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第三章
176話 進撃
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ウェグの街は包囲するとすぐに降伏した。反撃など全くなく、ミドラ侯爵のおかげで私たちは体力を温存したまま次へ向かうことができた。
皇都まであと領地は一つだ。次に敵となる皇都手前の最後の関門、トーアを目指し進軍を開始した。
その前に私たちはウェグを占領するに当たっていくらか物資を接収し、準備は万全である。戦意は上々、用意した兵器や弾薬の類も十分に残っており、来るべき戦いに兵も皆真剣な面持ちだ。
「レオ様、デアーグ=エアネスト公爵より直接話したいと入電があったようです」
「なんだ……? それなら私は後ろの通信部隊の所まで下がるが……」
私と護衛の歳三やタリオらは一旦隊列から離れ軍を見送る。
しばらくすると二台の荷馬車が私たちの前に停まった。
一台目の中からは孔明が顔を出す。となると大量の通信機と通信部隊を乗せた荷馬車はもう一つの方か。
「……孔明もわざわざ直接出てくるとなると、いよいよということか」
「ご明察の通りです。まずはエアネスト公爵とお話を」
「うむ……」
私は通信部隊の荷馬車に乗り込む。中にいる部隊の兵士たちの顔は緊張で強ばっていた。
「──デアーグ殿、レオ=ウィルフリードです」
『……来たか。……奴らも動き始めたぞ』
「皇都の連中ですか」
『ああ。皇都にいる我々の間諜が簡単に情報を手に入れることができた』
「……その内容とは?」
私は固唾を呑んでその事実が告げられるのを待った。
『……国有軍が動いた。皇都では戒厳令が出され大規模な徴兵も行われている 。最終的にどうなるかは不明だが、今のところ国有軍は二十万だ』
いつも国有軍に兵を出している中央貴族たちを、我々の派閥の地方貴族らが攻撃しているため彼らは兵を供出できず、国有軍本隊の兵数はかなり減らすことができた。
しかし依然として敵は我々の十倍の兵力。しかもこれからも膨れ上がるだろう。
『国有軍は当然、このクーデターの首謀者を始末すべくそちらに向かうだろう。トーアの三万の兵がそちらを足止めしている間に二十万で包囲するつもりだ。こちらの戦いが片付けば我々エアネスト軍五万が援護に行く。……しかし厳しい戦いになるぞ』
つまり合計した兵力で考えると、私たち七万に対し敵二十三万だ。
三倍の兵力。十六万の兵数差。いざそれが目の前まで迫っているのだと聞くと、流石に通信機を持つ手が震える。
「……援軍感謝します。厳しい戦いになるのは百も承知です。ここで勝てなければこの世界に泰平の世をもたらすなど夢物語なのですから、全力を尽くすまでです」
自軍の兵士やデアーグのような協力者がいる手前、そう強気に前向きなことを言ったが、実際は恐怖で今すぐ逃げ出したいぐらいだ。
しかし私が始めた以上、私が逃げ出す訳にはいかない。
『幸いなことに我々の快進撃を聞いて、中立派の貴族や我々の派閥でありながら攻撃を渋っていた貴族が出兵をほのめかしてきている。我々がここで一瞬でも優勢を作り出せれば彼らが動き勝機を見出すことができるかもしれない』
「分かりました。それでは私たちはトーア三万を相手にこれから先制攻撃を仕掛けます。国有軍二十万が来る前に倒してみせますよ。……そちらも、どうか勝利し援軍が無事来るよう、デアーグ殿のご武運をお祈り申し上げます。」
『……互いに生きて会おう』
そこで通信は終わった。
「れ、レオ様……、こちらを……」
「ん……? ああ……。すまないな……」
兵士にハンカチを手渡され、私の額に尋常じゃない程の脂汗が浮かんでいることに気がついた。革の手袋の中は汗でびっしょり、背中は汗が冷えて悪寒が走る。
しかし周囲の兵の間に不安が広まらないよう、あくまでも平然を装い私は通信部隊の馬車を降りた。
「と、とりあえず、このことについて情報共有をしよう。話はそれからだ……」
「……遂にだな」
「策は用意してあります。後は敵を打ち破るのみです」
「レオ様……、最後までお供致します……」
「敗北は許されない。戦いが始まる前に一度また全員で集まり最終確認を行おう……」
戦いが始まれば確実にそれどころではなくなる。今日この時が、私にとって人生最後の落ち着ける時間になるかもしれないのだ。
『──レオ、前方にトーア軍を確認した。敵はトーアの街から少し手前に防護柵や堀を設置し迎撃の構えだ。奥に見えるトーアの外壁を見ても、我々との交戦位置を壁上の投石器やバリスタの射程範囲に収め既に優位な状態を作られている。そして並んでいる兵数も少ない。恐らくはこの周囲の森に伏兵がいるだろう』
「……情報ありがとうルーデル。だが偵察を中止しすぐに戻ってこい。全ての武装について使用を許可する。……決戦の時は来た」
『……ハハッ! そうか! では先制攻撃は俺にやらせてくれ! まるで死んでいるかのように静かな奴らの頭上に爆弾の雨を降らせてやる!』
ウォージャンキーめ。だが今はそれが頼もしい。
「……この戦い、必ず勝つぞ」
数で劣っていても質で勝てばいい。……そう言い切れればまだよかった。
だが敵は最高級の装備品を揃えた歴戦の国有軍。近衛騎士団や宮廷魔導師、ワイバーン竜騎兵といった名高い強力な部隊がいくつもある。
しかし、それを覆すために新兵器や新戦術を生み出し、先の戦いでベゾークトに対して完膚なきまでの勝利を収めた。
……今回も必ず勝てる。
守るべきもののために、負ける訳にはいかない。
皇都まであと領地は一つだ。次に敵となる皇都手前の最後の関門、トーアを目指し進軍を開始した。
その前に私たちはウェグを占領するに当たっていくらか物資を接収し、準備は万全である。戦意は上々、用意した兵器や弾薬の類も十分に残っており、来るべき戦いに兵も皆真剣な面持ちだ。
「レオ様、デアーグ=エアネスト公爵より直接話したいと入電があったようです」
「なんだ……? それなら私は後ろの通信部隊の所まで下がるが……」
私と護衛の歳三やタリオらは一旦隊列から離れ軍を見送る。
しばらくすると二台の荷馬車が私たちの前に停まった。
一台目の中からは孔明が顔を出す。となると大量の通信機と通信部隊を乗せた荷馬車はもう一つの方か。
「……孔明もわざわざ直接出てくるとなると、いよいよということか」
「ご明察の通りです。まずはエアネスト公爵とお話を」
「うむ……」
私は通信部隊の荷馬車に乗り込む。中にいる部隊の兵士たちの顔は緊張で強ばっていた。
「──デアーグ殿、レオ=ウィルフリードです」
『……来たか。……奴らも動き始めたぞ』
「皇都の連中ですか」
『ああ。皇都にいる我々の間諜が簡単に情報を手に入れることができた』
「……その内容とは?」
私は固唾を呑んでその事実が告げられるのを待った。
『……国有軍が動いた。皇都では戒厳令が出され大規模な徴兵も行われている 。最終的にどうなるかは不明だが、今のところ国有軍は二十万だ』
いつも国有軍に兵を出している中央貴族たちを、我々の派閥の地方貴族らが攻撃しているため彼らは兵を供出できず、国有軍本隊の兵数はかなり減らすことができた。
しかし依然として敵は我々の十倍の兵力。しかもこれからも膨れ上がるだろう。
『国有軍は当然、このクーデターの首謀者を始末すべくそちらに向かうだろう。トーアの三万の兵がそちらを足止めしている間に二十万で包囲するつもりだ。こちらの戦いが片付けば我々エアネスト軍五万が援護に行く。……しかし厳しい戦いになるぞ』
つまり合計した兵力で考えると、私たち七万に対し敵二十三万だ。
三倍の兵力。十六万の兵数差。いざそれが目の前まで迫っているのだと聞くと、流石に通信機を持つ手が震える。
「……援軍感謝します。厳しい戦いになるのは百も承知です。ここで勝てなければこの世界に泰平の世をもたらすなど夢物語なのですから、全力を尽くすまでです」
自軍の兵士やデアーグのような協力者がいる手前、そう強気に前向きなことを言ったが、実際は恐怖で今すぐ逃げ出したいぐらいだ。
しかし私が始めた以上、私が逃げ出す訳にはいかない。
『幸いなことに我々の快進撃を聞いて、中立派の貴族や我々の派閥でありながら攻撃を渋っていた貴族が出兵をほのめかしてきている。我々がここで一瞬でも優勢を作り出せれば彼らが動き勝機を見出すことができるかもしれない』
「分かりました。それでは私たちはトーア三万を相手にこれから先制攻撃を仕掛けます。国有軍二十万が来る前に倒してみせますよ。……そちらも、どうか勝利し援軍が無事来るよう、デアーグ殿のご武運をお祈り申し上げます。」
『……互いに生きて会おう』
そこで通信は終わった。
「れ、レオ様……、こちらを……」
「ん……? ああ……。すまないな……」
兵士にハンカチを手渡され、私の額に尋常じゃない程の脂汗が浮かんでいることに気がついた。革の手袋の中は汗でびっしょり、背中は汗が冷えて悪寒が走る。
しかし周囲の兵の間に不安が広まらないよう、あくまでも平然を装い私は通信部隊の馬車を降りた。
「と、とりあえず、このことについて情報共有をしよう。話はそれからだ……」
「……遂にだな」
「策は用意してあります。後は敵を打ち破るのみです」
「レオ様……、最後までお供致します……」
「敗北は許されない。戦いが始まる前に一度また全員で集まり最終確認を行おう……」
戦いが始まれば確実にそれどころではなくなる。今日この時が、私にとって人生最後の落ち着ける時間になるかもしれないのだ。
『──レオ、前方にトーア軍を確認した。敵はトーアの街から少し手前に防護柵や堀を設置し迎撃の構えだ。奥に見えるトーアの外壁を見ても、我々との交戦位置を壁上の投石器やバリスタの射程範囲に収め既に優位な状態を作られている。そして並んでいる兵数も少ない。恐らくはこの周囲の森に伏兵がいるだろう』
「……情報ありがとうルーデル。だが偵察を中止しすぐに戻ってこい。全ての武装について使用を許可する。……決戦の時は来た」
『……ハハッ! そうか! では先制攻撃は俺にやらせてくれ! まるで死んでいるかのように静かな奴らの頭上に爆弾の雨を降らせてやる!』
ウォージャンキーめ。だが今はそれが頼もしい。
「……この戦い、必ず勝つぞ」
数で劣っていても質で勝てばいい。……そう言い切れればまだよかった。
だが敵は最高級の装備品を揃えた歴戦の国有軍。近衛騎士団や宮廷魔導師、ワイバーン竜騎兵といった名高い強力な部隊がいくつもある。
しかし、それを覆すために新兵器や新戦術を生み出し、先の戦いでベゾークトに対して完膚なきまでの勝利を収めた。
……今回も必ず勝てる。
守るべきもののために、負ける訳にはいかない。
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