿する時はそうもいかない。エルもお菓子ではなく乾パンと干し肉を食べることになるからな。覚悟はしておけ」
「そんな……。それに野宿なんて冒険者みたいなこと、私したことないわよ! どうして街に泊まらないの」
「時間がある時は泊まってもいいが、今は急いでいるからな。街のある所で足を止めるのではなく、行けるところまで進みそこで休むようにする。悪いが諦めてくれ」
「…………」
もう既にエルシャはついてきたことを後悔していそうだ。
兵士、特に魔導師には女性も多いが、やはり不潔で血みどろな戦場は彼女たちにとっては堪えるものがあるだろう。私でも未だ慣れない。
だからこそ、これから会うザスクリア=リーンのような豪気な人は凄いと憧れを抱くものだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ハーイ! みんなお久しぶりね!」
「お久しぶりです」
リーンにつくとザスクリアが出迎えてくれた。彼女は戦の前だというのに変わらず明るく爽快な笑顔をしている。
「皇女様を連れている……? なんだかありそうだけど、話は後で聞くわ! さあ、迎賓館にどうぞ! ちょっと騒々しいけどごめんなさいね」
リーンの街でこんなにも兵士が行き交うのは初めて見た。
だが彼女も父と共に王国との戦争を戦い抜いた猛者。その兵も当然それ相応の数と質を持っている。
「ザスクリア、もてなしはいい。明日までに俺たちで作戦を考えるぞ」
「そう思って準備はしてあるわ! でも先に食事を済ませましょう? そっちの兵士も疲れている様子よ」
「ウルツ様、ここはザスクリア様の言に従い一度休息を取られてはどうでしょうか」
先に着いていたアルガーは鎧についた返り血を拭きながらそう父に言った。
人狼やらが住むようになってあの森も盗賊は減った。アルガーの血も恐らくは魔獣のものだろう。
「……うむ。ではそうしようか。……総員明日の日の出まで自由とする! ただし、装備の点検や後に伝えられる作戦についてしっかり確認するように!」
「はっ!」
「我々も同じだ! 後続にもそのように伝えてくれ! ……それと、部隊長を務めることになる各種族の代表は夜、私たちの元へに来るように!」
「了解!」
父と私が指示を出し、一旦この場は解散の流れとなった。
迎賓館には既に料理が用意されていた。
「さあどうぞ! ──それにしても皇女様を連れて戦争に来るなんて、とんでもないことするようになったわね!」
ザスクリアは笑いながらそう言う。
「いやぁ、本当にすみません……」
「ごめんなさい、私が頼んだのです」
「良いのよ! これもきっと何か策があるんでしょう?」
「そ、そうです! これから孔明が説明してくれるはずなので、孔明に任せましょう」
私はあはは……と笑いながら料理に手を付け誤魔化した。ついでに話を逸らして乗り切ろう。
「ち、ちなみに、リーンで亜人・獣人たちはどうですか?」
「そうね、よく働いてくれているわ。だけど、ほとんどの強い種族たちはファリアやウィルフリードに集まっているから、戦力としては期待できない。街としては客の往来も増えた嬉しいんだけどね。その数は多いとは言えないわ」
「なるほど……」
私が推し進めた亜人・獣人との共生社会。中央が軍事面以外でそれほど乗り気ではないからか、私の周囲以外での亜人・獣人たちと人間との溝は未だに残っているようだ。
やはり国の中心が資金や法律などの面で支援し、強く推進する必要がある。
「この戦いが終われば、きっとより利益をもたらすはずです」
「良いのよそんなに気張らなくて!」
考えれば妖狐族との約束である海外の調査も全く行えていない。
現状地方領主に過ぎない私のままでは、まだまだ力が足りないのだ。
「ああ、それも兵士を介してだからな。元気そうで良かった。……そして皇女殿下、この度はどのような経緯でこのようなことに?」
いつも通りならウィルフリードで一休みしてから出発するが、今回は父にも同時に出発してもらい、外で合流することになった。
「私がどうしてもと言ったの。レオは悪くないわ」
「申し訳ありません父上。戦いが始まれば後ろに下げさせますので……」
「……仕方ありませんね。レオ、しっかりお守りするんだぞ」
父も事情を察してくれたのか、それ以上は何も言わなかった。
「レオ様お久しぶりです」
「アルガーか」
「一度直接お会いしてお礼を言いたかったのです。タリオに準貴族の地位を授けて下さりありがとうございます」
アルガーはそう言い馬上で手網を握りつつも私に顔を向けて頭を下げた。
「礼を言うのは私の方だ。親子二代に渡ってお前たちには本当に世話になっているよ」
「いえ。ありがたいお言葉、感謝します。──それでは」
アルガーはこうした短い挨拶を済ませると先頭集団の方へ駆けていった。いつもの露払いである。
「それでは父上、詳しい話は夜リーンに着いてから孔明を交えてにしましょう」
「そうだな。では俺はウィルフリード本軍の方へ戻る」
そう言い残し父は右に逸れていった。
そしてまた私の周りを歳三と妖狐族の部隊が取り囲み、厳重な護衛体制のまま進軍を続ける。
「ねぇ、これどこまで行くの? 私お腹が空いちゃったわ」
後ろを振り返ると、長い黒髪を風になびかせながら困り顔でエルシャがそう言う。
「悪いが昼は抜きだ。……どこまで行くかだが、先程父と話したようにリーンまで一気にこの森を抜ける。宿場町だからリーンに着けば美味しいものが食べられるぞ」
「そう……」
森にはハオランが人狼族にも軍に加わるよう伝えに行ってくれている。恐らく犬頭族や他の森に住む獣人たちも参戦してくれるはずだ。むしろその約束で住居や仕事の手配をしているのだからその分は働いて貰わないと困る。
「どうしてもと言うなら、馬につけている右の前から三番目のポーチに水と乾パンが入っているぞ」
「い、いえ……、遠慮しとくわ……」
「まあしっかりと本陣を設営すればそれなりの食事はとれるが、野宿する時はそうもいかない。エルもお菓子ではなく乾パンと干し肉を食べることになるからな。覚悟はしておけ」
「そんな……。それに野宿なんて冒険者みたいなこと、私したことないわよ! どうして街に泊まらないの」
「時間がある時は泊まってもいいが、今は急いでいるからな。街のある所で足を止めるのではなく、行けるところまで進みそこで休むようにする。悪いが諦めてくれ」
「…………」
もう既にエルシャはついてきたことを後悔していそうだ。
兵士、特に魔導師には女性も多いが、やはり不潔で血みどろな戦場は彼女たちにとっては堪えるものがあるだろう。私でも未だ慣れない。
だからこそ、これから会うザスクリア=リーンのような豪気な人は凄いと憧れを抱くものだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ハーイ! みんなお久しぶりね!」
「お久しぶりです」
リーンにつくとザスクリアが出迎えてくれた。彼女は戦の前だというのに変わらず明るく爽快な笑顔をしている。
「皇女様を連れている……? なんだかありそうだけど、話は後で聞くわ! さあ、迎賓館にどうぞ! ちょっと騒々しいけどごめんなさいね」
リーンの街でこんなにも兵士が行き交うのは初めて見た。
だが彼女も父と共に王国との戦争を戦い抜いた猛者。その兵も当然それ相応の数と質を持っている。
「ザスクリア、もてなしはいい。明日までに俺たちで作戦を考えるぞ」
「そう思って準備はしてあるわ! でも先に食事を済ませましょう? そっちの兵士も疲れている様子よ」
「ウルツ様、ここはザスクリア様の言に従い一度休息を取られてはどうでしょうか」
先に着いていたアルガーは鎧についた返り血を拭きながらそう父に言った。
人狼やらが住むようになってあの森も盗賊は減った。アルガーの血も恐らくは魔獣のものだろう。
「……うむ。ではそうしようか。……総員明日の日の出まで自由とする! ただし、装備の点検や後に伝えられる作戦についてしっかり確認するように!」
「はっ!」
「我々も同じだ! 後続にもそのように伝えてくれ! ……それと、部隊長を務めることになる各種族の代表は夜、私たちの元へに来るように!」
「了解!」
父と私が指示を出し、一旦この場は解散の流れとなった。
迎賓館には既に料理が用意されていた。
「さあどうぞ! ──それにしても皇女様を連れて戦争に来るなんて、とんでもないことするようになったわね!」
ザスクリアは笑いながらそう言う。
「いやぁ、本当にすみません……」
「ごめんなさい、私が頼んだのです」
「良いのよ! これもきっと何か策があるんでしょう?」
「そ、そうです! これから孔明が説明してくれるはずなので、孔明に任せましょう」
私はあはは……と笑いながら料理に手を付け誤魔化した。ついでに話を逸らして乗り切ろう。
「ち、ちなみに、リーンで亜人・獣人たちはどうですか?」
「そうね、よく働いてくれているわ。だけど、ほとんどの強い種族たちはファリアやウィルフリードに集まっているから、戦力としては期待できない。街としては客の往来も増えた嬉しいんだけどね。その数は多いとは言えないわ」
「なるほど……」
私が推し進めた亜人・獣人との共生社会。中央が軍事面以外でそれほど乗り気ではないからか、私の周囲以外での亜人・獣人たちと人間との溝は未だに残っているようだ。
やはり国の中心が資金や法律などの面で支援し、強く推進する必要がある。
「この戦いが終われば、きっとより利益をもたらすはずです」
「良いのよそんなに気張らなくて!」
考えれば妖狐族との約束である海外の調査も全く行えていない。
現状地方領主に過ぎない私のままでは、まだまだ力が足りないのだ。
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