28 / 65
復活です!
しおりを挟む「はい、まぁ完治ということで良いでしょう。しかしまだまだ予断は禁物です! 大人しくするように約束してください。学園に通うのは問題ありませんよ」
1週間後まだ少し青かったり黄色かったりする箇所はあれど、それ以外は問題なし! 健康に生まれ育ったことを両親に感謝するようにと言われたわ!
「お嬢様に面会です」
王宮で1週間過ごして、マデリーンには報告が行った。殿下が手紙を書いてくれたみたい。良いところあるわね!
キリアン様にもお見舞いの品を貰った。また迷惑をかけたみたい……申し訳ないわ。
「マデリーン!」
殿下から許可を得たんですって。私の許可ではなく殿下の許可……。
「やっと面会出来たわ! 大丈夫なの? 心配したんだからっ!」
暇だと思ったのか私の好きそうな本まで持って来てくれたのね! それに私の好きな花とお菓子まで! 持つべきものは気の利く親友ね!
「ごめんね心配かけて。少し体が痛むけれどもう学園に行っても良いと言われたのよ。もうすぐで家に戻る予定なんだけど、殿下から許可がおりないの。お父様もお母様も怒ってないから帰ってきて良いって言ってくださるし、そろそろと思っているんだけどね」
まだだめだ! と言って殿下が帰してくれない。助けてもらった恩人だから無理は言えないのよ。
するとノックされて扉が開けられた。そこには殿下が居てマデリーンに挨拶をした。
「やぁカサール嬢、見舞いに来てくれてありがとう。リリ良かったね」
そう言って当たり前のように隣に座りぺたりとくっついて来た。そして寄りかかって良いよ。と言ってくるがもう一人で座れるから遠慮したけど離れる気はないようだ。
「これ見よがしにくっついているんですね! なるほど。殿下がリリーを助けてくださったんですって? 公衆の面前で人工呼吸まで披露されたのとか?」
ん? 待って! 人工呼吸? 誰の!
「仕方がないよね。あの場合は待ったなしの状況で……リリが生きるか死ぬかの瀬戸際で」
「人工呼吸?」
「あら? 聞いてないの」
「誰と誰が?」
「私がリリの唇にしたんだよ」
「聞いていません! 公衆の面前……」
恥ずかしい! 穴があったら入りたいと思い顔を隠した。
「耳まで赤くなって可愛いよ! リリ、そんなに照れなくとも良いのに」
「そりゃそうなりますよ。未婚の令嬢が殿下に唇を奪われたんですもの! 意識がなかったとは言えみんなが見ていたんですもの。リリー殿下の評判は鰻登りよ! 婚約者(候補)を命懸けで助けたんだものね」
「…………」
「病み上がりのリリには刺激が強かったようだね」
どさくさに紛れてリリアンの頭にキスをするフレデリック
「そうですか……明日また来ますわね。よろしいですよね!」
「…………」
「私は帰るわね。会えて良かったわ! また明日ね」
こくん。頷くリリアン
フレデリックとリリアン2人きりになった
「リリ、良い加減機嫌直してよ。こっち向いて」
顔を隠していた手をどかされた。恥ずかしくて顔が見れない……ぐすっ。
「……そんなに嫌だったのか。なくほどリリに嫌われていたとは。ごめん」
「……ぐすっ。私のことを嫌いなのは殿下の方でしょう?」
ポツリとリリアンが口を開いた。
「……え? なんで!」
「いつも私が泣いてて嬉しそうだったもの。ぐすっ。嫌いだから私のことを泣かせて喜んでるんでしょ。嫌がらせして私が泣くのを、」
「ちょっと! リリ!! なんのことを言ってるんだ! 嫌がらせなんてしていない!」
ぐすっ、ぐすっと鼻を啜る音。ハンカチを取り出しリリアンに渡す。
「落ち着こうリリ、ほらお茶を飲んで!」
リリアンの背中をさすってお茶を飲ませるフレデリック。
「嫌がらせなんてしてない! 神に誓って」
「だって、ぐすっ。虫嫌いだもん。変な黒い虫を渡されたもの。怖いのに触らされたもの」
黒くて光って尖ってたもの。気持ち悪かった。硬くて挟まれたら痛そうで……
「だから泣いていたのか……」
「嫌がらせのために、」
「違う! あれはクワガタと言って……男は皆あのクワガタにロマンを感じるんだよ! 虫界のキングでとても珍しいんだ……通称黒いダイヤと言われていて、珍しい種類で……だからリリにあげたんだよ」
「だって知らないもの。ぐすっ」
「そうか……ごめん。まさか嫌がらせをしていたと思っていたとは……感動して泣いているのかと思っていた」
バカだ! こいつ。リリアンはそう思った。ぐすっぐすっ
「それと、再会した時にも言ったけれど、あの木の上から見る景色が好きでリリに見せたかったんだ。令嬢に木登りをさせるとは何事だ! と後で怒られたけど、私達はそう簡単に外の世界に出られなかったから、あの時の私が見られる風景の中では1番の場所だった。すまなかった」
やっぱりバカだ! リリアンはそう思った。ぐすっ
「だって怒られたもの。木登りはしたらダメだって。降りられなくなって、ドレスも破れて、」
「泣くなよ……リリのそんな顔に弱いだなんて言ったら引くだろうか……」
「……ぐすっ」
どんな顔? この人言葉が足りない。
「昔から私はリリが好きなんだよ。リリが泣きながらも私について来てくれる姿を見るのが好きで好きで……リリが可愛くて婚約をしたいと言ったらまだ早いと言われて、世間知らずだったからもっと学んでこいと言われて、それでもリリが好きなら求婚する許可を与えると言われて、ようやくだったのに向こうで王女に纏わりつかれて帰国が遅れた……」
「私のせいなの? ぐすっ」
「違う違う! 私は心が狭いんだ。リリの周りに子息が近寄らないように侯爵に頼んで、リリの16歳のお披露目会には間に合うと言っていたのに間に合わなくて……お披露目会を延長してもらったんだ。そうしているうちにキリアンからの横槍まで……もっと早くリリに気持ちを伝えれば良かった。分かってくれているものだと思っていた」
首を傾げた。
「まさかリリがこんなに鈍感な娘に育っているとは思わずに私だけが……」
「なんの事?」
「ずっとこの美しい景色を一緒に見ようと約束したんだ。国を出る前に」
うーーん。覚えていない。
「あの時リリは泣きながらスイーツを食べていて、うんって言ったんだよ……」
ますます覚えていない! 泣きながらスイーツを食べているということはスイーツしか頭にないわ。
「まだ返事ももらってないしちゃんと求婚してないけれど、リリは私と婚約することになった」
「……こん、やくーーーー?」
「人工呼吸とはいえたくさんの人の前でリリの唇を奪ってしまったから、リリはもう他の男と結婚することはできない。かと言って一生未婚なんて侯爵が許す訳ないだろう? うちの親も許さないよ」
「けっこん……殿下と……」
「カサール嬢から聞いた。リリは意地悪な男は嫌いだと。2度と意地悪はしない。思っていることは全て口で伝えていく。だから私と一生一緒にいて欲しい」
「…………」
「くっ……そうか。返事は今すぐでなくても、いい。大好きだリリ! 私と婚約して欲しい」
ポカンと口を開いて涙はいつのまにか止まっていた。これはショック療法というものかもしれない……
28
あなたにおすすめの小説
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―
冬野月子
恋愛
侯爵令嬢クリスティナは、ここが前世で遊んだ学園ゲームの世界だと気づいた。そして自分がヒロインのライバルで悪役となる立場だと。
のんびり暮らしたいクリスティナはゲームとは関わらないことに決めた。設定通りに王太子の婚約者にはなってしまったけれど、ゲームを回避して婚約も解消。平穏な生活を手に入れたと思っていた。
けれど何故か義弟から求婚され、元婚約者もアプローチしてきて、さらに……。
※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。
【完結】婚約者様、嫌気がさしたので逃げさせて頂きます
高瀬船
恋愛
ブリジット・アルテンバークとルーカス・ラスフィールドは幼い頃にお互いの婚約が決まり、まるで兄妹のように過ごして来た。
年頃になるとブリジットは婚約者であるルーカスを意識するようになる。
そしてルーカスに対して淡い恋心を抱いていたが、当の本人・ルーカスはブリジットを諌めるばかりで女性扱いをしてくれない。
顔を合わせれば少しは淑女らしくしたら、とか。この年頃の貴族令嬢とは…、とか小言ばかり。
ちっとも婚約者扱いをしてくれないルーカスに悶々と苛立ちを感じていたブリジットだったが、近衛騎士団に所属して騎士として働く事になったルーカスは王族警護にもあたるようになり、そこで面識を持つようになったこの国の王女殿下の事を頻繁に引き合いに出すようになり…
その日もいつものように「王女殿下を少しは見習って」と口にした婚約者・ルーカスの言葉にブリジットも我慢の限界が訪れた──。
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる