侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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復活です!

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「はい、まぁ完治ということで良いでしょう。しかしまだまだ予断は禁物です! 大人しくするように約束してください。学園に通うのは問題ありませんよ」


 1週間後まだ少し青かったり黄色かったりする箇所はあれど、それ以外は問題なし! 健康に生まれ育ったことを両親に感謝するようにと言われたわ!


「お嬢様に面会です」


 王宮で1週間過ごして、マデリーンには報告が行った。殿下が手紙を書いてくれたみたい。良いところあるわね!

 キリアン様にもお見舞いの品を貰った。また迷惑をかけたみたい……申し訳ないわ。


「マデリーン!」

 殿下から許可を得たんですって。私の許可ではなく殿下の許可……。


「やっと面会出来たわ! 大丈夫なの? 心配したんだからっ!」

 暇だと思ったのか私の好きそうな本まで持って来てくれたのね! それに私の好きな花とお菓子まで! 持つべきものは気の利く親友ね!


「ごめんね心配かけて。少し体が痛むけれどもう学園に行っても良いと言われたのよ。もうすぐで家に戻る予定なんだけど、殿下から許可がおりないの。お父様もお母様も怒ってないから帰ってきて良いって言ってくださるし、そろそろと思っているんだけどね」


 まだだめだ! と言って殿下が帰してくれない。助けてもらった恩人だから無理は言えないのよ。

 するとノックされて扉が開けられた。そこには殿下が居てマデリーンに挨拶をした。

「やぁカサール嬢、見舞いに来てくれてありがとう。リリ良かったね」


 そう言って当たり前のように隣に座りぺたりとくっついて来た。そして寄りかかって良いよ。と言ってくるがもう一人で座れるから遠慮したけど離れる気はないようだ。


「これ見よがしにくっついているんですね! なるほど。殿下がリリーを助けてくださったんですって? 公衆の面前で人工呼吸まで披露されたのとか?」

 ん? 待って! 人工呼吸? 誰の!


「仕方がないよね。あの場合は待ったなしの状況で……リリが生きるか死ぬかの瀬戸際で」

「人工呼吸?」

「あら? 聞いてないの」

「誰と誰が?」

「私がリリの唇にしたんだよ」




「聞いていません! 公衆の面前……」


 恥ずかしい! 穴があったら入りたいと思い顔を隠した。


「耳まで赤くなって可愛いよ! リリ、そんなに照れなくとも良いのに」


「そりゃそうなりますよ。未婚の令嬢が殿下に唇を奪われたんですもの! 意識がなかったとは言えみんなが見ていたんですもの。リリー殿下の評判は鰻登りよ! 婚約者(候補)を命懸けで助けたんだものね」


「…………」


「病み上がりのリリには刺激が強かったようだね」


 どさくさに紛れてリリアンの頭にキスをするフレデリック

「そうですか……明日また来ますわね。よろしいですよね!」

「…………」

「私は帰るわね。会えて良かったわ! また明日ね」

 こくん。頷くリリアン

 フレデリックとリリアン2人きりになった

「リリ、良い加減機嫌直してよ。こっち向いて」

 顔を隠していた手をどかされた。恥ずかしくて顔が見れない……ぐすっ。

「……そんなに嫌だったのか。なくほどリリに嫌われていたとは。ごめん」



「……ぐすっ。私のことを嫌いなのは殿下の方でしょう?」

 ポツリとリリアンが口を開いた。



「……え? なんで!」

「いつも私が泣いてて嬉しそうだったもの。ぐすっ。嫌いだから私のことを泣かせて喜んでるんでしょ。嫌がらせして私が泣くのを、」

「ちょっと! リリ!! なんのことを言ってるんだ! 嫌がらせなんてしていない!」



 ぐすっ、ぐすっと鼻を啜る音。ハンカチを取り出しリリアンに渡す。


「落ち着こうリリ、ほらお茶を飲んで!」

 リリアンの背中をさすってお茶を飲ませるフレデリック。



「嫌がらせなんてしてない! 神に誓って」

「だって、ぐすっ。虫嫌いだもん。変な黒い虫を渡されたもの。怖いのに触らされたもの」

 黒くて光って尖ってたもの。気持ち悪かった。硬くて挟まれたら痛そうで……


「だから泣いていたのか……」

「嫌がらせのために、」

「違う! あれはクワガタと言って……男は皆あのクワガタにロマンを感じるんだよ! 虫界のキングでとても珍しいんだ……通称黒いダイヤと言われていて、珍しい種類で……だからリリにあげたんだよ」

「だって知らないもの。ぐすっ」


「そうか……ごめん。まさか嫌がらせをしていたと思っていたとは……感動して泣いているのかと思っていた」


 バカだ! こいつ。リリアンはそう思った。ぐすっぐすっ


「それと、再会した時にも言ったけれど、あの木の上から見る景色が好きでリリに見せたかったんだ。令嬢に木登りをさせるとは何事だ! と後で怒られたけど、私達はそう簡単に外の世界に出られなかったから、あの時の私が見られる風景の中では1番の場所だった。すまなかった」

 やっぱりバカだ! リリアンはそう思った。ぐすっ

「だって怒られたもの。木登りはしたらダメだって。降りられなくなって、ドレスも破れて、」

「泣くなよ……リリのそんな顔に弱いだなんて言ったら引くだろうか……」


「……ぐすっ」

 どんな顔? この人言葉が足りない。


「昔から私はリリが好きなんだよ。リリが泣きながらも私について来てくれる姿を見るのが好きで好きで……リリが可愛くて婚約をしたいと言ったらまだ早いと言われて、世間知らずだったからもっと学んでこいと言われて、それでもリリが好きなら求婚する許可を与えると言われて、ようやくだったのに向こうで王女に纏わりつかれて帰国が遅れた……」

「私のせいなの? ぐすっ」


「違う違う! 私は心が狭いんだ。リリの周りに子息が近寄らないように侯爵に頼んで、リリの16歳のお披露目会には間に合うと言っていたのに間に合わなくて……お披露目会を延長してもらったんだ。そうしているうちにキリアンからの横槍まで……もっと早くリリに気持ちを伝えれば良かった。分かってくれているものだと思っていた」

 首を傾げた。


「まさかリリがこんなに鈍感な娘に育っているとは思わずに私だけが……」

「なんの事?」


「ずっとこの美しい景色を一緒に見ようと約束したんだ。国を出る前に」


 うーーん。覚えていない。


「あの時リリは泣きながらスイーツを食べていて、うんって言ったんだよ……」


 ますます覚えていない! 泣きながらスイーツを食べているということはスイーツしか頭にないわ。


「まだ返事ももらってないしちゃんと求婚してないけれど、リリは私と婚約することになった」


「……こん、やくーーーー?」


「人工呼吸とはいえたくさんの人の前でリリの唇を奪ってしまったから、リリはもう他の男と結婚することはできない。かと言って一生未婚なんて侯爵が許す訳ないだろう? うちの親も許さないよ」

「けっこん……殿下と……」

「カサール嬢から聞いた。リリは意地悪な男は嫌いだと。2度と意地悪はしない。思っていることは全て口で伝えていく。だから私と一生一緒にいて欲しい」


「…………」


「くっ……そうか。返事は今すぐでなくても、いい。大好きだリリ! 私と婚約して欲しい」



 ポカンと口を開いて涙はいつのまにか止まっていた。これはショック療法というものかもしれない……























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