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告白
しおりを挟む「改めてご卒業おめでとうございます」
グラスを傾ける。
「ありがとうございます。一年以上通っていませんが……学生ではなくなると思うと寂しく感じますね」
お父様に返事をする前にアーネスト様に伝えないといけない。現在私の雇い主はアーネスト様。食事中は最近何をして過ごしていたかと話をしたり聞いたり。
アーネスト様は積極的に貴族達と交流を深めていたようだった。苦手だと言っていたのに克服したのかしら?
食事の後はデザートが出てきた。特別なプレートを用意してくれたようだ。
「すごいですね……至れり尽くせりですわ」
卒業祝いのプレートになっていてお花畑のようだった。
「凄いですね。こちらのパティシエは食の国で修行をしていたと聞きましたが見事ですね」
「食べるのが勿体無いですわ。見た目に鮮やかで香りも良いです」
勿体無いけれどジェラートが溶けていく……
「確かに勿体無く感じます。しかし残すと作ってくれた方に申し訳ありませんから頂きましょう」
溶けて見栄えが悪くなるのも嫌よね。形あるものはいつかは壊れる。
「そうですね。勿体無いですけれど頂きましょう」
デザートを楽しんだ後少しお酒を飲む。
「アーネスト様にお伝えしなくてはいけないことがあります」
お酒の力を借りることにした。と言っても嗜む程度、お酒が背中を押してくれそうな気がした。
「はい。なんでしょう」
アーネスト様の顔を見ると緊張が伝わった。
「先日陛下に王宮で働く選択もある。と、提案されたことを覚えていますか?」
「はい、勿論です」
「アーネスト様はどう思いますか?」
ズルい言い方。卑怯な言い方だ。
「……そうですね。アリス嬢が外交の仕事をするために努力していた事は聞いていますし、叶えたい夢だったのでしょう? 一度は白紙となりましたが……チャンスなのかもしれません」
夢だった……でもすでに叶っている。
「思っていた形とは違いますが外交に携われるというのは、そうですね」
沈黙が重い。アーネスト様は私がいなくてもしっかりしているもの。
「しかしそれは表向きの答えなのです」
真剣な顔をするアーネスト。
「表向き? 聞いてもよろしいですか?」
ふぅ。と深呼吸するアーネスト。
「アリス嬢にはアリス嬢のやりたい事があるという事はわかっています。ですが私はアリス嬢が私と一緒に働いてくれたら、いや。一緒にいてくれると己の能力以上に発揮出来るのです。辺境の地で一年間過ごしてきましたが、あなたに惹かれています。仕事の進め方を教えてくださり、私のダメなところを注意してくださり……情けない男ですがこれからも喝を入れて欲しいなどと思っています。王宮での仕事より華やかではありません、しかし私には公私共にあなたが必要なのです」
「……お言葉は嬉しいのですが、ご自分を卑下なさらないでください。アーネスト様はとても優しくて頼りになりますよ……それに私が口うるさくしても広い心で受け止めてくださります」
少し口うるさくしすぎたかしら。と言った後に反省してもアーネスト様は謝ってくれて、テキパキと書類仕事をこなす。体を動かしたいときは剣を握るし騎士たちからも尊敬されている。王都の貴族たちからも一目を置かれている。
「いえ。アリス嬢に仕事のノウハウを教えていただきようやくスタートラインに立ったようなものです。それには感謝しかありません。何も言わなければこの関係は続くのではないか……などと女々しいことを思っていましたが、アリス嬢は人生の岐路に立っています。あなたの事ですから色々と考えているのだと思います。その考えの中に私と人生を共にするという選択肢も加えていただきたいのです。もちろんすぐにとは言いません」
すっと長細い箱をテーブルの私の前に出してきた。
「卒業のお祝いに何かを贈りたくて……姉と隣国に行ったのはコレを購入するために行ってきました。宝石展があったもので……」
「あ、」
「すみません。あの時は貴女への贈り物を探しに行くのに付いてきてもらうわけには行かなくて少し不自然な行動を取ってしまいました。受け取ってもらえますか?」
あの時は寂しいと思った。けれど理由を知って少しホッとして嬉しいと思った。
「ありがとうございます。開けてもよろしいですか?」
「もちろんです」
箱に手を掛けるとパカっと音がした。
「これは……見たことがない石? ですわ」
濃いピンク色の石? の周りにダイヤモンドと金で花に見せてあるとても素敵なデザインだった。
「何を贈ったら良いのか分からず……まず目に付いたのはパールでした。しかしパールは成人の際に家族から贈られるものであると聞きました。凛としたイメージで貴女に似合うと思ったのです。他を見て回っていたらこのピンクのパール、コンクパールというそうですが、目に入りました。店主が言うにはコンクパールは奇跡の宝石と言われるほど中々出会えないのだそうです。それを聞くと貴女と出会えたこと自体が奇跡だと思いこの宝石を選んだのです」
コンクパール! 名前を聞いたことはある。遠い国の海で採れる希少なパールだったわね。
「こんな貴重なもの頂けませんわ」
いくらするのか分からないけれど、周りにダイヤモンドが並んでいる。ダイヤモンドだけでもメインに使われても良いくらいだった。
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