22 / 75
大騒動です
しおりを挟む「レオとの婚約は白紙に戻す。こちらから婚約破棄を申し出た」
帰るなりお兄様がそう仰いました。何も言えずに黙ってしまいました
「学生の身分でカジノに出入りをするなんて呆れてものが言えない。
成績も良くないと言うじゃないか。課題は出さない、遅刻はする、セイラがいるのに他の令嬢と仲良くしているのも気に入らなかった。セイラにレオは相応しくない」
お兄様は落ち着いた様子でお話をされました。
「はい」
「セイラの気持ちを聞かせてもらおうか。レオとこのまま婚約をして将来は変わらず結婚したいと思うか?」
「……レオは王都に来てから変わりました。今のままのレオとは結婚したくありません。レオは……将来が決まっているから私と結婚するしかないと言ったの。それががショックでした」
溢れる涙は止まりません。私がいるからレオの将来が決まっている。自由がないと言われた事がショックでした。
レオと将来は仲良く男爵領を守っていけると思っていたから
「……レオは田舎をバカにするけれど、それでも認めてくれる大事な人たちが私にはいます。大事な領地を……故郷をバカにするようなレオを今は軽蔑しています」
婚約は家と家の決め事。レオのことは嫌いになれないと思うけれど、お父様にファーノン家へ嫁げと言われたらそうするしかない。
でもお兄様は私が嫌だと言ったらきっと叶えてくださる。
「分かった。このことは私から話をする。
セイラはもうレオと関わるな! もしレオから連絡があってもこちらで処理をする。
私たちが学園に通っているのは、何のためだ? 自分の為だけではなく、将来領地を継ぎ領地や領民を守る為だ。
領民が収めてくれた税金があるから、私たちは過ごせるんだ。
レオが大人になり自分の稼ぎで遊んでいるのなら何も言わない。しかし今は学生だ、学生の本分を忘れてカジノに通うなんて言語道断!」
「はい、私もそう思います」
「そう言う事で、私はレオを庇うつもりは全くない。屋敷に来ても入れないように厳しく言っておく。セイラとレオの婚約は一部の人間しか知らない。レオも隠してるんだろ?
今になってみればそれで良かったと思っている」
「レオとちゃんと話し合わなかった私も悪かったと思います」
「その件だが、手紙を何度も送っていたが返事はなかったそうだな。おばさんも心配していたくらいだ。セイラからは連絡を取ろうと思っていたのだからそこは気にするな」
「お兄様……私がレオの生活態度を正せなかったのも原因です。レオが違う人に思えて、それを認めたくなかったの」
「レオは精神的に子供なんだ。今が楽しければ良いと言うものではない。貴族しかいないこの学園は、後の社交にも大いに関わってくる。噂は巡るのが早い。
学園では縦や横のつながりを通じて将来に備える所なんだ」
「はい」
「セイラの友達は、うちが田舎の子爵家だからと言ってバカにしたか?」
「いいえ。はじめは自分自身が卑屈になっていたところもありましたが、フローラ様は……私の事を尊敬すると仰って、お互い認め合って仲良くなりたいと言ってくださりました」
「良い友達が出来たな」
「はい」
「甘いことだけを信じ辛い事には目を背ける。後回しにして良いことなんて一つもない。子供でもわかる事だ。レオは分かっていると思っていたよ。残念だ」
何も言えませんでした。お兄様の仰る事は昔から両親に言われていた事です。
「それに! セイラがいるのに他の女と遊びに行くなんて……許せん! リオネルに学園のことを聞こうとしても、私はレオの保護者ではないから言えないと言った! 友人の頼みでもそれは聞けないと言いやがった! あいつ……職務を全うしやがって……頭のかたいやつだ!」
先生……お兄様が無理を言ってすみませんでした。
でも先生が言っていないのなら、どこでレオの話を聞いてきたんだろう……
「もし、レオがセイラに何かしてきた場合はすぐにリオネルに言え! 学園内のことはあいつが相談にのってくれる」
「はい」
その後レオのお父様が王都へ来て、私との婚約が破棄された事を伝えたそうです。
レオがどう返事をしたかは分かりません。
おじさまは私に謝ってくれました。お兄様は、レオに学園でも今まで通り私に近寄らないよう念を押すようにと言っていました。
お父様はとても怒っていらっしゃったけれど、ファーノン男爵領とは領地が隣同士で、これからも付き合いをしていかなければならない為に、あまり騒動を大きくしたくないと仰いました。
もちろん私の気持ちを慮ってくださりますが、ファーノン男爵に無理な要求をする事はしませんでした。
無理な要求をすると、ファーノン男爵家だけではなく領民を苦しめる事になるからだと言いました。
それでも婚約破棄の慰謝料だけは受け取ったとの事です。
私たちの婚約は一部の人にしか知られていませんでしたので、穏便に済ませることが出来たようです。
婚約破棄は思っていたよりも早く受理されていました。お兄様と話をしてからたった数日の事でした。
69
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
婚約者に裏切られた私が幸せになってもいいのですか?
鈴元 香奈
恋愛
婚約者の王太子に裏切られ、彼の恋人の策略によって見ず知らずの男に誘拐されたリカルダは、修道院で一生を終えようと思っていた。
だが、父親である公爵はそれを許さず新しい結婚相手を見つけてくる。その男は子爵の次男で容姿も平凡だが、公爵が認めるくらいに有能であった。しかし、四年前婚約者に裏切られた彼は女性嫌いだと公言している。
仕事はできるが女性に全く慣れておらず、自分より更に傷ついているであろう若く美しい妻をどう扱えばいいのか戸惑うばかりの文官と、幸せを諦めているが貴族の義務として夫の子を産みたい若奥様の物語。
小説家になろうさんにも投稿しています。
私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。
オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。
それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが…
ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。
自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。
正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。
そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが…
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
よろしくお願いします。
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜
風見ゆうみ
恋愛
ミアシス伯爵家の長女である私、リリーは、出席したお茶会で公爵令嬢に毒を盛ったという冤罪を着せられて投獄されてしまう。数十日後の夜、私の目の前に現れた元婚約者と元親友から、明日には私が処刑されることや、毒をいれたのは自分だと告げられる。
2人が立ち去ったあと、隣の独房に入れられている青年、リュカから「過去に戻れたら自分と一緒に戦ってくれるか」と尋ねられる。私はその願いを承諾し、再会する約束を交わす。
その後、眠りについた私が目を覚ますと、独房の中ではなく自分の部屋にいた――
※2/26日に完結予定です。
※史実とは関係なく、設定もゆるゆるのご都合主義です。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる