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アリスの登場
しおりを挟む『レイラ、落ち着いた? お茶の準備をしたからお茶にしましょう。殿下もどうぞ』
アリスが二人の様子を見に庭へとやってきた。せっかく良い感じだったのに。邪魔!
応接室でお茶を飲むことになった。アリスと私と殿下の三人。
アリスに気分はどうかと聞かれた。
『殿下が謝ってくださって……とてもお優しい方なんですね。こんな素敵な婚約者がいてアリスフィア様が羨ましいですわ』
甘える様な眼差しを殿下に向けるレイラ。
『へぇ、君はそんな風に私の事を見てくれるんだね。何処かの誰かとは大違いだ』
アリスはすました顔をして微笑んでいた。
『……私は嘘はつきませんわ。こんな私に殿下は謝ってくださいましたもの。殿下は悪くありませんのに私が勝手に勘違いをしただけですのに』
『君は優しいね』
『私はレイラと申します。どうか名前で呼んでください』
一瞬だったけどアリスの眉がピクリと動いたような気がした! ふーん。
『それではレイラ嬢、と呼ばせてもらおうか』
『レイラで結構ですわ』
殿下もニヤリと口端を上げていたから、アリスが気にしている事を察したみたい。
『そうか。レイラだな。私のことも名前で呼んでくれ』
へー。アリスも名前で呼んでいないのに私には許しちゃうんだ。
『フランツ様とお呼びします』
二人でにこりと笑い合ったらアリスが
『私はそろそろ……』
アリスがそんな事を言って席を立とうとした。もう、ここからが良いところなのにっ!
『母や義姉上達から伝言だ。今度の茶会に出席する様にとの事だ』
フランツ様がアリスに素気なく言ったらアリスも素気なく答えた。
『……分かりましたとお伝えください。ご用はそれだけですか?』
『せっかくの機会だからお前の口からレイラの話をしてくれ、今まで話題に出なかったよな?』
『酷いわ……私の存在を知られたくなかったのね』
悪口すら言っても無いってこと?! さっきの悲しみの演技が無駄じゃないの……ど、どうしよっ。
『わざわざうちの事情をお話しして殿下のお時間を取らせるのはどうかと思っただけですよ。レイラはとても本が好きなのですわ。授業のない時はいつも本を読んでいるのよね?』
レイラと殿下の両方を見るアリス。
『ほぅ。読書が趣味なのか』
『はい。最近は刺繍も始めました。まだアリスフィア様みたいに上手くありませんし、先日は指を針で刺してしまったんですよ』
殿下に手を見せてアピールしてみた。すると手を触れてきた。
『それなら今度王宮の女性達が使っているクリームをプレゼントしよう。とても良く効く様だから』
と言ってから手を離してきた。ビックリして顔が赤くなってしまった。アリスを見るとやはり興味なさそうにお茶を飲んでいた。
『レイラ良かったわね。王宮のクリームは人気があるのよ。さて、今度こそ』
アリスがまた席を立とうとした。
『アリス、私は客だぞ。わざわざこの私が伯爵家にまで足を運んだのだから相手をするのは当然だろう。席を立つなんて失礼じゃないのか? その様な態度を取っても良いと習っているのか?』
アリスがフランツに注意されているわ! おもしろーい!
すると笑みを浮かべて
『殿下が会話を楽しんでいらっしゃいますのに、退席をしようなどと失礼をお詫び申し上げますわ。私に会いにきたんでしたものね』
『わかれば良い。アリス茶を淹れてくれ』
温くなったお茶を淹れ直すアリス。まるで使用人みたいだとレイラは思った。
お茶会のホストはゲストに対して目を光らせ自ら茶を淹れる必要もある。
お茶を淹れゲストに楽しんでもらうと言うのはお茶会の醍醐味である。
産地にこだわり香りを楽しむのは至高の世界であり、美味しいお茶を淹れると言うのは嗜みともされるが、自信がないのなら、それはプロに任せれば良いだけのこと。
アリスはその辺も王宮でしっかりと学んでいた。フランツの母でありこの国の王妃は、お茶会を開く時に息子の妻や婚約者達にお茶を振る舞うのが大好きで、その逆も然り。
レイラはまだその境地に達してないだけ。だから使用人みたい。などと思うのだ。
『アリスが淹れる茶は美味い』
アリスは私の前にもお茶を出してきた。伯爵家御用達の香り高い茶葉を使っているだから美味しく淹れて当然だわ。なによ、それくらいで偉そうに……とレイラは思った。
それからしばらくしてフランツは帰って行きお茶会の招待状をアリスに渡していた。王家の紋章入りの見るからに豪華な手紙だった。
『私も連れて行って欲しいわ』
王宮のお茶会ならきっとお姫様の様な気分を味わえるわね。王妃様とお近づきになって、それから……ふふっ。貴族って凄ーい!
『連れていきたいのは山々だけれど……王妃様のお茶会だから呼ばれていない人は行けないのよ。王妃様主催の公なお茶会が年に何度か行われるからお呼ばれされる日が来ると良いわね。その日のためにレイラはマナーの授業をしっかりと受けなさいね』
ですって! ちゃんと受けてますけど!?
『マナーを身につけないとね、鎧をつけないまま戦場に行く様なものなのよ? そうすると傷つくのは自分なのよ』
ですって! だからちゃんとやっているってば! えっらそうに!
『そうならないように頑張りますわね!』
にこりとレイラは笑い、応接室から出た。あっ、王子様とのロマンス溢れる本を読まなきゃ! 今後のためにねっ。
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