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訳ありです
しおりを挟むしばらくは美味しいお菓子に舌鼓をうつ。
「変わったお菓子ですね。見た目も美しいです」
冷たくて透明なお菓子はゼリーで中に金魚が泳いでいる。
「中の金魚も味が違っていてとても手が混んでいるよな。コンテストに出れば優勝できるのに頑なに出ない。そして店の宣伝もしないんだ」
宣伝して人がたくさん来るのは嫌なようだ。店主は男爵家の元子息で今は平民としてこの町に住んでいてオスカーと懇意にしている。
「さて、そろそろ本題に入ろう。アリスちゃん、君はなぜここにいる?」
「…………たの」
「ん?」
「婚約破棄されたの」
「……婚約破棄? あの王子から? アリスが? なんで? いつ? どこで?」
マークお兄様の顔はこれでもか。というほど驚いていた!
「そう、あの王子から。私が。理由は生意気だからだって。場所は王宮で学園のパーティーをしていたので全校生徒が知っているわね」
「はぁぁぁぁ?」
「まだ知られていないっていう事は、今のところ箝口令でも敷かれているのかも?」
そろそろ知っていてもおかしくないと思うのよね。
「いくら王都からここが遠いと言っても噂のレベルじゃ光よりも早く国中に流れるだろうから、その線はあり得る……」
でももうすぐそれも終わりよね。だって皆んなが帰ってくるから。
「それとね、実は身分剥奪も追加されていて今は伯爵家令嬢じゃなくて、単なるアリスなの。それと王都から100キロ離れなくてはいけないから、移動しているの」
あっ。平民が貴族と馴れ馴れしく話してはいけないわね。昔馴染みだからつい甘えてしまったわ。
「あ、申し訳ございませんでした。うっかり昔のように話をしてしまいました。一般人の分際で貴族の方にこのような話し方を」
「……そういうのはいいから」
呆れたように言葉を遮るマークお兄様。
「そうですか? お許しを得たので続けますね。ついでに新しい婚約者の方も出来て二人の幸せを邪魔するつもりはないんだけど、」
「ん? 待て待て……婚約者? アリスとの婚約を破棄したその口で新たな婚約者だと?」
「えぇ。そうなの。その婚約者が私と近しい? 人で……私に虐められないかと不安だから、二人から100キロ離れた場所に行かなきゃならなくて今は離れている最中なの」
「……うちの領地は王都から80キロ程か。もっと先? どこへ行くんだ? アテはあるの? それよりアリスから近しい人物って誰だ?」
やっぱり気になるわよね? でもマークお兄様ってレイラの事苦手だったわよね。でも嘘をついてもしょうがないわね。
「行き先はグレマン領で、アテは……フェリクス殿下経由だからなんとかなると思うの。ショーンとミリーもいるもの」
ショーンとミリーはオスカーに会釈をした。アリスに付いている使用人と言う事は知っている。
「で、誰なんだ?」
「……レイラよ。知っているでしょう」
「…………」
「何か言ってよ」
無言は辛いわね。
「……グレマンか……なんでグレマンなんだ? 王都からグレマンは120キロは離れてないか?」
さすがマークお兄様は詳しいわね。優秀な成績で学園を卒業しただけのことはある。マークお兄様が学園に通っていた時は王都に住んでいたし、うちに来てお兄様やジェレミーと剣術の稽古もしていた。とても優秀なのだ。
「第五王子殿下にはクレマンって言われたんだけど、フェリクス殿下が出てきてグレマンへと言われたの。だから第五王子殿下はグレマンに向かっているって知らないから、探されても無駄足になるわね」
「それは分かった。フェリクスが機転を効かせたんだな。さすがフェリクス。ところでなぜレイラ嬢がアリスの元婚約者とそう言う関係になったのだ?」
マークお兄様は私のことをアリスと呼ぶ。アリスフィアは長いしアリスと言う愛称は気に入っているし親しい人は皆そう呼ぶ。ではなぜレイラの事をレイラ嬢と呼ぶのか? マークお兄様が家に来た時にレイラを呼び捨てにしたら自分は元孤児だからバカにされているのだ。と泣いたから。
だから皆レイラ嬢と呼んでいる。レイラはそれ以降マークお兄様の事を無作法な人だと言って毛嫌いしていた。たったそれだけで? と思わなくもない。
なんでも呼び捨てにして良いのは自分の大事な人だけなんだそう。第五王子殿下には呼び捨てにされていたからそう言う事ね。
「ご機嫌伺いにうちに来た時にレイラとお話をして楽しかったみたいよ。学園でも仲良さそうにしていたし、私が第五王子殿下と口論の末に顔を見たくないと言われたからしばらく顔を合わせなかったからその時に仲が深まったんじゃないかと思うのよね」
「アリスは良いのか? 元婚約者を取られたんだぞ!」
「それは良いんだけど、お義姉様達や王妃様に申し訳ないとは思う。すごく良くしてくれて私も大好きで尊敬をしている方達だから。お父様が帰ってきたら、何かアクションはあると思うからそれまでは第五王子殿下の命令通りに婚約破棄→追放を楽しんでいるところなのよ。まさかマークお兄様に会うなんて想定外だったから。でも明日にはこの町から出るのでまたしばらくは会う事がないと思うのよ。王子の命令に背いて手助けをした。となるとテイラー伯爵様に迷惑が掛かるから、これ以上は気を遣って欲しくないの」
「……それを両親が聞くと全力で手助けしろ。と言ってきそうなんだが」
「話を聞いてくれただけでスッキリしたわよ。お兄様もわかってるでしょう?」
にこりと笑うアリス。
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