28 / 75
学園祭があります
しおりを挟む
「十一位でした。せっかく教えていただいたのに」
セイラは下を向いて顔を上げやしない
「惜しかったな、テストの答案を見せてみろ。次に繋げよう……」
カバンから綺麗に揃えてあるテストの答案を出してきた。
一番初めに教えた数学は九十九点だった。
「……オイ、名前が書いてないじゃないか! 名前って書かないとマイナスになるんだな……知らなかったよ」
「ぐすっ。言わないでください。ちゃんと名前を書いていたら十位内だったのに……悔しい」
涙を浮かべながら悔しがるほどのことか?凡ミスが多いとは思っていたが、名前とは……
「問題を見たときに、ウィルベルト様に教えてもらったところが出て、嬉しくて解いていたら、名前を書くのを忘れてしまって……」
テスト中に私のことを思い出してくれたのか……それはそれで嬉しい
「なんだ? ウィルベルト・オリバス女の子を泣かせているのか?」
「先生、違います。ウィルベルト様に泣かされたのではなくて、ぐすっ。テストの結果が悔しくて……」
「そういえばセイラ嬢、成績が上がったな。凄いぞ! よく頑張ったな」
「ありがとうございます」
「で、なんで泣かした?」
「誤解があるようですけど、彼女が数学のテストに名前を書くのを忘れて九十九点だったんですよ。それさえなければ十位以内に入れて、彼女のお兄さんからご褒美を買って貰えたそうですよ」
「それくらい買って貰えよ……ケチだなあの男は」
「お兄様は買ってくれると言ったんですけど、断りました。約束と違いますから。でもお小遣いはアップします」
「そうか。それなら次も頑張れよ、ウィルベルト・オリバス疑って悪かったな。じゃあな」
教師は帰って行った。セイラのお兄さんの友人だと言っていたから、セイラを気にかけているようだった。
「ところで何を買ってもらう予定だったんだ? まだ内緒か?」
「……髪飾りです。フローラ様がいつも素敵な物を付けていて、私も欲しくなって」
セイラはよくリボンを付けている。似合っていると思うんだけど……。今日髪を束ねている水色のリボンも可愛らしいが、セイラ的には髪飾りが欲しいのか……。
そう言えば、アルヴィエラ侯爵令嬢はどんな髪飾りを付けていたか……? 全く記憶にない
******
テストが終わったら次は学園祭だ。周りが何やら騒がしい
「君のクラスは何かするの?」
「はい。手作りの小物を作って販売します。売上を孤児院や教会に寄付するみたいです」
貴族の子女の手作り物は人気があるし、売り上げも毎年良くそして好評だと言う
「何を作るんだ?」
「ハンカチに刺繍して出そうと思います。ハンカチは人気があると聞いたので、売れ残ることはないかと思って」
「君が作る物はきっと手間がかかっていて凄いんだろうね」
「人と比べた事がないので分かりません」
「いつも自分で刺繍するのか?」
「はい。侍女のリサが凄く上手で教えてもらったんです! リサは教えるのも上手なんです」
握りしめていたハンカチを見せてきた
「こんな感じです。これは中々上手く出来たと思います」
ラベンダーの刺繍が施してあった……やっぱり上手いと言うか、緻密
「……凄いな。なんでも出来るんだな、尊敬するよ」
「単なる手慰みです。なんせ田舎なもので作るしか無かったので……王都に住んでいればすぐに購入できるのでしょうけど」
「……その考えは間違いではないが、好きではない」
レオ・ファーノンを思い出してしまった!
「勉強を教えてあげた貸しを返してもらおう」
「ハイ……お小遣いは上がりましたが……」
おい何を考えた……?!
「君に金を強請るわけないだろ! 私にも何か作ってくれ。次のテストも教えてやるから」
「そんなものでいいんですか? 何がいいですか? 男の方だとハンカチかクッションカバーとか?」
「ハンカチにしてくれ」
「はい。分かりました。お安い御用です」
******
「レオ・ファーノン! おまえやれば出来るじゃないか! クラスで五位だぞ?」
「まぁ。謹慎中で反省した……」
頭をガシガシと掻いた。この教師にはなんとなく世話になっている
「このまま問題がなければ、来年は三年だ。職員室でも話題に上がっていた。その調子で頑張れよ」
ポンと肩を叩かれた
「ん。迷惑かけたから……成績でしか評価されないしな」
「はははっ。反省しろよ? じゃあな」
「悪かったよ」
「レオ・ファーノン、どこへ行くんだ?」
「図書館だよ。謹慎中に出された課題の本の続きが気になっている」
「えぇっーと、あっちから行ったらどうかな?」
「逆方向じゃねぇか!」
何を言ってるんだ! あの教師は!
「ほら、やっぱり付き合っているんではなくて?」
「オリバス様の笑顔なんてそうそう見れませんもの」
「あの一年生の子が羨ましいですわね」
ウィルベルト・オリバスの事か?視線の先を辿るとカフェテラスで、セイラと仲良さそうに話をしていた。
久しぶりにセイラの笑顔を見た。
ウィルベルト・オリバスと微笑み合う姿。無性に腹が立った
セイラは下を向いて顔を上げやしない
「惜しかったな、テストの答案を見せてみろ。次に繋げよう……」
カバンから綺麗に揃えてあるテストの答案を出してきた。
一番初めに教えた数学は九十九点だった。
「……オイ、名前が書いてないじゃないか! 名前って書かないとマイナスになるんだな……知らなかったよ」
「ぐすっ。言わないでください。ちゃんと名前を書いていたら十位内だったのに……悔しい」
涙を浮かべながら悔しがるほどのことか?凡ミスが多いとは思っていたが、名前とは……
「問題を見たときに、ウィルベルト様に教えてもらったところが出て、嬉しくて解いていたら、名前を書くのを忘れてしまって……」
テスト中に私のことを思い出してくれたのか……それはそれで嬉しい
「なんだ? ウィルベルト・オリバス女の子を泣かせているのか?」
「先生、違います。ウィルベルト様に泣かされたのではなくて、ぐすっ。テストの結果が悔しくて……」
「そういえばセイラ嬢、成績が上がったな。凄いぞ! よく頑張ったな」
「ありがとうございます」
「で、なんで泣かした?」
「誤解があるようですけど、彼女が数学のテストに名前を書くのを忘れて九十九点だったんですよ。それさえなければ十位以内に入れて、彼女のお兄さんからご褒美を買って貰えたそうですよ」
「それくらい買って貰えよ……ケチだなあの男は」
「お兄様は買ってくれると言ったんですけど、断りました。約束と違いますから。でもお小遣いはアップします」
「そうか。それなら次も頑張れよ、ウィルベルト・オリバス疑って悪かったな。じゃあな」
教師は帰って行った。セイラのお兄さんの友人だと言っていたから、セイラを気にかけているようだった。
「ところで何を買ってもらう予定だったんだ? まだ内緒か?」
「……髪飾りです。フローラ様がいつも素敵な物を付けていて、私も欲しくなって」
セイラはよくリボンを付けている。似合っていると思うんだけど……。今日髪を束ねている水色のリボンも可愛らしいが、セイラ的には髪飾りが欲しいのか……。
そう言えば、アルヴィエラ侯爵令嬢はどんな髪飾りを付けていたか……? 全く記憶にない
******
テストが終わったら次は学園祭だ。周りが何やら騒がしい
「君のクラスは何かするの?」
「はい。手作りの小物を作って販売します。売上を孤児院や教会に寄付するみたいです」
貴族の子女の手作り物は人気があるし、売り上げも毎年良くそして好評だと言う
「何を作るんだ?」
「ハンカチに刺繍して出そうと思います。ハンカチは人気があると聞いたので、売れ残ることはないかと思って」
「君が作る物はきっと手間がかかっていて凄いんだろうね」
「人と比べた事がないので分かりません」
「いつも自分で刺繍するのか?」
「はい。侍女のリサが凄く上手で教えてもらったんです! リサは教えるのも上手なんです」
握りしめていたハンカチを見せてきた
「こんな感じです。これは中々上手く出来たと思います」
ラベンダーの刺繍が施してあった……やっぱり上手いと言うか、緻密
「……凄いな。なんでも出来るんだな、尊敬するよ」
「単なる手慰みです。なんせ田舎なもので作るしか無かったので……王都に住んでいればすぐに購入できるのでしょうけど」
「……その考えは間違いではないが、好きではない」
レオ・ファーノンを思い出してしまった!
「勉強を教えてあげた貸しを返してもらおう」
「ハイ……お小遣いは上がりましたが……」
おい何を考えた……?!
「君に金を強請るわけないだろ! 私にも何か作ってくれ。次のテストも教えてやるから」
「そんなものでいいんですか? 何がいいですか? 男の方だとハンカチかクッションカバーとか?」
「ハンカチにしてくれ」
「はい。分かりました。お安い御用です」
******
「レオ・ファーノン! おまえやれば出来るじゃないか! クラスで五位だぞ?」
「まぁ。謹慎中で反省した……」
頭をガシガシと掻いた。この教師にはなんとなく世話になっている
「このまま問題がなければ、来年は三年だ。職員室でも話題に上がっていた。その調子で頑張れよ」
ポンと肩を叩かれた
「ん。迷惑かけたから……成績でしか評価されないしな」
「はははっ。反省しろよ? じゃあな」
「悪かったよ」
「レオ・ファーノン、どこへ行くんだ?」
「図書館だよ。謹慎中に出された課題の本の続きが気になっている」
「えぇっーと、あっちから行ったらどうかな?」
「逆方向じゃねぇか!」
何を言ってるんだ! あの教師は!
「ほら、やっぱり付き合っているんではなくて?」
「オリバス様の笑顔なんてそうそう見れませんもの」
「あの一年生の子が羨ましいですわね」
ウィルベルト・オリバスの事か?視線の先を辿るとカフェテラスで、セイラと仲良さそうに話をしていた。
久しぶりにセイラの笑顔を見た。
ウィルベルト・オリバスと微笑み合う姿。無性に腹が立った
54
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
婚約者に裏切られた私が幸せになってもいいのですか?
鈴元 香奈
恋愛
婚約者の王太子に裏切られ、彼の恋人の策略によって見ず知らずの男に誘拐されたリカルダは、修道院で一生を終えようと思っていた。
だが、父親である公爵はそれを許さず新しい結婚相手を見つけてくる。その男は子爵の次男で容姿も平凡だが、公爵が認めるくらいに有能であった。しかし、四年前婚約者に裏切られた彼は女性嫌いだと公言している。
仕事はできるが女性に全く慣れておらず、自分より更に傷ついているであろう若く美しい妻をどう扱えばいいのか戸惑うばかりの文官と、幸せを諦めているが貴族の義務として夫の子を産みたい若奥様の物語。
小説家になろうさんにも投稿しています。
私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。
オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。
それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが…
ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。
自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。
正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。
そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが…
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
よろしくお願いします。
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜
風見ゆうみ
恋愛
ミアシス伯爵家の長女である私、リリーは、出席したお茶会で公爵令嬢に毒を盛ったという冤罪を着せられて投獄されてしまう。数十日後の夜、私の目の前に現れた元婚約者と元親友から、明日には私が処刑されることや、毒をいれたのは自分だと告げられる。
2人が立ち去ったあと、隣の独房に入れられている青年、リュカから「過去に戻れたら自分と一緒に戦ってくれるか」と尋ねられる。私はその願いを承諾し、再会する約束を交わす。
その後、眠りについた私が目を覚ますと、独房の中ではなく自分の部屋にいた――
※2/26日に完結予定です。
※史実とは関係なく、設定もゆるゆるのご都合主義です。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる