私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

文字の大きさ
38 / 81

ロマーニ侯爵家からの手紙

しおりを挟む
 手紙が送られてきた。

【今年娘であるマリアベルのデビュタントを迎えることができたのは、フロリアン・フォン・オットー殿のお陰で感謝の言葉しかありません。マリアベルが八歳のとき我が家に戻ってきてから早七年が経ちました。娘は貴殿に会いたいとずっと言っております。一度娘と面会をしてやってほしいのです。もちろんこちらから貴殿に会いに伺う所存です。お忙しいとは思いますがどうか娘のためにお時間を頂きたい存じます】


 ……ふむ。どうしたものやら。もうあれから七年か。七年も経てば家族から離れたいなどとは言わんだろう。


 一度会えば納得するのなら……

 それに本当にこの侯爵家の使者トニーはしつこい男だ! 国まで来るとは……それにここは王宮だぞ……伝手がすぎる。 

 もう根負けってやつだ……ペルソナ公爵の名前まで使って来たのか

 ……隣国の公爵家であるペルソナ公爵はうちの国にも名は知れている。その公爵からも姪が会いたいって言ってるし私も感謝してるから考えて欲しい。頼むね! (簡略)

 会うこと前提だ。


 しかし学園もあるだろうし、長期間休ませるわけにはいかない。それに隣国からは前々から会談をしたいと手紙を貰っていた。

 ……仕方がない。押しかけられても困る。こちらから出向くか……マリアベルのデビュタントの姿を見ておめでとう。と祝福して、会談をして戻ってくるか。


「返事を書く。届けてくれ」


「はい。畏まりました」


 マリアベルがもう十五歳……早いなぁ。そりゃ俺も歳を取るわけだ。あの時にマリアベルを国に連れてきていたらどうなっていたんだろうな……侯爵家はきっと今でも探していただろうなぁ。
   


 ******

「父上、少しの間会談の為に隣国へ行ってまいりますね」

 食事の時に父と同じテーブルに付いたから報告まで。

「あぁ、行ってこい。宿泊先は決まっているのか?」

 宿泊先? ホテルで良いだろう。首都にはホテルがたくさんある。

「ホテルに泊まりますよ。王宮でと言う話もありましたが肩が凝りますからねぇ……」

 いろんな目を向けられるので面倒だ。

「そうか。それなら私の知り合いの家に泊まるといい。手紙を書いておく」

「父上の知り合い? 貴族ですよね? 面倒なのでホテルで良いです」

 父の知り合いの家なら安心だろうが、気疲れしそうだ。

「リアンが滞在する日程だと、良いホテルは埋まっているぞ。地方のタウンハウスを持たない貴族で予約は一杯だ」

 そうか……デビュタントの日はお祭り騒ぎになるのか。


「日程をずらすというわけには……」

「いかんな。国同士の約束だから、大人しく私の知り合いの家に滞在するように」

「分かりましたよ。何か手土産を用意しておきます」

******


「旦那様も人が悪いですね」

 オットー家とは現国王の弟の家で大公家だ。

「何がだい?」

 ニヤリと笑う大公。

「リアンに内緒でロマーニ侯爵家と連絡を取っているではありませんか? 知り合いの家とはロマーニ侯爵家なのでしょう?」

 大公夫人が呆れた口調で言った。

「内緒とは失礼な! 言ってないだけだ! それにリアンが身を寄せていた先で一緒に暮らしていた少女のことは気になっていたし、リアンも一緒に生活をすることにより癒しになっていたと使者から聞いていた。ロマーニ侯爵家からは礼を言われたがこちらとしてもリアンの生活の拠り所だったとして感謝している。まさか隣国の誘拐された令嬢だとは思わなかったが、すごい偶然じゃないか。ロマーニ侯爵からの手紙には会って礼を言いたいと言っていたのにリアンが頑固だからのぅ。良い機会だ」


 少女を一人連れて帰って良いですか? と書かれた手紙には驚いた。まさか少女を育て養う事になっていたとは……お前の好きにするが良い。返事をした。

 身分なんてどうでも出来る。まだ子供だし教育すればあっという間に貴族の娘として見られるようになるだろう。うちの養女にしても良かったのだから。


「娘ができると思っていたのに、あの時は残念でしたわ……」

 うちには息子が二人。下の息子は早々に結婚した。騎士団長として働き伯爵位を賜っている。リアンが結婚しないのなら下の息子に頑張ってもらい、その子を養子にしなくてはいけないのか……などと考えたりもする。

 あと数年で三十歳になるリアン……誰でもいいから嫁に来てほしいと思うのは親のエゴだろうか……苦労をかけたから好きにさせているのが悪いのだろうか……頭を悩ませる問題だ。


「リアンにも考えがあるんだろうが、この件はちゃんとせにゃならん。令嬢がリアンに会いたいというなら会わせてやりたいとわしでも思う」

 リアンがなぜ会わないのかは分かりかねる。しかし家に戻ってきた時リアンは時々空を見て物思いに耽っていた。そしてスズランの花をモチーフにした物を手にしていた。

 

 





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...