婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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フランツ・エル・シーバ2

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 私に気がつかないとは生意気な!


「フランツ殿下? どうかされたのですか?」

 むしゃくしゃしていた私は声をかけられた方へ機嫌悪く振り向く。するとレイラに声をかけられた。レイラはアリスフィアの家に住んでいる男爵令嬢だ。


 レイラは男爵家に数年前に引き取られた令嬢である。国の政策である孤児院救済の事業で孤児を引き取り家族にしたり仕事を与えたりするのが目的だ。

 家族にするパターンは少ないが孤児からしたらチャンスが与えられる。と言った感じだ。


 貴族になって数年だが頑張り屋の彼女をなぜが目で追ってしまう。疲れているのだろうか。


 アリスフィアのご機嫌取りのために伯爵家に行く時は(行かされる)アリスフィアが来るまではまずレイラが相手をしてくるので話をする機会が多い。

 アリスフィアとは違いいつもニコニコと笑っていて聞き上手で感じがいいのが取り柄だ。


 しばらくしてアリスフィアがのんびりと応接室に来て開口一番に言う。

『来るのならせめて先触れをくださればこんなにお待たせ致しませんでしたのに』

 と言った。客が来てもすぐに出られる装いではないのかっ! レイラは既にいるのに。



 レイラがもっとはやく男爵家に引き取られていれば、レイラが私の婚約者になっていたかもしれない。男爵は国内有数の金持ち。私のバックに付いたのなら子爵以上の爵位を与えれば良い。となると、私の婚約者がアリスフィアからレイラに代わったところでなんの問題も無かろう。


 早くしないとレイラとクレマン子爵嫡男と婚約の話が出ていると聞いた。


 だから私は100キロと言う距離を出した。100キロというのは王都からクレマン子爵家の領地にあたる。

 都会の令嬢なら王都からなるべく近くにいたいだろう? それならちょうど百キロのクレマン領に行くはずだからな!

 するとレイラも、それに気がつきと言った。賢い女性は良いな。


 私がレイラと婚約する。アリスフィアがレイラの代わりにクレマン子爵家の嫡男と婚約すれば良い。そうなるとお互いウィンウィンな関係になる。親戚だからいいだろう? それに現在は同じ家に住んでいるのだし。


 完璧な計画




******


「アリスフィア様はまだ王都にいるのかしら……私、逆恨みされないかしら。不安だわ」


 眉を下げて私に寄りかかるレイラ。とてもよろしい。頼られているんだな……愛い奴め。


 パーティーは中止となり私室でレイラと今後について話していた。


「夜明け前に出るようにと言ったが、屋敷でごねられてはかなわんな。よし様子を見に行くか」

「えぇ。そうしましょう」



 もしのんびり寝ていたら、着の身着のまま出ていくように命令しよう! そして泣いて縋るがいい。はっはっは!

 そう思うと少し気が晴れた。






 伯爵家に着くと、数人の使用人が出迎えたのだが……

「王族を迎える人数ではないぞ!」


 なんなんだ! たったの数人しか出迎えないなんて、バカにしているのか!


 奥から執事長がようやくやってきたようだ。


「おい! 私を誰だと思っている! 使用人の躾がなっていないぞ!」

 深夜だろうが早朝だろうがそんなの関係ない。王子が来たんだからな! いつもは先頭に立って頭を下げていただろうが!


「これはこれは、フランツ第五王子殿下ではございませんか。主人が留守故、私が対応させていただきます。このような時間にどういった御用向きで? お急ぎと見受けられます」


 丁寧だが言葉に棘がある言い方。そして訪れたのは深夜だ。もちろん周りには止められたのだが、無理を言って馬車を出させた。

 
「分かっているだろうが! アリスフィアがいるだろう」


「はて? アリスフィア……とはどなたでしょうか?」

「惚けるな! この屋敷の生意気な娘のことだ!」

 何がどなたでしょう! だ。こいつらはアリスの存在を無かったことにして匿うつもりか!  


「おかしいですね。伯爵家には娘はおりませんが……」


「このっ!」


 近くにあった花瓶に手を掛け割ってやった!


 ガシャーーーーン!

 バシャッ。バサッ。


 花瓶の割れる音と水が溢れる音、生けてあった花が床に散らばった。



「第五王子殿下、夜中に先触れもなく、他家で問題を起こされては困りますな。主人が帰ってきた時になんと申せばよろしいか……花瓶代は王宮に請求させていただきますが本日はどうぞお帰りくださいますようお願いいたします」


 執事の後ろに使用人が並び、一斉に頭を下げた。人数は少ないがとても強い圧を感じた。


「ねぇ。アリスフィア様はどうされているの?」


 使用人は皆頭をかしげる。



「もう! いいわ。自分で見てくるからっ」


 レイラはフランツを置いてアリスフィアの部屋へ向かった。扉をバンっと開けて大きな声を出した。


「アリスフィア様!」

 大きな声で呼ぶが返事は返ってこない。ベッドへ行き布団を捲るがいない。


「いないの?!」



「レイラ、どうだ? いたか?」


「いませんわね。王宮から邸に帰ってきたのは間違いないから、もう出て行ったのかも……逃げ足が早いんだからっ。やましい事があったからこんなに早く出たのだわ」



 そうか、泣き喚き縋ってくる情けない姿を見たかったのだが、残念だ。しかしもう邸から出たのなら問題はない。100キロだからな。はっはっは……

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