私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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お見舞いに行きました

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「マリー母上に会いに行こうか? マリーの顔を見たら母上もすぐに元気になると思うんだ」

 昨日の私に似ている女の人。ママだって言ってた。

「こうやってマリーと散歩に来ることができるなんて夢みたいだ。僕の中でマリーはまだ小さな女の子だったのにこうやって成長している姿が見れて嬉しい。今まで一緒にいられなかった分、これからはずっと一緒だ」

 ずっと一緒? なんで?


「マリアのお家はここじゃないよ? お母さんが待ってるから帰らないと、」

「どう言うこと?」


「パパ? に言ったけど、マリアは帰るの」

 お母さんが待っている。帰らないとお母さんは一人になってしまうもん。


「マリーはここで暮らしていた事を覚えていないよね? 僕はマリーが生まれた時は三歳だった。今でも覚えているよ。母上に抱っこされて可愛かった。マリーが初めて歩いた時は僕に向かって歩いてきたんだ。それからもおにいちゃまと呼んでくれるマリーが愛らしくて、僕がマリーを守るんだと思っていた。そんな時にマリーが連れ去られてみんな時間が止まったようだった。母上はずっと具合が悪くて自分を責めていた。マリーに似た子がいると聞くとどこへでも探しに行ったんだ。それでやっとマリーに会えた。今マリーが付けているこのネックレスはとても高価なもので、マリーが生まれた時に作ってもらったものだ。例えばこれが売りに出されていたらすぐにマリーの居場所が分かっただろう。闇市場にでも売られていたら、きっと沢山のお金が手に入っただろう。マリーと一緒に暮らしていた方はそれをしなかった。良い人に保護されていたんだね」


「うん。お母さんはすごく優しいの」

「マリーを見ていたらよく分かるよ。せっかく戻ってきたんだからゆっくり話を聞かせて? マリーのことを教えてほしい」

 真面目な顔で……でも嬉しそうに話をしてくるから「うん」としか返事ができなかった。



「僕のことは兄様と呼んでくれる?」

「うん」

「これからよろしくねマリー。母上に朝の挨拶に行こうか」


 兄様の目もママと私と同じ緑色で笑った顔はパパに似ていた。お母さんと私は全然似ていなかったから、このおうちの子と言われた方がしっくりくるような気がした……


******

「母上、具合はいかがですか?」

 マリーの手を引いてヴェルナーが部屋に入ってきた。

「ヴェルナー、マリーを連れてきてくれたのね。二人とも近くに来てくれる?」

 
 メアリーは二人をギュッと抱きしめた。


「やっと私の子を抱きしめる事ができたわ。マリーはヴェルナーのことが大好きで良く二人で遊んでいたわ。ヴェルナーもマリーの面倒を良く見てくれていた。二人をバラバラにしてしまってごめんなさい」

 ギュッと抱く力が強くなる。

「母上」

 と言うヴェルナーの瞳には涙が

「ママ?」

「なぁにマリー」

 ママと呼ばれて微笑むメアリー

「マリアが悪い子だったから、この家から連れて行かれたの?」


「違います! マリーはお金目的の野蛮な使用人に利用されたの。マリーが戻ってくるならお金なんてどれだけ出しても良かったの。無事でさえいてくれればっ、」

 涙を浮かべるメアリーは辛そうな顔をしていた。
 

「マリーは悪い子なんかじゃないよ。いつも僕達はマリーの笑顔に癒されていた。とても大事な家族だよ」


「そうなの?」


「マリーの事を保護してくれ方に直接お礼を言いたいわ」

 頭を撫でながら愛おしいそうに娘を見るメアリー。


「うん。早くお母さんに会いたい」


「そっか、心配しているかもしれないね。ちゃんと食べなきゃだめだよ。朝食を全然食べなかったよね」

 メアリーに変わりヴェルナーが答えた。

「……いっぱい並んでいたから、見ていたらお腹がいっぱいになったの」


「マリーが何を好きかわからなくて、みんな張り切りすぎたんだよ。マリーはジュースや牛乳が好きだったんだよ。父上はちゃんと覚えていた」


 朝飲んだオレンジのジュース? 


「お昼はマリーが好きだった物を用意させましょうね。わたくしもマリーの顔を見たら元気になってきたわ。一緒にお昼をとりましょうね」


「うん」


 ママは私がいると元気になるのかな?




 



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