田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました

さこの

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セイラはパンを焼く

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~ウィルベルト視点~

 
レオ・ファーノンが謹慎になってからセイラと会うことはなかった。

 セイラがガゼボに来るかと思って待っていた。しかし、


「今日も来ないか……」


 レオ・ファーノンの事があって、落ち込んでいるのだろうか……。



 カジノねぇ……バカな男だ



 本を読み終わり、図書館に本を返しに行こうとしたら声が聞こえた。




「あなたが好きです。一目見た時から……よかったら読んでください」

 告白なら他所でやってくれよ……図書館に入れないだろうが!
 どんな顔か見てやろうと思い、そっと覗いた。

「ごめんなさい」




 ……セイラか




「手紙を受け取ってくれるだけでいいんです。あなたへの思いを書きました。返事が欲しいとは言いません」


「お受けすることはできません。申し訳ありません」


 セイラが頭を下げた。困っている様子だった。相手は一年生……? しつこいやつだな。可哀想だが仕方がない




「セイラ嬢、待ったか?」

「オリバス様……」

 セイラは驚いて目を大きく開いた


「話し中だったかな?」

 告白をしていた男子生徒に声を掛けた

「い、いいえ」

 頭をぶんぶんと振り去っていった。悪い事をしたけど、許してくれ




「オリバス様、どうして?」

「ん? 本を返却に来たら出くわせてしまった」

「……はい」


「あの場所で君を待っていたんだけど、来る様子がなくてどうしようかと思っていた」


「その節はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」


 深々と礼をするセイラ


「お礼を言うのも遅くなってしまいました。落ち着いたらお話をすると言っていたのに……」

「うん。聞かせてくれるの?」



「つまらない話ですよ。聞いてもオリバス様の耳を汚すだけだと思って」

「それは私が決める事だ。聞かせてくれ」

「それでは明日のお昼にお時間を頂けますか?」

「分かった、待っている」


「あの……ランチは私が用意してきて良いですか?」

「君が? しかし……いや。それではお願いするよ。嫌いなものは特にない」

「はい、それでは明日」



 セイラが用意してくれるとは……多分手作りなんだろうな




******

【次の日のお昼】


「お待たせしました」

 ガサガサと葉の擦れる音、セイラが来た

「今来たところだよ」

 バスケットを持っていた。急いでこちらに向かったのだろう。


「今朝作っていて…間に合わなかったものを届けて貰っていました」 
 

 テーブルにクロスを敷き、ランチのセットを始めるセイラ



「ぷっ、くくくっ……」

 その姿を見て思わず笑ってしまった。
 貴族の令嬢の姿ではない。テキパキと丁寧にセッティングをする姿がとても愛らしいと思った。


「なんか手伝える事ない?」


「なんで笑うんですか? 良いです! そこに座っていて下さい」


 セイラがランチの準備をする姿を見ていて癒されると思った。


「はい! 用意が出来ました。お待たせしました」

 サンドイッチやサラダ、フルーツに飲み物、クッキーも用意してある

「これ、全部君が?」


「はい、大体はそうです。昨日の夜にパンを焼いてあったので、挟むだけでしたけど……あっ! でもお肉はシェフに焼いてもらいました。火加減が難しいですから」


「……パンから?」

「……はい。小麦はうちの領地のものですけど、オリバス様はこのような庶民のような食事は口にしませんか? どうしよう」


「いや! もちろん食べる。少し驚いただけだ。パンから作るなんてな」


 令嬢の手作りレベルではない……普通パンから焼くか? それに領地の小麦か……それは気になる



「どうぞ、お召し上がりください」

「いただきます」


 サンドイッチを口に入れた。ボリュームのあるローストビーフに新鮮な野菜


「美味い……なんだ、このパン、野菜も新鮮だし、甘い」

「お口に合いました? はいお茶です」

 どうぞと出してくれたお茶を飲む


「これは?」


「ミントティーです。少しハチミツを入れたのでほんのり甘めです。口の中を爽やかにしてくれます」

 本当にこのパンは美味い。セイラは凄い


「あのさ、」

「はい、なんですか?」

 たまごサンドを手に取るセイラ

「すごく美味い、全体的に。君は凄いな」


「オリバス様にはご迷惑ばかりおかけして、お返しする事も出来ませんでした。どうすればご恩をお返しできるのか分かりませんので、日頃の御礼? お詫びと言うか……」


 ご恩か……。返されたらもうこのようにセイラに会うことは出来ないのだろうか。
 取り敢えず今は食事を楽しむことにした


 ランチをご馳走になった後、セイラはお茶の準備と例のクッキーを出した。


「本当に君は凄いな……これだけ用意をするのは大変だっただろう? 悪かったね」


「好きでやっています。オリバス様が褒めてくださったんですよ?」


「そうだったな。それではありがたく受け取らせてもらう」



 お茶を飲みクッキーを摘みながら、本題に入ることにした







「あの日、君に何があった? レオ・ファーノンとの関係は?」












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