191 / 262
第三章
189話 後始末
しおりを挟む
「その首、どうしますか? 大通りに晒して民衆に今の王は誰かを示すとか……」
タリオが意外にも残酷なことを言うので少し驚いた。
「いや、それはやめておこう。先帝と第一皇子と同じ場所に手厚く葬ってやれ」
私の言葉を聞いてタリオはそっとボーゼンの遺体に布を被せた。私も取った首をその横にそっと置く。
私が宝剣に付いた血を丁寧に拭いていると、障害が発生していたはずの通信機から音が聞こえてきた。
『……あー、あー、……聞こえていますか?』
「聞こえているぞ孔明。通信が戻ったのだな」
『はい。通信機自体が壊れたという訳ではないので、時間が経てば乱れも落ち着き、無事に使えるようです。……それで、そちらはどのような状況ですか?』
「……終わったよ。……全てな」
『そうですか。……まずは、心よりお喜び申し上げます』
「ありがとう。お前含め、皆のおかげだ」
『我が君の偉業に微力ながら貢献できたこと、光栄に思います。……ですがその行程はまだ終わりではありません』
「その通りだ。これからどうする? と、その前にそっちに残っていた国有軍はどうなった? 大丈夫か?」
私はここから先、孔明の指示が皆に聞こえるように通信機の音量を上げた。
『はい、問題ありません。壁上に翻る旗を見た敵軍は皆降伏し、捕虜としました。これから彼らを連れ皇都へ入ります。そして私たちの勝利を宣言しましょう』
「そうか。本当に戦いは終わったのだな……。……いや待て、歳三たちはどうなった? それに未だ勝利を知らずに戦いを続けている他貴族もいるだろう」
『そうですね。もちろんすぐに通信機で連絡します。ですがもうひとつ、同時にやりたい策があります』
「ほう……?」
『他の貴族たちも皆皇都に迫る勢いで戦っているようです。我々が国有軍の主力を引き受けましたからね。……ですので、ここで、とあることをやってみたいと思うのです』
孔明は通信機越しでも分かるぐらい楽しそうにそう言った。
「通信以外にやることがあるのか……? まあ任せるが。……ではまた後程会おう」
『はい。それでは失礼します──』
ちょうど通信が終わった頃、玉座の間には城の調査を終えた諜報部の隊員が次々とやって来た。
「お知らせします。皇后は地下の十二番目の牢に居ました。鍵は発見できず、鉄格子には防護魔法が付与されており壊すのには時間が掛かります」
「どうしましょうかレオ様」
皇后と言えば先帝の横に座っているだけの人というイメージしかない。国の歴史的な風潮から考えても政治的な権力はほとんどないだろうが、万が一にも第二側を味方するというリスクはある。
しかし皇后はエルシャに残された唯一の肉親であり、私の義母となる人間だ。私が覇道を征くなら少しのリスクも許すこと無くこの動乱を機に彼女をそっと処刑すべきなのだろうが、私はそこまで心を捨てたくはない。
「助けてやってくれ。エルシャにはせめて母親の顔だけでも見せてやりたい」
「だそうだ。手隙の者は皇后救出に当たれ」
「は」
最初にやって来た五人程の隊員が去って行く。
そして順番待ちをしていた次の者が入って来た。
「お知らせします。城内の安全は確保しました。仕掛けられていた罠は全て解除し潜んでいた敵兵は排除、非戦闘員は身体検査を済ませ大広間一箇所に集めています」
「彼らはどうしましょうか、レオ様」
役人連中の処遇も悩ましい。彼らもボーゼン政権の元で働いている以上私たちに対しては何らかの敵対的な行動をしていただろう。中にはもっと昔からヴァルターと繋がりがある人間もいるだろう。
しかしどこかで線引きをしてから処遇を決めねば、一括に彼らを殺してしまえば国の運営がままならなくなる。良くも悪くも今までの帝国は彼らによって成り立っていたのだから。
「今は中央派との繋がりを軽く尋問する程度に留めておけ。それよりも隠蔽される前に手紙や契約書など、奴らの陰謀を暴く証拠品の捜索を頼む」
「だそうだ。捕虜の見張りと尋問に数名、残りの者は証拠品の捜索と押収をするように」
「は」
これでひとまずこっちでできることは済んだ。詳しいことは
私はハオランたちを連れ血塗れた玉座の間を後にした。
私たちは一度居館の外に出て外の空気を吸い、気分を落ち着かせていた。
皆、何かしら思うところはあるだろう。無言で皇城から見下ろす皇都の景色を眺めている。
これで正真正銘、この一連の戦いは終わったのだ。
亜人・獣人の国々との戦争には奴らの思惑が絡んでいた。シャルフやハオランたちにとってはこれはある意味の復讐でもある。
私にとしても、地方領主という地位とエルシャという婚約者を与えてくれた、今は亡き先帝の恩に少しは報いることができたと思う。
『……聞こえますか?』
少しすると孔明から通信が入った。
「ああ」
『まずは共に戦ってくれた兵に向けて、レオ自身の口から改めて終戦の宣言を』
「分かった。……今どこにいる?」
『皇都の中央広場です。現在は列を整えながらエアネスト公爵が話をしています。そのうち何となく民衆も集まってくるでしょう。民衆への正式な演説はまた別にやりますが、折角の機会です。活かさない手はありません』
「なるほどな。それでは私の方で内容を考えつつそちらへ向かう」
『はい。ではお待ちしております──』
タリオが意外にも残酷なことを言うので少し驚いた。
「いや、それはやめておこう。先帝と第一皇子と同じ場所に手厚く葬ってやれ」
私の言葉を聞いてタリオはそっとボーゼンの遺体に布を被せた。私も取った首をその横にそっと置く。
私が宝剣に付いた血を丁寧に拭いていると、障害が発生していたはずの通信機から音が聞こえてきた。
『……あー、あー、……聞こえていますか?』
「聞こえているぞ孔明。通信が戻ったのだな」
『はい。通信機自体が壊れたという訳ではないので、時間が経てば乱れも落ち着き、無事に使えるようです。……それで、そちらはどのような状況ですか?』
「……終わったよ。……全てな」
『そうですか。……まずは、心よりお喜び申し上げます』
「ありがとう。お前含め、皆のおかげだ」
『我が君の偉業に微力ながら貢献できたこと、光栄に思います。……ですがその行程はまだ終わりではありません』
「その通りだ。これからどうする? と、その前にそっちに残っていた国有軍はどうなった? 大丈夫か?」
私はここから先、孔明の指示が皆に聞こえるように通信機の音量を上げた。
『はい、問題ありません。壁上に翻る旗を見た敵軍は皆降伏し、捕虜としました。これから彼らを連れ皇都へ入ります。そして私たちの勝利を宣言しましょう』
「そうか。本当に戦いは終わったのだな……。……いや待て、歳三たちはどうなった? それに未だ勝利を知らずに戦いを続けている他貴族もいるだろう」
『そうですね。もちろんすぐに通信機で連絡します。ですがもうひとつ、同時にやりたい策があります』
「ほう……?」
『他の貴族たちも皆皇都に迫る勢いで戦っているようです。我々が国有軍の主力を引き受けましたからね。……ですので、ここで、とあることをやってみたいと思うのです』
孔明は通信機越しでも分かるぐらい楽しそうにそう言った。
「通信以外にやることがあるのか……? まあ任せるが。……ではまた後程会おう」
『はい。それでは失礼します──』
ちょうど通信が終わった頃、玉座の間には城の調査を終えた諜報部の隊員が次々とやって来た。
「お知らせします。皇后は地下の十二番目の牢に居ました。鍵は発見できず、鉄格子には防護魔法が付与されており壊すのには時間が掛かります」
「どうしましょうかレオ様」
皇后と言えば先帝の横に座っているだけの人というイメージしかない。国の歴史的な風潮から考えても政治的な権力はほとんどないだろうが、万が一にも第二側を味方するというリスクはある。
しかし皇后はエルシャに残された唯一の肉親であり、私の義母となる人間だ。私が覇道を征くなら少しのリスクも許すこと無くこの動乱を機に彼女をそっと処刑すべきなのだろうが、私はそこまで心を捨てたくはない。
「助けてやってくれ。エルシャにはせめて母親の顔だけでも見せてやりたい」
「だそうだ。手隙の者は皇后救出に当たれ」
「は」
最初にやって来た五人程の隊員が去って行く。
そして順番待ちをしていた次の者が入って来た。
「お知らせします。城内の安全は確保しました。仕掛けられていた罠は全て解除し潜んでいた敵兵は排除、非戦闘員は身体検査を済ませ大広間一箇所に集めています」
「彼らはどうしましょうか、レオ様」
役人連中の処遇も悩ましい。彼らもボーゼン政権の元で働いている以上私たちに対しては何らかの敵対的な行動をしていただろう。中にはもっと昔からヴァルターと繋がりがある人間もいるだろう。
しかしどこかで線引きをしてから処遇を決めねば、一括に彼らを殺してしまえば国の運営がままならなくなる。良くも悪くも今までの帝国は彼らによって成り立っていたのだから。
「今は中央派との繋がりを軽く尋問する程度に留めておけ。それよりも隠蔽される前に手紙や契約書など、奴らの陰謀を暴く証拠品の捜索を頼む」
「だそうだ。捕虜の見張りと尋問に数名、残りの者は証拠品の捜索と押収をするように」
「は」
これでひとまずこっちでできることは済んだ。詳しいことは
私はハオランたちを連れ血塗れた玉座の間を後にした。
私たちは一度居館の外に出て外の空気を吸い、気分を落ち着かせていた。
皆、何かしら思うところはあるだろう。無言で皇城から見下ろす皇都の景色を眺めている。
これで正真正銘、この一連の戦いは終わったのだ。
亜人・獣人の国々との戦争には奴らの思惑が絡んでいた。シャルフやハオランたちにとってはこれはある意味の復讐でもある。
私にとしても、地方領主という地位とエルシャという婚約者を与えてくれた、今は亡き先帝の恩に少しは報いることができたと思う。
『……聞こえますか?』
少しすると孔明から通信が入った。
「ああ」
『まずは共に戦ってくれた兵に向けて、レオ自身の口から改めて終戦の宣言を』
「分かった。……今どこにいる?」
『皇都の中央広場です。現在は列を整えながらエアネスト公爵が話をしています。そのうち何となく民衆も集まってくるでしょう。民衆への正式な演説はまた別にやりますが、折角の機会です。活かさない手はありません』
「なるほどな。それでは私の方で内容を考えつつそちらへ向かう」
『はい。ではお待ちしております──』
13
あなたにおすすめの小説
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。
石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません
俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。
本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。
幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。
そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。
彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。
それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』
今度もまた年上ヒロインです。
セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。
カクヨムにも投稿中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる