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最終回
しおりを挟む告白されてから一週間が経ち、グレマン領へ戻る日が来た。首飾りをつけ馬車に乗る。
「それではいってきます」
家族に見送られた。アーネスト様との事は皆了解済みだ。グレマン伯爵夫妻に了承を得てから、婚約を結ぶ事になった。貴族同士の婚約は陛下に報告をしなくてはいけないのですぐに王都に戻ってくる事になりそう。
「アーネスト殿によろしく伝えてくれ」
お父様からグレマン伯爵に手紙を渡すようにと言われ、受け取った。
「はい。皆ありがとう、行ってきます」
お母様から渡されたドレスなどもあり荷物は帰ってくる時の倍になっていた。アーネスト様に呆れられるかもしれないわね。と思いながら、王都の景色をのんびりと眺めグレマン家の屋敷へと到着した。
屋敷の前にはグレマンへ旅立つ準備がされていて、護衛たちは忙しそうに馬車に荷物を運んでいた。でもアーネスト様の姿はないみたい。どうしたのかしら?
馬車を降り、荷物を預けてアーネスト様を探そうと屋敷に入る。使用人たちから挨拶をされアーネスト様はどこにいるか聞くと、執務室で仕事をされています。と返事が返ってきた。もうすぐ出発時間なのにおかしいわね? と執務室の扉をノックし扉を開ける。
「アーネスト様?」
夢中で書類を読んでいたのか入室した事に気がついていない様子だった。
「え? ってアリス嬢! もうそんな時間ですか!!」
ガタッと椅子から飛び出すアーネスト様を見てくすりと笑う。
「夢中になっていて気が付かなかったのですね? 急ぎの書類ですか?」
「いえ……その、集中すると時間が経つのが早いので……何もせずに貴女を待っていると余計な事を考えそうで。今日来てくれたという事は、その、」
「はい。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
「……良いのですか? こんな情けない男ですが」
「情けなくなどないですよ? 告白をしてくれたではありませんか? あれは嘘でしたの?」
「まさかっ! もう少しスマートに告げればよかったと思っただけです。アリス嬢、ありがとうございます。絶対に幸せにしますっ!」
「はい。期待しています。アーネスト様は情けないなどとおっしゃいましたが、アーネスト様の良いところで、そんなアーネスト様だからその、私も好きになったのですから……私もアーネスト様を幸せにしますね」
にこりと笑って答えた。
「……ズルイです。そうですよね。一緒に幸せになりましょう」
「えぇ。ところで何を一生懸命読んでいたのですか? 急ぎの仕事でも?」
集中するほど夢中になれる書類だなんて。
「……ええっとですね……」
言い淀むアーネスト様。
「見せてくださいまし」
やましい事でもあったのかしら?! 釣り書きとか?!
「あっ!」
机の書類を奪って見た。
「屋敷の改装……」
リフォームをするための費用が書かれていた。
「楽しい事を考えていた方が集中出来るので……アリス嬢の部屋や夫婦の部屋のリフォームを……と」
そ、そうなのね。
「気が早いですわね? 私は家を出る時にとっとと婚約を結んでこいなんて言われましたのよ? まずはその話から始めませんか?」
「はい! そうと決まったらすぐに帰りましょう。私達の家に」
「私達の家って……気が早いですわ」
馬車の前につくと、私の荷物が運ばれていた。荷物の量を見てアーネスト様が呆れるのではなくなぜか喜んでいた。
「荷物が多いと思わないのですか?」
お母様もお父様も色々と持たせてくれたから……
「いいえ! どんどん持ってきてください。実は……王都へ向かう時にアリス嬢の荷物が少なくて少し嬉しかったのです。荷物が多いと、もう帰ってこないような気がしていました。それに荷物が増えると生活をしているという気持ちになりますから。すぐに出発するぞ! 準備はできたか」
アーネスト様の声掛けによりすぐに出発する事になる。
「嬉しいものですね。私が贈ったものを身に付けてくれるなんて」
首飾りに手を置き微笑む。
「大事にしますね」
お父様もこのパールを探していた事を話した。この国では手に入れることができない貴重で希少な宝石だった。偶然です。とアーネスト様は言った。
アーネスト様はこの宝石の希少さを本当に分かっているのか分かっていないのか……飄々としていた。そういうところがアーネスト様らしいのかもしれない。きっと値段も見ずに購入したと思うけれど、大丈夫なのだろうか?
「次は何をプレゼントしたら喜んでくれるかと考えるだけでも楽しいですね」
にこりと笑うアーネスト様。
「……私にプレゼントする為に予算を使わないでくださいましね。領民に怒られますわよ……」
「アリス嬢にプレゼントするからといって、領民の為のお金に手をつけませんよ。その辺は安心して下さい。私は自分の為にお金を使うことがあまりないので私財で賄えます。むしろお金を使った方が経済が回ります。仕事も頑張ります! 決して貴女に苦労はさせません」
なんて言っていたのに!
「もうっ! アーネストはどこに行ったんですか! 決算書類があるのに」
「はぁ。またですか……きっと訓練所にいるのだと思いますよ」
私の執事だったはずのショーンはグレマン家に欠かせない人材となっていた。
「全く! 何が苦労させません。よ! 最近は稽古と言ってすぐにいなくなるんだから! 連れ戻してくるわ」
そして訓練所に行きアーネストを見つけた!
「アーネストっ!」
「アリス? どうしたんだいそんなに怖い顔をして。可愛い顔が台無しじゃないか」
「誰が台無しにしているか教えて差し上げますからこちらにいらっしゃい!」
耳を引っ張り執務室へ連れて行こうとした。
「いたたたっ」
「大袈裟に痛がらないで! 決算報告書を仕上げますよ!」
「……分かっています。しかしアリスは最近休んでいないじゃありませんか。だから休んで下さい。と言ったのに。併せて結婚式の準備だって大変なのに」
「決算報告書が終わったら結婚式の準備を本格的に取り掛かりますからね。早く仕上げたたらご褒美をあげますから頑張りましょう」
「ご褒美! なんでも良いのですか?」
そんなに欲しいものがあったのかしら? 飴と鞭って大事なのね。
「なんでも良いですよ~そんなに欲しいものがあるのですね? 頑張れそうですか?」
アーネスト様が本格的に決算書を任されたのは初めての事でストレスにもなっているみたいだけど踏ん張って貰わないと!
「えぇ。頑張ります。やっと手に入るのですから! やる気しかありません」
それからのアーネスト様の集中力は凄まじかった! 一週間はかかると思われたのだけど三日で仕上げるなんて! しかも完璧といっても過言ではないのだから。
「アーネスト、良くできました! 伯爵も褒めていましたよ」
晩餐を摂り、食後にお酒を飲んでいた。褒めて褒めて褒め倒した。次は結婚式の準備がありますからね。
「ありがとうございます! なんせご褒美が貰えるので、人参をぶら下げられた馬の気持ちがよーく分かりましたよ。アリスには感謝しかありません」
「まぁ。大袈裟ですわね。ところでご褒美は何がよろしいのですか? 準備しないと」
すると隣に座っていたアーネスト様が私の髪をすくいキスを落としてきた。ん?
「欲しいものは目の前にあります。貴女が王宮の庭で隠れて泣いている姿を見た日から実は私は既に貴女が欲しかったのです」
え? いつの話……
「結婚まであと半年ですが……先に貴女を下さい」
え! 私?
「……ダメですか? ご褒美をくれるといったではありませんか。勇気がいるんですよ」
しゅんと落ち込むアーネスト様は可愛い。大型犬を見ているようだわ。
「……良いですよ」
と言ったのは私。体力に差があると思い知らされる事になる。ご褒美を気軽にあげるなんて言わなきゃ良かったわ。でも身体を許してからアーネストは毎日“愛しています”“大好きです”と愛情表現をしてくれるようになったので、悪くはない。
婚約破棄をされ辺境に追いやられたけれど、ここは私の居場所なんだわ。と幸せを噛み締める毎日だ。
【完】
長い間お付き合い頂きありがとうございました。次は短編を考えていますのでよろしくお願い致します( .ˬ.)"
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