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お母さんと呼ばれる男
しおりを挟む「トニー! 遅かったな。十分な謝礼を渡してくれたか?」
マリーの父であるロマーニ侯爵が言った。
「……それが受け取りを拒否されました。一緒に過ごした四年間は彼にとっても楽しい時間だったからと逆にお礼を言われてしまいました。当主がお会いしたいと言っていると言うことも伝えましたが、分不相応と言い断固として拒否されました」
トニーのことは信頼しているしトニーが言ったからにはそうなのだろうがせめて謝礼は受け取ってもらいたいところだ。
「どんな感じの男なんだ? そこまで言うと言うことは悪い人ではないのだろうが……」
謝礼を受け取らないと言うことは生活には困っていないと言うことだろうか。マリーの着ていた服、ぬいぐるみを見る限り酷い生活ではなかったようだ。
「年齢はまだ若く身長は180センチほど、ガタイの良いというか余計な贅肉はないと言った感じです。貴族の使いである私に、しっかりとした受け答えをしていましたし、ただの平民の男ではないと言った感じがしました」
「名前は?」
「リアンと名乗っていました」
「リアンか……それでトニーが遅くなった理由とは?」
話をしてくるだけならそんなに日数を要さないだろうし調査はお手のもの。そのおかげで王家からの評価も高いのだから。
「リアンという男について調べたのですが、何も分かりませんでした。家に入って話をしたのですが、家の中は余計なものが一切なくシンプルでした。しかし本は何冊もありました。本は高価ですし片田舎にあるような本ではありませんでしたし、着ている服はシンプルですが仕立ての服と言った印象でした」
「何が言いたい?」
片田舎、本、仕立ての服……謝礼を受け取らない姿勢。
「恐らく彼はこの国の者ではなく、他国から流れてきた人物であると思いました。彼がいうにはたまたま狩に入った森の中でマリアベルお嬢様を保護したと言っていました。幼子がぐったりと倒れているところを発見し、近くの村まで運び看病したようです。その時マリアベルお嬢様は頭を強く打ったようで、名前はおろか何も覚えていなかったという事です。貧しい村に置いていくと、マリアベルお嬢様が売られる可能性があった為、お嬢様を引き取り暮らしていたという事です。その村は国境に近かった事から、マリアベルお嬢様を連れて逃げた犯人は国境を越えようとしていた……そう思われます。越えられていてら発見することは難しかっだと思います」
「犯人はマリーといなかったのか?」
「リアンが言うには川の上流に血痕が残っていたと。犯人は別の何者かに襲われたのではないかとの事でした。川の流れは穏やかでしたが下流でマリアベルお嬢様が見つかったのです。恐らく犯人が逃すためにマリアベルお嬢様を川に……」
国境・森・川……これを聞くとマリーが生きていたことが奇跡である。と言わざるを得ない。
「リアンは恩人だ。彼に会いたい。こちらから出向くとするか!」
せめて親である私から礼を言わせてもらいたい。
「……それが」
「何か問題でも?」
「はい。この場に長く留まりすぎた言って、住んでいた家をでるといっていました」
「長く留まりすぎた? 何か問題でもあるのか?」
「答えてはもらえませんでした。マリアベルお嬢様が家族に捜索されていた。という事を聞いてリアンはとても喜んでいましたし、家族の元に帰るのが一番だと言っていました。その事を考えるとリアンはマリアベルお嬢様から手を引いた……と考えられます」
「リアンはどこへ行った?」
「部下をつけさせましてが、撒かれてしまいました。途中の村に馬を置いてあったようで、馬に乗ったまでは確認しています」
途中の村に馬を置いている? どう言うことだろう……どこへ行くつもりなのだろうか。
「そうか……ご苦労だった。マリーになんて話せば良いのか難しいな」
「……どちらへいくのか教えてください、マリアベルお嬢様が悲しみます。と伝えたところ『旅に出る。またどこかで会おう。いつでも見守っている』と伝えて欲しいと言っていました」
いつでもと言う言葉が引っかかるがそのように伝えよう。
「謎が多い男だな」
「はい、部下に言って家の周りを見張らせましたが家は完全に引き払ったようでリアンに家を貸していた男が掃除をしに来ました。元々荷物が少なかった様で身軽でした。残った家財は備え付けのものと食器、寝具類、マリアベルお嬢様の洋服が数枚ほどでした」
「国境に向かったのか?」
「いえ。南に向かったということまでは報告を受けています」
「なぜトニー直々尾行しなかった?」
「顔がバレています。私の部下は優秀ですから信用しています」
うちの暗部は優秀だ。間違いはない。
「トニーが信用していたのなら、分かった。また何か分かったら報告してくれ」
暗部でも優秀な部下を撒く様な男か……只者ではない。
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