婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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もうすぐ王都の屋敷に着きます

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「明日はとうとう家に戻る日ね」

 今は王都からほど近くの町のホテルに滞在している。お兄様から早く帰ってくるようにと再三手紙が届いていたけれど、今回の手紙は文章だけではなく、手紙全体から“帰ってこい、帰ってこい”と伝わるような手紙だった。

「そうですね。お嬢様はのんびりしすぎですよ。ショーンは胃が痛いと言っておりました」

「あら、それは悪かったわ。でも色んな町が見られて楽しかったと思わない? 伯爵家の領地は王都から南に行った先だから関わりがなかったものね」

 関わりがある方もいたけれどわざわざ領地に出向くことなんてないもの。将来は王子妃として付き合いがあったかもしれないし、視察に同行する事もあったかもしれないけれど、婚約が解消されたのだから今後そういう事もない。

 しかし、別の考えだと自由に動けるのだから旅行へ行こうと思えば行けるのよね。悪くないわね。今度はちゃんと計画を立てて旅行したい。
 

 王都に近づくとフランツ殿下のことを思い出した。そういえば執務はちゃんと滞りなく行われているのかしら? ってもう関係ないのだった。私一人がいない所で周りは優秀な人が揃っているのだから問題ないわね。


「ジェレミー様からもお手紙が届いたようです」

「まぁ! ジェレミーから? 嬉しいわ」

 開封すると“早く帰ってきて! お姉様の顔が見たい”と書いてあった。あら。それは早く帰らないとね。
 早馬で駆けてきた騎士がホテルの外で待っている。と聞いたのでお兄様、ジェレミー、両親に宛てた手紙を書き渡しに行く。


「お嬢様っ!」

「あら、マーティンじゃない。久しぶりね元気だった?」

 マーティンとは私が街に行く時などに護衛をしてくれていた我が家の騎士。追放の際はマーティンも付いてくる。と最後まで言っていたのよね。でもマーティンにはご家族がいるから優先はご家族よ。と言って断った。大勢での移動は人目につきやすいし、マーティンは大きいし容姿も目立つから。

「元気じゃありません! お嬢様がいなくなって心配で寝不足です!」

 少し痩せたように思えるわね。この言葉はきっと演技なんかじゃない。


「手紙は私ではなくケンが届けます。私はお嬢様の護衛としてお屋敷まで送り届けます! 旦那様にも了承を得てまいりましたから止めても無駄です」

「分かったわ。ありがとう。それではケンお願いね」

「はい! 必ずお届けします」

 頭を下げてケンは早馬で駆けていった。マーティンの両親はマーティンが子供の頃に不慮の事故で亡くなり、孤児院に引き取られるところをお父様がうちに連れてきて騎士になったという話を聞いた。マーティンに何をしたいかと聞いたら騎士になりたい。って答えたからなんですって。私が小さい時にマーティンが熱く語っていた。

 そしてマーティンと歩いているとアーネスト様に会った。


「今からアリス嬢に会いに行こうと思っていた所なんですよ」

「まぁ、そうでしたの。ちょうど良かったですわ」

 マーティンが頭を下げる。

「そちらの彼は……うん? マーティンか?」

 マーティンが名前を呼ばれ頭を上げアーネスト様を見た。

「はい、って。あ! ネストじゃないか」

「二人は知り合いなのですか?」

 アーネスト様に尋ねる。騎士同士だからそういうネットワークがあるのかしら?


「……実は本名を名乗ってはいなくて、通称ですね。昔は強くなりたくて色んな所に顔を出していて稽古を……マーティンとはそこで出会ったのです」

「やはり貴族だったのか。っと失礼」

「いや、今まで通りに接してくれ。公の場では困るがここでは構わない」


 せっかくなのでアーネスト様とマーティンの三人でお茶をした。話を聞くとアーネスト様はとても強くてマーティンは一度も勝てなかったそうなの。

「憧れの剣士と言われるとネストです。それくらい強いのです。ズルなしの正攻法で強いのでかないませんよ」

「マーティン良かったら私が王都に滞在中に手合わせをしてくれないか?」

「もちろん喜んで! ところで今後の予定ですが」

 マーティンが私を見てきた。大事な話があるのね?

「この度はお嬢様がお世話になりました。ブラック伯爵家当主がグレマン卿に是非お礼を言いたいと申しておりますので、改めてご挨拶に伺うとの事です。明朝、伯爵家の護衛が到着いたしますのでここで一旦別行動としてもよろしいのではないでしょうか?」

 マーティンはグレマン卿と言い仕事モードにスイッチが切り替わった。

「いや。フェリクス殿下から家までお送りするようにと事付けがありましたのでアリス嬢は責任を持って家まで送ります」

 マーティンは不服そうだったけれどフェリクス殿下の名前を出されると何にも言えなくなったみたい。

「もう明日には屋敷に着いてしまうなんて。色んな町が見られて楽しかったですわ。帰りは特にのんびりと過ごせましたしアーネスト様のおかげですわ。本当にありがとうございました」

「まだお別れを言うには早いですよね? 屋敷まで見送らせてもらいますし王都を案内してくださるのでしょう」

「そうでしたわ。全てが終わったらご案内致しますね」

 面倒臭いけれど、王宮に面会しに行かなきゃならないよね。謝罪とか面倒なんですけど。当の本人たちからは謝罪の言葉なんてないでしょうから……




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