英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

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第四章

243話 万物創造

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『万物創造』と名付けたレオナルドのスキルは、彼が羊皮紙に描いたあらゆるものを具現化する。
 限界がどこにあるのか私たちは実験を行った。

 まず、部品が描ける工業製品は全て作れる。原材料がなくとも、原材料の名前を書けばどこからともなくその素材が加工された状態で羊皮紙の中から取り出せた。
 つまり「金」とだけ書いて金塊の絵を描けば無限に金が出せる。それだけでも十分世界のバランスを崩しかねない能力だ。

 では原材料が描けないものはどうか。
 つまり、生物である。

 結果から言おう。『万物創造』は生命すら創造することができる。
 このことを公表すれば生命とは、世界とは、神とは何かという常識がひっくり返るだろう。

 だが生物に関してはものよりも厳しい。
 カエルのように小さな生物であれば、レオナルドがかつて解剖した記憶から内蔵・骨格・神経まで描くことができるので創造することができる。
 しかし人間のような大型な動物となれば一筋縄ではいかない。

 そうは言ってもやろうと思えばできてしまうだろう。だとしても、理論上可能だとしても、やるべきではないと私の倫理観が告げていた。
 。それが確かめられない以上、どうなるか分からないので実験で生み出したカエルも薬品で安楽死させたあと焼却処分した。
 DNAレベルでどのような組成がされているのか。そんなものを確かめる気にもならなかった。

 生命の創造は禁術とし、私たちは工業製品に限った上で、どれほどの大きさのものが作れるか試した。

 キャンバスが羊皮紙である以上、羊一匹の皮よりも大きい紙は用意できない。
 その羊皮紙も紙として使えるようなぶぶんを切り抜いて加工したものであり、大きさは大したことがない。

 大きさを文字で書いても取り出す時に巨大化はできなかった。
 確かに、羊皮紙の中から直接引っ張り出すのだから羊皮紙を通れない大きさのものは物理的に創造できない。

 では羊皮紙を大きくしたらどうだろう。
 急遽複数の羊皮紙を継ぎ接ぎした一枚の巨大な羊皮紙を作った。昔の絵巻物だって絹や紙を継ぎ接ぎして一巻の絵巻物にしているのだから、芸術的な観点からは問題ないはずだ。

 そう思っていたのだが、今度は重さ的にレオナルドが引っ張り出せないという事態が発生した。
 つまり巨大な綿は取り出せるが、大砲を一門丸ごと取り出すのは人間の腕力的に無理という制限があるのだ。

 別に超巨大なものは部品単位で取り出しこちらで組み立てるという手法も取れるため、それほど大きな問題ではない。








「……なんだ、急に呼び寄せて」

 実験をしているところにルーデルが不機嫌な顔をしながらやって来た。

「端的に言おうルーデル。上手く行けばまた航空機に乗れる」

「なんだと!?」

 ルーデルは露骨に顔色を変えた。

「航空機の外観は書けるな?」

「当然だ。航空機は体そのものだ。それに教本でも死ぬほど見るからな」

 私が差し出した紙にルーデルはスラスラと急降下爆撃機であるスツーカの絵を描いて見せた。
 どこがフラップでどこに武装が収められているのか、爆弾の搭載量はいくらかまで事細かに添え書きされている。

「レオナルド、これが私たちの時代で完成した航空機だ。まあジェット機もあるが、亜音速に耐えられる設計という技術力的にも、ジェット燃料という科学力的にも難しい課題があるのでとりあえず置いておこう。……ルーデル、エンジンは細かく書けるか?」

「……正直に言うが、そこまでいくと整備士の領分だ。パイロットは機体をどう操るかが重要であり、整備士はパイロットが無事に飛ばせるように機体を整備する。多少口出しはするが中身を自分でいじったりはしない」

「ううむ……」

 私も工業系の出ではないのでエンジンの設計図など書けない。

「──聞いていたか孔明? 『神算鬼謀』で戦時の開発書なども覗けるか?」

『……いいえ、無理です。あくまでの見れるのは戦いの概要であり、例えば零戦と呼ばれる戦闘機がどの戦闘で飛んでいたということは分かりますが、零戦に搭載されたエンジンがどうとかは分かりません』

「分かった。無理を言って悪かったな。仕事に戻ってくれ」

『お力になれず申し訳ありません。それでは──』

 まあそんな簡単にいけば私たちとて蒸気機関を完成させるのに右往左往していない。
 蒸気機関という下地が完成した今、内燃機関もレオナルドの能力があれば実現は可能なのだろうが……。

「……蒸気機関、というものは見させてもらったし、仕組みも理解した。次はエンジンと呼ばれる技術が欲しいというのも察した。そのエンジンの大まかな成り立ちを説明してもらえるか」

 レオナルドは前向きに取り組む姿勢を見せる。

「まあ本当に基礎的な事なら一応分かるぞ」

 何としても航空機に乗りたいであろうルーデルは先程の言葉を返し、エンジン内部で空気や燃料がどのように使われピストンが動くのかという簡略図を書いた。
 ルーデルは戦後、アメリカ軍の航空機開発にも携わっている。開発に関しても全くの素人という訳ではないのだ。

「ほう……これなら……。──少し時間をくれ。必ず形にしてみせる」

 そこにあったのは一人の技術者として魂を燃やす男の姿であった。

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