婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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王様と王妃様がいない事を良い事に婚約破棄されました!

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「前々から思っていた! おまえは単なる政略結婚の相手だから一緒にいてやっただけだ!」


 本日は学期末パーティーが行われていた。パーティー会場は王宮の小ホール。貴族のみが通える学園で、パーティーは全学年参加の社交場となっていた。


 王宮でのパーティーは本格的な社交をするにあたっての練習とも言えよう。

 それなのにこんなところでこんなバカな事を言い出すおバカさんが居るなんて。


 そのおバカさんはこの国の第五王子殿下であるフランツ・エル・シーバだった。

 ……因みに私の婚約者でもある。



「フランツ殿下……このような華やかな場で申す話題ではありませんわよ。それと人に指を差してはいけません」


 周りがざわついている。


 この第五王子フランツ声がとてつもなく大きいのが難点。



「うるさいっ! おまえは口ごたえが多いんだ。生意気なんだよっ! 年下のくせに」


 年下関係あるかしら? 私だって言いたくないし、見て見ぬ振りも出来る。それに年下といっても一歳……いいえ、たった何ヶ月遅く生まれただけ。


「それは申し訳ございませんでした。ところでなんのお話でしたっけ? 政略結婚でしたかしら? まだ婚約の段階ですよ? お忘れですか?」


 まだ結婚はしていませんものね。可憐に首を傾げてみる。あざとい仕草は令嬢にとって武器になると学びました。


「っそういう口答えがムカつくんだ! おまえとの婚約なんてこの場を持って破棄してやる! そうだな、そこはお前の言う通りまだ結婚してないんだから私の経歴に傷がつく事がない!」


 あらあら。そうきましたか……


「それはだめよ。フランツ。アリスフィア様が困っていらっしゃるわ」


 えぇ。とても困っています。私をアリスフィア様と言ったのは、現在我が家に住んでいるレイラ。殿下の腕を取り仲良さそうに寄り添っている。とってもお似合いですわ。


 レイラはクルー男爵家の娘でブラック伯爵家の遠縁にあたり、学園生活の間は我が家に住んでいる。


「レイラは気遣いの出来る心優しい令嬢でアリスなんかとは大違いだな……」


 そう言って殿下はレイラの肩を抱きしめ、イチャイチャし出した。何を見せられているのだろうか……と思わなくもないけれど、レイラは幸せそうな顔をしていた。


「そういった事はお二人の時になさって下さいませ。皆さんが見ていますのよ? 仲の良いところを見せびらかしているようにも思えますわね」


 呆れてしまいつい口に出してしまった。仲睦まじい事は誰の目から見ても明らか。ほら他の生徒たちも興味ありげにこちらを見ている。ここは王宮のホールで、このままだと騒ぎを聞きつけた他の貴族たちの耳にもすぐ入ってしまう。


「アリスフィア様……そんな……二人の時にだなんて……婚約者がいるフランツと二人きりになるわけないじゃないですか……そんな事をしたら私たちの関係がどう思われるか、ねぇ、フランツ?」


「二人の時にとこいつは言った。婚約破棄を受け入れたと言う事だ。そうだな?」

 勝ち誇った顔をするフランツとその胸の中にすっぽりとおさまるレイラ。小さくて庇護欲が湧くのよね。分かるわ。とっても可愛いもの。
 

「はい。了承致しました。どうぞ婚約を破棄して下さいませ」


 面倒ごとはゴメンよね。取り敢えず屋敷に帰って……そう思いながら会場から出ようと思った。


「待て! おまえは私とレイラをバカにしたな! レイラはいずれ王子妃となるんだぞ? 王族をバカにした! これは立派な不敬罪にあたる! よって私とレイラの百以内立ち入り禁止とする!」


 ザワザワ……周りがザワつく。取り敢えず学園は辞める事になりそうね。百キロ以内ねぇ。


「えぇー! そうなると田舎しか居場所がなくなってしまいますよぉ? アリスフィア様は都会生まれなのに……百キロと言ったらクレマン地方……超ど田舎ですよぉ!」

 ……レイラがいた孤児院のある場所ね。レイラは元孤児で男爵家に引き取られたのだけど。


「ほぅ。クレマンか……それは良いな。ついでに不敬罪として身分剥奪も加える」


 ザワつく会場に衛兵たちが慌ただしくなってきた。王宮から摘み出して笑いものにするという事? それにしても不敬罪の意味を知っているのかしら? バカバカしくて反論するのも面倒。はぁっ。困ったようにため息を漏らすとカツカツと早足の靴音が聞こえた。



「おい! 何の騒ぎだっ」


 そこに現れたのは第三王子のフェリクス殿下だった!


「げっ。兄上……」

 

「何の騒ぎだと言っている? 今日は学園のパーティーだろうっ!」

 じろっとフランツ殿下を一睨みすると周りに静寂が訪れた。フェリクス殿下は第二騎士団をまとめる騎士団長でもある。

 フランツ殿下を睨んでいる間に私は後退りをしなんとか距離を取り出口へ……


「フランツの横にくっついている女はどこの誰だ? おまえにはアリスという婚約者がいるだろう!」


 そんな事を言われても……もう婚約破棄は決まった。全校生徒の目の前で婚約破棄をされ元に戻る事はない。もしそうなったとしたら我が家の恥だわ。


「兄上! 私はアリスと婚約破棄を皆の前で宣言しました。その後はレイラと婚約をする事をここに宣言いたしますっ!」


 しーーん。と静まり返りフェリクスは頭を抱えた。


「正気か?」


「もちろんです! アリスには私たちに危害を加えぬよう百キロ以内を立ち入り禁止とし、クレマン地方へ追放します」


 フランツの実兄であるフェリクスだが、フランツを見る目は冷え切っていた。


「百キロ以内……? クレマン……? それは誰が決めたんだ?」


「私です! 王族として決定を致しました。不敬罪も併せて身分の剥奪もです。おいアリス! 私は優しいから猶予を半日やろう! 朝が来るまでに王都から出ていくように」


 王族が一度口にした事は決定。それを覆すのは王若しくは王妃の口添えがいる。しかし言動には責任が伴われる。覆すと言う事は間違いであったと認める事になる。


「フェリクス殿下そう言う事ですので、御前失礼致しますわ。みなさんも騒がせてしまい申し訳ございませんわ。それではご機嫌よう」

 笑顔でカーテシーをして会場を去ろうとした。フェリクス殿下まで登場した事により、周りはポカンとしていた。


「アリス、100キロは遠いぞ……なんて120キロは離れている」


 フェリクス殿下はと言った?


「え? ですか」

「そうだ! 遠いぞ?」


 フェリクスはフランツに分からないように私に目配せしてきた!


 そしてと言う地名をなんとなく濁して言ってくる。


 じゃなくへ行けと?

「良いな? マンだぞ」


 また地名を濁した。


「アリス! 兄上の言う通りだ! とっとと出て行け!」


 はいはい。出ていきます。私は今度こそ会場を後にした。


 フェリクス殿下はもう一度小声でいいか? グレマンだぞ? と念押しに言ったので、にこりと笑って返事した。フェリクス殿下がそこまで言うのなら何か考えがあるのでしょう。

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