203 / 262
第三章
201話 国家改革
しおりを挟む
「……では次。航空交通運輸局局長、ハオラン=リューシェン。緊急時の移動や輸送、及び航空からの地図作成などを任せる」
「盟友の為、この竜の翼を授けよう」
正直わざわざ局を作ってまでやる仕事ではない。だが他の種族には位を与えて仕事をしてもらうのに、竜人にだけ頼まないのでは彼らのプライドが傷つけられる。
そうした多少の配慮もありつつ、しかしこれで未だ竜の谷に住む人間との生活に興味がない竜人たちもハオランの権限で動員できるらしいのでメリットもある。
ハオランが勝手に地方領地に移り住み何人か連れて一緒に働くのと、国として竜人に役職を与えるのでは向こうの竜人たちへの心象が大きく違うとの事だ。
「……では次。森林環境局局長、シャルフ=バルデマー。森林の管理や林業など、環境保護に木材生産などの適切な運用を頼んだ」
「森は我らエルフの誇りにかけて守り抜く」
エルフの森に生い茂る巨大樹は、あれ一本で十軒は家が建つほど大量に丈夫な木材を生み出す。
また広大な帝国の領土の至る所にある手付かずの森林は、エルフたちの知恵と技術によって宝の山へと姿を変えるだろう。
「……では次。水産管理局局長、アイデクス。帝国は湖や川しかないが亜人・獣人諸国では漁業も本格的に行えるだろう。妖狐族との約束を果たすべく遠洋を目指す船の開発も進めている。漁業のこれからを任せる」
「私などを取り立てて下さりこの上ない光栄です。全力で臨ませていただきます」
しかし船の開発は文字通り難航を極めている。手漕ぎではどう頑張っても二つの月から生み出される複雑な潮流から逃れることができない。
研究開発局による蒸気機関の発明が待たれるところだ。
「……では次。害獣魔獣対策局局長。リカード=ティーゲル、ヴォルフ=アードルフ両名。主に森林に生息する脅威に対する対策を任せる。基本は機動力に優れる人狼族が、人狼で対処できない強大な魔獣などには人虎族が対処に当たってくれ」
「……分かった」
「……了解した……」
モンスターや魔獣に対応する兵を削減できれば、それだけ別のところに予算を回せる。
彼らは元から森に住む者たちで、魔獣やらへの対処も人間の数倍は長けている。
「……以上だ。これよりこのメンバーでこの国を運営していく。各機関は独立した組織でありながら綿密な協力を要する。万が一トラブルがあれば孔明か私に知らせてくれ。──では最後に全員の署名を持って内閣の組閣を完了とする」
後ろに控えていた文官が孔明に薄い冊子を渡した。革張りの表紙を開くと、中は見開きで白紙のページが広がっている。
孔明から順にそこへペンで名前を記していく。
ある者は震える手で、ある者は満足そうな表情で署名をする。
一周して私にまで回ってきた冊子には、それぞれの国、種族の文字でずらっと名前が並んでいた。
私はそれを指でなぞりしっかり確かめた後、両ページにまたがるように一番上の所へ、レオ=フォン=プロメリトスと書き記す。そして皇帝の印をその横に捺印した。
「……よし、これで終わりだ。今この時をもって諸君らは帝国の官僚である。気を引き締めて公務に当たってくれ」
「「おう!」」
「「はい」」
「「は!」」
「「了解しました!」」
「「……了解」」
任命式もなく、彼らは次々に立ち上がり各自の仕事場へと向かった。
そして広い会合スペースには私と孔明、そしてナポレオンと数名の文官だけが残された。
「……次は憲法の制定だ。ナポレオン」
「ああ、これだ」
私の前に分厚い一冊の本が置かれる。
憲法は私の朧気な記憶から日本国憲法を引っ張り出し、それとナポレオン法典を掛け合わせ、最終的に孔明に調整してもらったのがこの帝国憲法である。
またその二つ以外から私たちが独自に作った重要な所を挙げると、それは議会制度についてだ。
まず形骸化した元老院は解体した。権力者の老人連中が騒いでいたが、後ろ盾の中央貴族が力を失いろくな反抗もできなかった。
その代わりに選挙を行い一般市民による議会の設立を目指す。しかし急には無理なので、十年後に選挙を行うこととした。それまでに教育を拡充する狙いだ。
そして議会は二院制。市民たちによる下院とは別に、全貴族による上院も設立する。
上院は選挙がない世襲議員による議会となるため、下院の優位性が認められる。これはイギリスの貴族院と庶民院とちょうど同じようなものだ。
そしてここがポイントだが、先程述べたように十年間は市民による下院が開けない。その間は我々内閣が下院の代わりとして立法などを行う。
つまり十年間は私たちが好きにできるという訳だ。元は永久的にそうしていたが、いずれは民主化も果たしたいという願いからこの様な形をとった。
そしてもうひとつ大きな変更点。それは皇帝の罷免。無血革命条項である。
下院・上院の両院で2/3以上の賛成、そして内閣で丞相含む過半数の賛成があった場合、皇帝が反対したとしても皇位の剥奪が可能になる。
難易度はかなり高いだろう。しかし軍事力による政変よりはまだ現実的に見える。
皇帝としても、貴族と市民両方に対して誠実な政治を行わなければならない。そして身内の内閣にも見捨てられないように立ち回らなければならない。
皇帝が自らの行動を制限するこの憲法を、自分から承認するという行為。これは今後数百年の帝国史を左右する、大きな一歩であろう。
「盟友の為、この竜の翼を授けよう」
正直わざわざ局を作ってまでやる仕事ではない。だが他の種族には位を与えて仕事をしてもらうのに、竜人にだけ頼まないのでは彼らのプライドが傷つけられる。
そうした多少の配慮もありつつ、しかしこれで未だ竜の谷に住む人間との生活に興味がない竜人たちもハオランの権限で動員できるらしいのでメリットもある。
ハオランが勝手に地方領地に移り住み何人か連れて一緒に働くのと、国として竜人に役職を与えるのでは向こうの竜人たちへの心象が大きく違うとの事だ。
「……では次。森林環境局局長、シャルフ=バルデマー。森林の管理や林業など、環境保護に木材生産などの適切な運用を頼んだ」
「森は我らエルフの誇りにかけて守り抜く」
エルフの森に生い茂る巨大樹は、あれ一本で十軒は家が建つほど大量に丈夫な木材を生み出す。
また広大な帝国の領土の至る所にある手付かずの森林は、エルフたちの知恵と技術によって宝の山へと姿を変えるだろう。
「……では次。水産管理局局長、アイデクス。帝国は湖や川しかないが亜人・獣人諸国では漁業も本格的に行えるだろう。妖狐族との約束を果たすべく遠洋を目指す船の開発も進めている。漁業のこれからを任せる」
「私などを取り立てて下さりこの上ない光栄です。全力で臨ませていただきます」
しかし船の開発は文字通り難航を極めている。手漕ぎではどう頑張っても二つの月から生み出される複雑な潮流から逃れることができない。
研究開発局による蒸気機関の発明が待たれるところだ。
「……では次。害獣魔獣対策局局長。リカード=ティーゲル、ヴォルフ=アードルフ両名。主に森林に生息する脅威に対する対策を任せる。基本は機動力に優れる人狼族が、人狼で対処できない強大な魔獣などには人虎族が対処に当たってくれ」
「……分かった」
「……了解した……」
モンスターや魔獣に対応する兵を削減できれば、それだけ別のところに予算を回せる。
彼らは元から森に住む者たちで、魔獣やらへの対処も人間の数倍は長けている。
「……以上だ。これよりこのメンバーでこの国を運営していく。各機関は独立した組織でありながら綿密な協力を要する。万が一トラブルがあれば孔明か私に知らせてくれ。──では最後に全員の署名を持って内閣の組閣を完了とする」
後ろに控えていた文官が孔明に薄い冊子を渡した。革張りの表紙を開くと、中は見開きで白紙のページが広がっている。
孔明から順にそこへペンで名前を記していく。
ある者は震える手で、ある者は満足そうな表情で署名をする。
一周して私にまで回ってきた冊子には、それぞれの国、種族の文字でずらっと名前が並んでいた。
私はそれを指でなぞりしっかり確かめた後、両ページにまたがるように一番上の所へ、レオ=フォン=プロメリトスと書き記す。そして皇帝の印をその横に捺印した。
「……よし、これで終わりだ。今この時をもって諸君らは帝国の官僚である。気を引き締めて公務に当たってくれ」
「「おう!」」
「「はい」」
「「は!」」
「「了解しました!」」
「「……了解」」
任命式もなく、彼らは次々に立ち上がり各自の仕事場へと向かった。
そして広い会合スペースには私と孔明、そしてナポレオンと数名の文官だけが残された。
「……次は憲法の制定だ。ナポレオン」
「ああ、これだ」
私の前に分厚い一冊の本が置かれる。
憲法は私の朧気な記憶から日本国憲法を引っ張り出し、それとナポレオン法典を掛け合わせ、最終的に孔明に調整してもらったのがこの帝国憲法である。
またその二つ以外から私たちが独自に作った重要な所を挙げると、それは議会制度についてだ。
まず形骸化した元老院は解体した。権力者の老人連中が騒いでいたが、後ろ盾の中央貴族が力を失いろくな反抗もできなかった。
その代わりに選挙を行い一般市民による議会の設立を目指す。しかし急には無理なので、十年後に選挙を行うこととした。それまでに教育を拡充する狙いだ。
そして議会は二院制。市民たちによる下院とは別に、全貴族による上院も設立する。
上院は選挙がない世襲議員による議会となるため、下院の優位性が認められる。これはイギリスの貴族院と庶民院とちょうど同じようなものだ。
そしてここがポイントだが、先程述べたように十年間は市民による下院が開けない。その間は我々内閣が下院の代わりとして立法などを行う。
つまり十年間は私たちが好きにできるという訳だ。元は永久的にそうしていたが、いずれは民主化も果たしたいという願いからこの様な形をとった。
そしてもうひとつ大きな変更点。それは皇帝の罷免。無血革命条項である。
下院・上院の両院で2/3以上の賛成、そして内閣で丞相含む過半数の賛成があった場合、皇帝が反対したとしても皇位の剥奪が可能になる。
難易度はかなり高いだろう。しかし軍事力による政変よりはまだ現実的に見える。
皇帝としても、貴族と市民両方に対して誠実な政治を行わなければならない。そして身内の内閣にも見捨てられないように立ち回らなければならない。
皇帝が自らの行動を制限するこの憲法を、自分から承認するという行為。これは今後数百年の帝国史を左右する、大きな一歩であろう。
25
あなたにおすすめの小説
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。
石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません
俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。
本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。
幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。
そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。
彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。
それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』
今度もまた年上ヒロインです。
セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。
カクヨムにも投稿中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる