田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました

さこの

文字の大きさ
37 / 75

初めまして

しおりを挟む

「はじめまして、ウィルベルト・オリバスと申します。セイラ嬢とは同じ学園で親しくさせていただいています」



 その後ウィルベルト様に送ってもらったら、なぜか家族との挨拶が始まってしまいました……。なんでこうなったの?


「セイラは部屋に行って着替えておいで、私と父上はオリバス殿と少し話がしたい」

 お兄様がウィルベルト様と話? 動揺しておろおろとしてしまいました……


「え? なんで? どうして?」



「セイラ、着替えておいで」

 にこりと笑うお父様の顔が……少し怖い


 そして微笑むウィルベルト様……



******


「どうか私のことは気軽にウィルベルトとお呼びください」

「お気遣い感謝する。それでは私はユベールと」


「ところでウィルベルト殿、セイラに一体何があったんでしょうか、あなたが何かをしたわけではなさそうですし……」


「はい。そのことでお耳に入れておきたい事がありまして、突然ですがお邪魔しました」


 セイラの身に何があったのか、レオ・ファーノンの事を話した


「……なるほど、分かりました。この件はうちで処理をさせていただきます」

「はい、よろしくお願いします」




「……ウィルベルト殿はうちの妹とどう言った関係でしょうか? 親しくしているとは聞いていますが、友人として……ではなさそうですね」

 気になるところだろう。


「私はセイラ嬢のことを好ましく思っています。私の気持ちを彼女に伝えました」


「セイラは、なんと……」

 ルフォール子爵が少し戸惑ったようだった



「彼女からもいい返事を貰えました。ただし、彼女は家族になんて言えばいいのかと戸惑っていました。私は家族にセイラ嬢の事を既に報告済みですし、昨日の学園祭で母と姉は彼女を見て気に入ったと言っていました」


 にこりと笑う。母に挨拶と言われたらもう断る事は出来ないだろうが、仕方がない。偶然だったから。


「しかしセイラは婚約破棄したばかりで、オリバス伯爵家にとは……親の私が言うのもなんですが、」

「お話し中、失礼します。そこは気になさらないでください。彼女もそこが気になるようでしたので、説明しました。
 元婚約者殿との事はあまり知られていないようですし、学園で知っている者には決して言わないようにと口止めしますので」


「なんの取り柄もない地方の田舎娘が王都に近い伯爵家になど、」


「はい、その点ですが、彼女に説明済みです。取り柄がないだなんて、誰の話か分かりませんね。私は彼女が良いんですから。
 田舎娘と仰いますが、彼女が領地を愛している気持ちに惹かれたのですから全く問題ありません。あと何かございましたら、お答えいたします」



「父上、セイラが良いなら良いんじゃないですか? ウィルベルト殿、心変わりだけはやめてくださいね。これ以上セイラを傷つける男がいるのなら、私は黙っていられませんよ」


「はい、ご安心ください。彼女がいてくれるのならそう言った心配はご無用です。
 彼女もそこが引っ掛かっていたようですが、男が皆元婚約者殿と同じだと思われるのも癪ですからね」


「……そうですか、わかりました」


「すぐに婚約したいと思う気持ちはあるのですが、そこはセイラ嬢の気持ちに任せることにします。私はこそこそと婚約者を隠すつもりなどありませんからね」



******


「ウィルベルト殿はなかなか手強いですね。面接を受けているようでしたよ」
 
 くっくっくと笑う。面白い男だと思った

「うむ。ウィルベルト殿くらい強引な方がセイラには良いのかもしれないな伯爵家に嫁ぐのか……大変だぞ」




「それは追々にして、レオのことですが」


******

 セイラが着替えて来たようだ。プレゼントした髪飾りを付けていた

「ウィルベルト様、お茶を用意しますね」

 リサと言う侍女と共に用意を始めた。彼女がセイラと仲がいいと言う侍女か

「お待たせしました。どうぞ」

 出されたのはハーブティーだった。香りが良くて優しい味がした

「それ、付けてくれているんだね」


 髪飾りに目をやった



「はい、ありがとうございました……白い紫陽花ですね」

 頬をピンクに染めて微笑むセイラが可愛かった



「何かお返ししなくてはいけませんね」

「いいよ、それは私が君にプレゼントしたかっただけだ」

「毎日付けます」

「……いつものリボンもかわいいけどね」


「困りましたね……何を付けたらウィルベルト様はお気に召すのか」


「私の好みに合わせてくれるんだ。そうだな、またプレゼントするよ」

「あの、そう言う意味じゃなくて、」

「わかってる。ただ私のプレゼントしたものをセイラが付けてくれるのが嬉しいだけ」




「なんとなくそれは、分かります」

「ん?」



「私もまたウィルベルト様の持ち物に刺繍を入れても良いですか?」

「もちろん、頼むよ」








「いい感じですわね」
「うむ……」
「婚約の準備をしましょうか?」


「セイラが……遠くへ嫁に……」




 がっくりと項垂れる父と嬉しそうな母、諦めたようで楽しそうなユベールの三人だった











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

婚約者に裏切られた私が幸せになってもいいのですか?

鈴元 香奈
恋愛
婚約者の王太子に裏切られ、彼の恋人の策略によって見ず知らずの男に誘拐されたリカルダは、修道院で一生を終えようと思っていた。 だが、父親である公爵はそれを許さず新しい結婚相手を見つけてくる。その男は子爵の次男で容姿も平凡だが、公爵が認めるくらいに有能であった。しかし、四年前婚約者に裏切られた彼は女性嫌いだと公言している。 仕事はできるが女性に全く慣れておらず、自分より更に傷ついているであろう若く美しい妻をどう扱えばいいのか戸惑うばかりの文官と、幸せを諦めているが貴族の義務として夫の子を産みたい若奥様の物語。 小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。 そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。 やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。 大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。 同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。    *ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。  もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。

私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。 オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。 それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが… ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。 自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。 正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。 そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが… ※カクヨム、なろうでも投稿しています。 よろしくお願いします。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜

風見ゆうみ
恋愛
ミアシス伯爵家の長女である私、リリーは、出席したお茶会で公爵令嬢に毒を盛ったという冤罪を着せられて投獄されてしまう。数十日後の夜、私の目の前に現れた元婚約者と元親友から、明日には私が処刑されることや、毒をいれたのは自分だと告げられる。 2人が立ち去ったあと、隣の独房に入れられている青年、リュカから「過去に戻れたら自分と一緒に戦ってくれるか」と尋ねられる。私はその願いを承諾し、再会する約束を交わす。 その後、眠りについた私が目を覚ますと、独房の中ではなく自分の部屋にいた―― ※2/26日に完結予定です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるゆるのご都合主義です。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

処理中です...