私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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ロマーニ侯爵家からの手紙

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 手紙が送られてきた。

【今年娘であるマリアベルのデビュタントを迎えることができたのは、フロリアン・フォン・オットー殿のお陰で感謝の言葉しかありません。マリアベルが八歳のとき我が家に戻ってきてから早七年が経ちました。娘は貴殿に会いたいとずっと言っております。一度娘と面会をしてやってほしいのです。もちろんこちらから貴殿に会いに伺う所存です。お忙しいとは思いますがどうか娘のためにお時間を頂きたい存じます】


 ……ふむ。どうしたものやら。もうあれから七年か。七年も経てば家族から離れたいなどとは言わんだろう。


 一度会えば納得するのなら……

 それに本当にこの侯爵家の使者トニーはしつこい男だ! 国まで来るとは……それにここは王宮だぞ……伝手がすぎる。 

 もう根負けってやつだ……ペルソナ公爵の名前まで使って来たのか

 ……隣国の公爵家であるペルソナ公爵はうちの国にも名は知れている。その公爵からも姪が会いたいって言ってるし私も感謝してるから考えて欲しい。頼むね! (簡略)

 会うこと前提だ。


 しかし学園もあるだろうし、長期間休ませるわけにはいかない。それに隣国からは前々から会談をしたいと手紙を貰っていた。

 ……仕方がない。押しかけられても困る。こちらから出向くか……マリアベルのデビュタントの姿を見ておめでとう。と祝福して、会談をして戻ってくるか。


「返事を書く。届けてくれ」


「はい。畏まりました」


 マリアベルがもう十五歳……早いなぁ。そりゃ俺も歳を取るわけだ。あの時にマリアベルを国に連れてきていたらどうなっていたんだろうな……侯爵家はきっと今でも探していただろうなぁ。
   


 ******

「父上、少しの間会談の為に隣国へ行ってまいりますね」

 食事の時に父と同じテーブルに付いたから報告まで。

「あぁ、行ってこい。宿泊先は決まっているのか?」

 宿泊先? ホテルで良いだろう。首都にはホテルがたくさんある。

「ホテルに泊まりますよ。王宮でと言う話もありましたが肩が凝りますからねぇ……」

 いろんな目を向けられるので面倒だ。

「そうか。それなら私の知り合いの家に泊まるといい。手紙を書いておく」

「父上の知り合い? 貴族ですよね? 面倒なのでホテルで良いです」

 父の知り合いの家なら安心だろうが、気疲れしそうだ。

「リアンが滞在する日程だと、良いホテルは埋まっているぞ。地方のタウンハウスを持たない貴族で予約は一杯だ」

 そうか……デビュタントの日はお祭り騒ぎになるのか。


「日程をずらすというわけには……」

「いかんな。国同士の約束だから、大人しく私の知り合いの家に滞在するように」

「分かりましたよ。何か手土産を用意しておきます」

******


「旦那様も人が悪いですね」

 オットー家とは現国王の弟の家で大公家だ。

「何がだい?」

 ニヤリと笑う大公。

「リアンに内緒でロマーニ侯爵家と連絡を取っているではありませんか? 知り合いの家とはロマーニ侯爵家なのでしょう?」

 大公夫人が呆れた口調で言った。

「内緒とは失礼な! 言ってないだけだ! それにリアンが身を寄せていた先で一緒に暮らしていた少女のことは気になっていたし、リアンも一緒に生活をすることにより癒しになっていたと使者から聞いていた。ロマーニ侯爵家からは礼を言われたがこちらとしてもリアンの生活の拠り所だったとして感謝している。まさか隣国の誘拐された令嬢だとは思わなかったが、すごい偶然じゃないか。ロマーニ侯爵からの手紙には会って礼を言いたいと言っていたのにリアンが頑固だからのぅ。良い機会だ」


 少女を一人連れて帰って良いですか? と書かれた手紙には驚いた。まさか少女を育て養う事になっていたとは……お前の好きにするが良い。返事をした。

 身分なんてどうでも出来る。まだ子供だし教育すればあっという間に貴族の娘として見られるようになるだろう。うちの養女にしても良かったのだから。


「娘ができると思っていたのに、あの時は残念でしたわ……」

 うちには息子が二人。下の息子は早々に結婚した。騎士団長として働き伯爵位を賜っている。リアンが結婚しないのなら下の息子に頑張ってもらい、その子を養子にしなくてはいけないのか……などと考えたりもする。

 あと数年で三十歳になるリアン……誰でもいいから嫁に来てほしいと思うのは親のエゴだろうか……苦労をかけたから好きにさせているのが悪いのだろうか……頭を悩ませる問題だ。


「リアンにも考えがあるんだろうが、この件はちゃんとせにゃならん。令嬢がリアンに会いたいというなら会わせてやりたいとわしでも思う」

 リアンがなぜ会わないのかは分かりかねる。しかし家に戻ってきた時リアンは時々空を見て物思いに耽っていた。そしてスズランの花をモチーフにした物を手にしていた。

 

 





 
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