英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

文字の大きさ
208 / 262
第三章

206話 出向

しおりを挟む
 冬は平和なものだ。地域差はあれど雪の積もるこの大陸では冬には戦争はほぼ不可能であり、寒いと魔物やモンスターたちの活動も収まり魔王領からの侵攻もない。
 その間私たちは内政に集中することができた。

 魔王領調査は先の皇帝から北鎮将軍の地位を与えられた父に依頼した。
 身内だからと安全な内地に置くのではなく、敢えて危険な魔王領に行ってもらうことで周囲への政治的なアピールになる。

 教科書製作に当たって必要とされた印刷機が完成した。
 これは私の書いた本を量産し各地に出版するのにも役立った。これでより効率的な農業を広め、税収のアップを目指す。

 税収と言えば、帝国内では最近偽造通貨が出回り対応に追われた。
 だがこれを機に国立銀行を設立。新しい通貨を発行し金銀複本位制へ移行した。それまでの通貨は額面ではなく金や銀の配合割合のみで換算し、新通貨へと交換対応を行った。
 銀行は積極的に融資を行い、産業・経済の発展を促す。

 そして産業について。
 ついに蒸気機関が完成した。魔石と石炭を両用し、より効率的な仕事ができる蒸気機関は、これから帝国中に広まり産業革命を成すだろう。
 帝国は群を抜いて時代を一歩先取りしているのだ。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 やがて季節は巡り、春。

 真っ先に動き出したのはアキードであった。

「──レオ、アキード協商連合から招待状が届いています。王国の代表を交えた会合に出席して欲しい、だとか」

「ほう……」

 結局あの時話した独立保障の国際条約は成立しなかった。
 エルシャの提案した折衷案も、後からアキードに送った外交官がそれを完全に否定されて帰ってくるという始末で、私たちは落とし所を失ったままだった。

「まあ行くだけ行ってやろうじゃないか」

「危険ですよ。それに、一国の主を呼びつけるなどこちらを試しているのでしょう。端的に言えば、レオは舐められているのです」

「それは承知の上だ。だが私が直接出向くということ自体に意味はあるだろう。……そして、他の国にも行ってみたいという気持ちもある」

「ふふ……、そっちが本心でしょう? ですが、分かりました。それなら後はこちらで調整します。レオを安全に護衛できて、それでいて相手に拒否されない最低限度の兵数。こちらから持ち出す交渉の内容と、それの事前承認。更には国を空ける間の国家運営指針。……やることは山積みですね」

「孔明、私は気付いたのだが、実は私は忙しい方が好きみたいだ」

「それは奇遇ですね。私も多事多端こくじたたんには燃える性です」

 広い書斎で二人、クックックと笑いあった。







 向こうは余裕を持って連絡するということを知らない。……いや、敢えて出れるか出れないかのギリギリを設定しているのだろう。
 一ヶ月後に設定された会合に向け、私たちは連日打ち合わせを行った。

 しかし皇都から向こうの指定する会合の場までは二十日はかかる。
 絶対に遅れてはならない。そんなくだらない理由で我が国に不利な内容の条約を結ばされたらたまったもんじゃない。

 一週間全てを打ち合わせに費やし、三日余裕を持たせた出発の日はすぐにやってきた。
 馬車の中でも、最悪通信機を使えばいつでもどこでも打ち合わせはできる。

「それじゃあ行ってくるよ、エル」

「大丈夫だと信じているけれど、気をつけてね」

「君もな」

「大丈夫よ。ほとんどの軍は残っているし、大砲も沢山あるんでしょう?」

「まあそうなんだけどな」

 戦場へ持っていく牽引式の大砲は重量制限が厳しい。逆に言えば固定砲台なら地盤が沈下するまでというほぼ制限なしに巨大化させることができる。
 かの真珠湾も50口径の16インチ砲、つまり銃身20mから直径41cmの砲弾を発射する化け物で固められた当時最強の要塞であった。その総重量は約13tにものぼる。

 流石に私たちの技術力ではそこまではいかないが、とは言え皇都は40口径の20cm砲、つまり8mの銃身から直径20cmの砲弾を発射する、この国最大の砲門を32門、皇都を囲うように32方位に配備した。総重量は約2tである。

 ちなみにここも技術力不足が祟り前装式であるためリロードの際は毎回砲を地面まで下ろして、前から弾や火薬を詰めなければならなかった。よって連射速度はお察しの通りだ。

 こうした事情もあり多少の不安は残るが、まあそもそも火薬自体扱えない他の貴族たちにとっては十分な脅威であり、反乱など起こす気にはならないだろう。

 私はそうした思案を巡らせた後、全て忘れるようにそっとエルと口付けを交わした。

「じゃあ孔明、私が空けている間、国のことは頼んだぞ」

「はい、確かに」

 私は御璽を孔明に手渡す。

 往復とどれだけ掛かるか分からない会合を合わせると、二ヶ月近く国を空けることになる。流石にその間、国の全てが停止するのは論外だ。
 皇帝の印と共に内務大臣である孔明に全権を委任し、私が戻るまでの全てを任せることとした。

「では行くぞ」

「おう」
「ああ」
「は!」
「はい!」

 アキードへ連れていく兵力は一万を切るというかなり攻めた決断をした。その内訳は、

 全体指揮ナポレオン。
 空からの警戒にルーデルとハオラン率いる竜人100。
 身辺警護として団長率いる近衛騎士団100。
 主力部隊として歳三率いる陸軍5000。
 そして今回の目玉である、タリオ率いる魔導銃500。

 試作された威力の低い方を順当に強化し制式一号魔導銃とした。
 有効射程は50~100m程であり弓より劣るがその分威力は高い。至近距離なら金属製のプレートアーマーを貫徹できる威力に調整してある。

「アキードに向け、出発だ!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。  効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。  日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。    青年は今日も女の子を口説き回る。 「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」 「変な人!」 ※2025/6/6 完結。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。

石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません 俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。 本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。 幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。 そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。 彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。 それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』 今度もまた年上ヒロインです。 セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。 カクヨムにも投稿中です

処理中です...