英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

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第四章

245話 分析

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「さて、お集まり頂き感謝する。今日、ここには私が思いつく限りの軍事的な知識をお持ちの方々をお呼びした」

 戦後処理が進み報告書がまとめられた頃、私は世界会議を招集した。もちろん安全保障会議である。
 世界各国の軍事的指導者を一挙に集めたこの世界会議で今後の指針を決定する。帝国からは歳三やルーデル、団長にハオランなどのいつものメンバーが出席している。

「我々は技術を獲得した。後は武器を作るだけだ。……だがしかし、ここで言う武器とは文字通りの物質的なものだけではない。戦術的、戦略的なものも武器である。果ては国民の意識、教育、財政なども武器となるのだ。人間ならばその頭脳を使わなくては、あのモンスター共を上回ることはできない」

 こんなことになるのであればクラウゼヴィッツの『戦争論』やルーデンドルフの『総力戦』などもちゃんと読んでおくべきだったと後悔している。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず、だったな」

「ええ。まずは敵の分析から始めましょう」

 孔明の合図で事務官たちが書類を配る。
 そこには今回の戦いで見られた敵の一覧が写真付きで報告書としてまとめられている。

「魔獣やモンスターの強さは、主に冒険者が使っている強さのランクで区別しています。冒険者ギルドは各国共通の組織ですからね。……ここには素手ゴブリンの強さを0.5、ゾンビを1のように記載されていますが、これは1が訓練した兵士一人の強さに相当するという意味です」

 脅威の数値化は分析に大いに役立つ。

「オークが50というのは分かるが、このトロールの100/1000というのは?」

「それはそれぞれ通常のトロールと、あの戦いで現れた装甲化トロールです。実際は千人いたとしても通常の兵士では勝てないでしょうが、名義上そういうことにしてあります」

「問題はあの装甲化トロールの倒し方だ。鎧の装甲が100mmというとんでもない化け物だ。……ルーデル、対装甲戦力のプロとしての意見を聞きたい」

 数え切れないほどのソ連戦車を撃破してきたルーデルは、間違いなくこの中で一番正解に近い答えを持ち合わせているだろう。

「航空爆弾で話すなら、最低でも250kg爆弾以上の威力が欲しい所だ。500kgあれば間違いない。この世界の魔石入り高性能炸薬なら50~100kgだな」

「ありがとうルーデル。では爆弾については今後もその高性能炸薬を使う前提で話してくれ」

「ああ。俺の『Drachen Stuka』で持てるのが100kg爆弾までだ。無理をすれば150kg爆弾まで持てるだろうが、それでは満足に飛べなくてオークの投石にやられる可能性が高い」

「我ら竜人では50kg爆弾とやらが限界だ。それにあの魔人の存在もある」

 爆弾を抱えて飛べば当然それだけ機動力は落ちる。
 細かな航空支援は竜人やルーデルの方が得意だが、本格的な武装を搭載した空対空戦闘や爆撃はやはり戦闘機と爆撃機が必要となるだろう。

「では空ではなく地上からの攻撃で考えよう」

「現在有している大砲ではあの装甲は破れない」

 ナポレオンは自信のある砲兵術で勝てなかった相手に余程トラウマになっているのか、苦い表情でぶっきらぼうに言い放つ。

「ルーデル、100mmの装甲を撃ち破るのに必要な火砲について教えてくれ」

「当然使う弾薬や発射薬、砲身長にもよるが、76mm口径では微妙だろう。あの湾曲した鎧では傾斜装甲の役割を果たし貫通力が安定しない。少なくとも88mm以上、叶うなら122mmや128mmが欲しいところだ」

 それぞれソ連のドイツのTigerⅠ、ソ連のIS-2、ドイツのMausなどの砲をイメージしているのだろう。つまりは重戦車級の超火力が求められるということだ。

「今までの大砲は榴弾砲の役割であったが、今後は対戦車砲も必要となる……。しかし前回砲兵が投石でやられたことを考えると、投石に耐えられる装甲を持ち、かつ対戦車砲を積んだ車両──戦車が必要になるな」

 車すら完成していないのに戦車を動かせるエンジンを作らないといけない。まだまだ乗り越えるべき障壁は多い。

「ちょろちょろ飛ぶワイバーンなんかもどうにかして欲しい。魔人も空を飛ぶが対抗策がないのは問題だ」

「……対空砲も必要だな」

「帝国頼りで申し訳ないが、銃ももっと威力と連射力のあるもの欲しい」
「奥に控えるリッチを攻撃できる武器も必須だ」

「アサルトライフルとスナイパーか」

「大量の武器弾薬が必要となればそれを運搬する手段も考えなければなりませんよ」
「人員も輸送するには現在の鉄道だけでは足りないでしょう」

「鉄道の拡充はもちろん、トラックや輸送機も生産計画に組み込む必要があるか」

「なんでも帝国では妖狐族と協力して海軍の創設を準備しているとか。それは魔王領に持ち込めないのですか?」

「駄目だ。魔王領の濃霧と荒れた海域を航行する技術はない。もっと別の方策を熟考しなければなるまい」

「それでは──」

 会議ではもはや国家間の対立など忘れ去られたように活発な議論が交わされた。
 魔王という強大な敵を前にして、人類は今一度全ての力を集結させようとしているのだった。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






「少し、いいか?」

「どうしたハオラン」

 会議も終わり、執務室に戻ろうとしていた時、後ろからハオランに呼び止められた。

「そなたは魔王の姿を覚えているか」

「ああ。ナポレオンのスキルもあってバッチリ見えていたからな」

 顔は肖像画とは全然違ったが、その出で立ちや並々ならぬオーラから織田信長その人であると分かるぐらいにはその姿をこの目に収めた。

「では、奴の鎧の胸元にあった宝玉も見えていたのだな」

「ああ。……それがどうした?」

 私がとぼけた答えを返したからか、ハオランは真剣な表情で私の左手を掴んだ。
 私の腕を握る力は人間の形態であっても中身は竜人であると思い出させるほど強かった。

「あれは『暴食龍の邪眼』だ」

「な──」

「奴はただの魔王ではない。転生者だ。そうなると、そなたのように異次元のスキルを持っていると考えていい。……転生者が『暴食龍の邪眼』を手にした時の危うさは以前にも話したな?」

「ああ……」

 となると、魔人は全てスキルで本物の織田家臣団を呼び出した可能性がある。それも私が歳三たちに与えたチート級のスキルを持って。
 そして余った魔力であの髑髏武者を形造っているのだろうか。言語の通じない魔物やモンスターを意のままに操るのも信長のスキルと考えれば納得がいく。

「転生者はその存在自体が文字通りこの世界の理を超越した存在……。転生者にしか倒すことは不可能だ」

「……私がケリをつけよう。同じ世界からやって来た身として、借りを返さなければならないな」
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