婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

文字の大きさ
84 / 93

ナイスタイミング!

しおりを挟む
「お願いがあるんだけどー」

「……なんですか? 金でもせびりに、」

 というと腹にパンチが入った……

「痛いではないですか!」

「私の手の方が痛いわよ!」

 痛そうに手をさする姉上。人を殴っておいて自業自得だろうが。

「お願いとはなんですか?」

 今までの事を考えると何かを押し付けてくるに決まっている!

「一緒に隣国まで行かない? ぱぁーっと行ってさぁーっと帰ってくれば問題ないわよね? アリスちゃんのおかげで仕事も捗っているのでしょう?」

 行く場所が決まっているのならそれも可能だろう。

「何をしにわざわざ隣国まで?」

「宝石展があるのよ! 世界各国の宝石が一堂に集まる機会だから行きたいのよ」

 隣国に伝手があるからか……って宝石展! 

「よし、行きましょう」

「そうこなくっちゃ! 弾丸旅になるけれどアーネストがいてくれれば問題ないわね!」

 まずは仕事の目処を目極めて、明日は訓練日だから訓練はキャンセル。明後日、明々後日は休日だから……いけるな!

「明日出発しましょう」

「さすが我が弟! 分かってくれるのね。子供達を置いてきたのは正解だったわ。絶対自分達も行くって聞かないでしょうから」

 そうと決まれば早速……執務室に戻りアリス嬢に話をする。

「まぁ。そうでしたの。分かりました、気をつけて行ってきてください。その、私は行かなくても良いのですか?」

 完全プライベート旅についてきてほしいとは言えない。行くのなら姉上抜きでゆっくりと旅したい。弾丸旅なんてもっての外だ!

「今回は仕事ではないので、申し訳ないです。急な事で申し訳ありません」

 気のせいか少し寂しそうな顔に見えた。私の見間違いだろう。そうあってほしいと思っているからなのだろう。

「そうですか。気をつけて行ってきてください」


 ******

「とっとと行って帰ってきますよ!」

「分かっているわよ。まさかこんな早朝に出るなんて思わなかったわ!」

「時間がありませんからね」

 夜が明けてすぐに出発する。アリス嬢が起きる前に出掛けないと迷惑だろう。彼女にも休んでもらうように念を押したのだから。

 休憩を挟み昼には隣国に着いた。そこからの移動をして、一泊して馬を休ませる。

 いつも泊まっているホテルへ行くとなんとか部屋が確保できた。いつもより狭い部屋だが仕方がない、急だったのだから。

 身支度を整えて宝石展へと向かう。貴族の行くような催しは夜になってもやっているので助かる。宝石展を見た後はようやく買い物だ。世界中から集められた宝石を使って加工された品が販売されている。姉上は目当ての宝石を見つけ目が燦々と輝いている。姉の事は護衛に任せて私もアリス嬢へのプレゼントを探しに行く事にした。

「何が良いのかサッパリ分からん!」

 困ったぞ! そう思いながら目についたのはパールだった。

「よろしかったらどうぞご覧下さい」

 と言われてパールの説明を聞いた。凛としたアリス嬢に似合いそうだと思ったのだが……

「誰にプレゼントするの?」

「!!」

「あ、姉上っ」

 ニヤリと笑う姉上を見て観念した。商品説明をしてもらっていた店主に声をかけ席を立つ。

「アリスちゃんにプレゼントでしょう?」

「えぇ、まぁ。卒業の祝いに……」

 嘘ではない。

「妙に乗り気だったから気になっていたのよねぇ。いつもだったら“お断りします、面倒です”なんて言いそうだからダメ元でお願いしたのに即決だったもの」

 時間がなかったから即決したのが良くなかったのだろうか。しかしバレたからには姉上に相談しよう。

「王都で購入しようと思っていたのですが姉上から丁度声がかかったので、これは神のお導きだと思ったのです」

 今買わないでいつ買うんだ。って事だろう。

「タイミングが良かったのね。それよりも、何を買うか決めているの?」

「いえ、」

「でしょうね。パールはアリスちゃんに似合うと思うけれど初めてプレゼントするには落ち着きすぎてない? 卒業のお祝いでパールならもう貰っているかもしれないわ。私もそうだったわ」

 そうなのか! 似合うと思っていたのだが被るのは良くない。

「なるほど。色々あるのですね、勉強になりました」

「どういう物がいいの? ただぶらぶらしているだけじゃ時間が勿体無いわよ」

 アリス嬢といえば気品があって、でも気さくで、美しくも可愛いところもある。都会の出身なのに辺境でも嫌な顔せず働いてくれている。感謝しかない。

「アリス嬢は普段アクセサリーなどを付けていないので、普段使いの物がいいのかもしれない」

「そうね。アクセサリーを付けていないわね。若い女の子なのに勿体無いけれど見せる相手もいないからなのかしら」

 チラリとこちらを見てくる。相手にされてないぞと言いたいのか? 揶揄われながらも色んな店を見て回るとピタッと足が止まった。

「ちょっと急に止まらないでよ! 危ないじゃない」





「……これに決めた」


 直感だけど良いと思った。

 






 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』

鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」 王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。 感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、 彼女はただ――王宮を去った。 しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。 外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、 かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。 一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。 帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、 彼女は再び“判断する側”として歩み始める。 やがて明らかになるのは、 王国が失ったのは「婚約者」ではなく、 判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。 謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。 それでも―― 選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。 これは、 捨てられた令嬢が声を荒げることなく、 世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。

セラフィーヌの幸せ結婚  ~結婚したら池に入ることになりました~

れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。 しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。 ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。 ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。 セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。 それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。 *前半シリアス、後半コミカルっぽいです。 *感想欄で所々ネタバレしてしまいました。  感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m *他サイトでも投稿予定です  

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

処理中です...