田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました

ファーノン家への抗議

「セイラ！！」


　ウィルベルト様が私のそばにすぐに駆けつけてくれた。ウィルベルト様の従者は、おばさまをすぐさま拘束した。


　その姿を見ていて恐ろしくなり、ウィルベルト様の上着にぎゅっとしがみついた。



「うちの屋敷の前でなんの騒ぎだ？」


　落ち着いた冷たい声が周りに響く


「ユベール殿」
「お兄さま……」



「セイラは中に入っていなさい。リサ頼むぞ」

「はい、かしこまりました。セイラお嬢様こちらへ」

「お兄様！　今のは私が悪いの、だから」

「悪いようにはしないから、屋敷に入りなさい」

　おばさまが心配でウィルベルト様の元を離れることが不安になってしがみついている手に力を入れた。


　そうしたらウィルベルト様は優しい笑みを漏らして私を見てきた。その顔を見ると不思議と気持ちが落ち着いてきました。



「大丈夫か？　痛かっただろうに。まずは、頬が腫れる前に冷やさないと。ここはユベール殿に任せよう。セイラは先に屋敷で待っていてくれる？」



　ウィルベルト様が、私の熱を持った頬を撫でてくれたから頷いた

　


＊＊＊＊＊＊



～ウィルベルト視点～



「さぁ、どうするかな、ウィルベルト殿」


　レオ・ファーノンの母親の対処について


「まずは、子爵家としてファーノン男爵家への強い抗議をお願いします。その後変化がないようなら、うちオリバス伯爵家から抗議をします」


　伯爵家から抗議をすると男爵家の存続の危機だ……。まだセイラと婚約をしていないから、ここまではしたく無いのだが……



「そうだね、レオのことはセイラには関係のないことだ。もちろんウィルベルト殿も。夫人は今後領地から出ないようにしておこうか。放し飼いは危険だ。男爵もわかってくれる事だろう。

　ルカレオの弟に爵位を無事に継がせたいのならそれくらい簡単だろう？　父上はこれからもファーノン男爵家と付き合いをして行かなければならないと言って婚約破棄を穏便に済ませてやったのに、恩を仇で返すとは……

　セイラはレオの母親でもなんでもないのに世話を勝手に押しつけてくるなんて……。婚約者だったら支えることは出来るが、それを拒否したのはレオだ。

　ルカは来年学園に入ってくる予定だが、兄レオの影響を受けなければいいのだが」



「そうですね。このままでは厳しい道のりになりそうですね」



「あぁ、ルカはセイラに随分と懐いていたが学園ではセイラに近寄らないようにと付け加えておこうか」


「セイラは私と婚約するので何かあれば、うち伯爵家は黙っていることが出来ませんね」

　にこりとユベール殿へ笑いかけた



「どさくさに紛れて婚約発言が出てきたな」

「順序は踏みますからご安心ください」


「夫人、聞いていたな？　セイラはあんたの息子に散々蔑ろにされていた。愛し合っていたとか言う戯言は辞めてもらおうか」



　ユベール殿は門番にチラッと目をやって、うちの従者から手を離すようにと言い、夫人を連行する形で追いやった。



「大人しくしていれば、宿まで送って行ってやったのに、セイラに暴力を振るうとは……」

　ユベール殿と夫人がいなくなるのを見た後





「すみませんでした。セイラを守ることが出来ませんでした」



　ユベール殿へ頭を下げて詫びた



「不幸な偶然だ。仕方がなかった……あれがもし刃物だったりしたら、夫人の命はなかった、ファーノン男爵家も全力で潰していたが、後味の悪い事はしたくないが次はない」


　ユベール殿の顔を見るといつもの外向けの顔では無い。表情のない冷めた顔……



　たしかに刃物でセイラが切られていたとしたら、その場で……


　私の命も危険だったかもしれない。
　ユベール殿はセイラには優しい兄だし、母に聞いても穏やかな方と言うが、社交界向けの表の顔なんだろうな……




「ウィルベルト殿、こんなところで話すのもなんだから、中へどうぞ。セイラが戻ってくる前に話をしておきたい」