婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

文字の大きさ
67 / 93

アーネスト

しおりを挟む
「久しいの。やっと王都に出てきたか。待っておったぞ」

 挨拶をして最近の隣国との関係について報告をする。大きな争いはないし今までで一番いい関係になってきている。隣国の国王が変わったことの影響だろう。

「なるほどな。良くやってくれている、感謝するぞ。ところでまだ公表はしておらんがわしも三年後に引退を考えておる。その後は王太子に任せるつもりじゃ」

 引退?! まだ早いだろう。体も頭も元気だしまだまだ若いのだから。

「三年ですか? 理由をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」

「元々考えておったんじゃが、少し早まっただけだ」

「もしかして今回の第五王子殿下の、その、婚約破棄の件ですか?」

 早まったとなると、現在考えられるのはこの件について。

「アーネストも巻き込んでしまったからきちんと説明せねばと思ってな。アーネストが思う通りだ。今回の件で貴族達からのクレームがすごいんだ。王妃の元にも王子の妻や婚約者の元にも同様の手紙が多いそうだ。アリスフィア嬢は社交を通じて貴族夫人たちからの信頼は厚いし外交を行う予定だったから外務大臣はこの話を聞いて倒れてしまった」

 大臣としては天塩にかけて育てた人材で予想だにしない事だったろうな。

「想像をするだけで頭を抱えたくなりますね」

「世間もこの件をおもしろおかしく言っておるから、フランツに相当な罰を与えなければならんから、アリスフィア嬢と同じ条件をつけて城から出した」

 え、もう? 出した後の話なのか。仕事が早すぎる。

「王都から100キロ先、北の大地の領主となる事を任命した」

 北の大地といえば冬になると極寒。熊や狼も出るし作物が育ちにくい。ただし領民は逞しく働き者のイメージだ。

「こんなことを言うと不敬かもしれませんが王都暮らしの王子様にはなかなか厳しい条件での生活となるでしょうね……」

 フェリクス殿下のように騎士団に所属をしているような方ならまだしも、第五王子は正直ヒョロ、っと。体の線が細いから寒さに耐えられるか……

「そうか? 行くところが決まっているだけでも甘いと思わんか? 領主館に住む事が出来るし寝るところには困らない。アリスフィア嬢は急に王都から出ろと言われ身分をなくすと言われた。クレマンへ行かなくて良かったと思う。フェリクスの判断は正しかった」

 これは何かあった。聞いてもいいだろうか?

「クレマン家はブラック伯爵家と懇意にしていますよね。何か問題でも?」

「グレマン家には迷惑をかけたから言ってもいいだろう。クレマン子息はアリスフィア嬢のことを好いていてな。レイラとやらの婚約がなくなったから、王家として令嬢を紹介すると言ったところアリスフィア様がいいと言ってな……あの時一時的とはいえ身分剥奪となったアリスフィア嬢がクレマンに行っていたら……無理やりなんて事もあったかもしれない。同意がない行為があったとしたらわしらはアリスフィア嬢に、ブラック伯爵家に顔向けできない。後先を考えない言動だ、愚息の行動は許されることではない」

 アリス嬢がなんてことだ! クレマン子息に直接話を聞いたわけではないが頭の片隅に入れておこう。

「事情が事情だけに第五王子殿下に同情はできません」

「しなくとも良い。お前のような善良なものに匿ってもらえたのだからこちらとしては安心だ。しばらく王都に滞在するのだろう? 会議があるから参加するようにな。お前の父は参加していたぞ」

 これが面倒なんだ。しかし慣れていかなければならない。

「はい」

「わしから報告じゃ。フランツとレイラとやらは別れ、北の大地にはフランツだけが行った」

「へ? 別れさせられたのですか?」

「違うぞ。二人で北の大地へ行くように言ったんじゃが、レイラとやらは逃げた。王子妃としてぬくぬく贅沢して暮らせると思っていたんだろうが、当てが外れたから逃げた」

 最悪な結果だ。婚約破棄までしてその女に逃げられるとは……少しだけ同情してしまった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』

鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」 王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。 感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、 彼女はただ――王宮を去った。 しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。 外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、 かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。 一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。 帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、 彼女は再び“判断する側”として歩み始める。 やがて明らかになるのは、 王国が失ったのは「婚約者」ではなく、 判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。 謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。 それでも―― 選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。 これは、 捨てられた令嬢が声を荒げることなく、 世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。

セラフィーヌの幸せ結婚  ~結婚したら池に入ることになりました~

れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。 しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。 ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。 ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。 セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。 それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。 *前半シリアス、後半コミカルっぽいです。 *感想欄で所々ネタバレしてしまいました。  感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m *他サイトでも投稿予定です  

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

処理中です...