私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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お兄ちゃんがいました

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 ママが倒れてしまったからその日は、そのまま寝ることになった。

 クマのぬいぐるみはベッド脇に飾られていたから抱きしめていつものように眠る。


「……お母さんおやすみなさい」



 翌朝身を覚ますと、メイドさんに声をかけられた。

「お嬢様おはようございます。本日はいいお天気ですよ」

 シャッとカーテンを開けられると心地のいい日差しが入ってきた。鳥の囀りが聞こえて平和そのもの。


「お顔を洗ってお着替えいたしましょう。お嬢様はどの紅茶が好みですか? 目覚めのお茶をお淹れ致しますよ」

「わかんない」

「お嬢様のお好きなものを教えてくださいませね。本日はわたくしのおすすめのミルクティーをお出ししますね」

 水の張ったボウルで顔を洗ってふかふかのタオルで顔を拭いた。

 少しぬるめのお茶を飲むとホッとした気分になった。

 ワンピースはグリーンで腰に大きなリボンが付いていて、同じ素材同じ色のリボンで髪を纏められた。

「とってもお似合いです。可愛らしいですわ」

 手を引かれて、お屋敷の一階にある食堂へ連れて行かれた。

 そこにいたのはパパと男の子だった。


「マリーおはよう、ママはまだ調子が良くないから今日はパパとヴェルナーと食事をしよう。ヴェルナーは昨日話していたマリーの兄だよ。ヴェルナーはマリーのことを覚えているよな?」

「はい。もちろんです! マリーは僕のことわかる?」

 ううん。と頭を振ると悲しそうな顔をした。


「そうか。これから仲良くしてくれる?」

「うん」


 返事をするとヴェルナーは嬉しそうな顔をした。

「マリーは僕の隣に座るといいよ」

 椅子を後ろに引いて座らせてくれた。ここの家の人はみんな優しい。

 食卓には沢山の食事が用意されていた。スープを少しとパンを少し口にしてスプーンを置いた。

「マリーもう食べないの?」

 ヴェルナーに言われたので頷いた。

「マリーそれだけでは元気がでないよ? マリーは何が好き? パパに教えてくれ」

 パパに質問された。私の好きなものはここにはない。そう思うとまた涙が出てきた。

「マリー、無理して食べる必要はないよ。フルーツはどう? 僕も好きなんだよ」

 えっえっ……と泣いているとヴェルナーはずっと背中を撫でてくれた。

 ようやく落ち着いた頃に

「マリー喉が乾かないか? 搾りたてのジュースを作らせたよ。飲める?」

 パパがコップを渡してくれたので、ジュースを飲んだ。搾りたてのオレンジジュースは甘酸っぱくて喉にスッと入っていった。その様子をパパが見ていて

「美味しい?」

 と聞かれた。

「うん」

 と言うとホッとした顔をしていた。

 食事が終わると、ヴェルナーに庭に誘われて散策に行くことになった。

 手を引かれて歩く。ヴェルナーはギュッと手に力を入れてきた。


「マリー絶対に僕から離れちゃダメだよ」

 優しい口調だけど、その瞳を見ると真剣だった。お家の庭だよね?


「マリーはなんの花が好き?」


「うーんっと……スズラン」

 野生のスズランが沢山咲いているところにお母さんとピクニックに行った。スズランは可愛い見た目なのに毒があると聞いて驚いた。観賞するには良いけれど触ってはだめだと注意された。スズランの花粉や飾った水にも要注意と言われ、見た目とのギャップに再度驚かされた。


「ふふっ。可愛いマリーらしいね。今は時期ではないけれど庭にスズランが咲くところがあるから、楽しみにしていて」

 単なる兄弟での庭の散歩のはずが後ろに騎士の格好をしたお兄さんたちが三人と、メイド二人が付いてきていた。


「気になる?」

 うんと頷くと

「どこに裏切り者がいるか分からないから仕方がないよね。あの時可愛いマリーを連れ出したメイドと庭師が今でも許せない……」


 許せないって言うことはまだどこかにいるんだよね?




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