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セイラ怒る
しおりを挟む「結婚式まであと二年だっけ?」
「? はい、さようでございます」
「その間にもし君が心変わりする事があったらどうする?」
「私が、心変わりですか?」
……なんの話でしょうか?
「殿下! それ以上言うと怒りますよ?!」
ユベールお兄様が恐ろしい声をお出しになりました。プライベートでお会いしているとはいえ王族に向かって……
「君を口説きたいと言ったらどうする?」
お兄様が席を立ってしまいました
「セイラ! 帰るぞ」
「仰る意味がわかりませんわ。私はウィルベルト様の婚約者ですもの」
「私と結婚すると王族に入れ、家族も領地も安泰だろう?」
ウィルベルト様の顔を見ると困った顔をしていました!
「セイラ気にするな、」
お兄様の言葉を遮って言わせていただきます。大事な事は笑顔でゆっくりと話をすると相手の方が耳を傾けてくれるのだそうです。そう言う時は感情的になってはなりません。
「はい。気にいたしません。領地は両親が守っていますし、領民も両親だからとついてきてくれているのです。
それに、王族だなんて田舎娘には到底無理です。伯爵家でも敷居が高いのに……」
くっくっくと殿下は笑い出しました。
「やはり、面白い子だ。大人しそうなのに言いたいことはしっかりと言うんだね。ルフォール領の領民は幸せだろう。一度視察へ行くとするよ」
「はい。その時は兄がしっかりと殿下をご案内致しますので、是非おいでくださいませ、お待ちしておりますわね」
にこりと笑顔を返した。
「ウィルベルトと幸せにね。結婚式には招待してくれる?」
「ご招待のお客様はウィルベルト様にお任せいたします」
「君の友人として招待してくれれば良い」
「殿下を友人……で、ございますかそれは……畏れ多い事で……」
む、むりですっ!
「そうだ、お礼が要らないと言われても手ぶらで返すわけにはいけないから、先日手に入れたお茶を土産に渡そうかな」
メイドが準備を始めましたので、失礼する事にしました。お兄様は殿下と久しぶりにお話をされるそうで、ウィルベルト様と帰る事になりました。
持たされたお茶は、王室御用達……ロイヤルな高級茶でした……
書類を拾っただけなのに
「セイラ、ごめん」
「……ちょっと怒っていますよ」
「セイラの事を少しだけ疑った……殿下はとても良い方だから」
「そんなの知りません。私はウィルベルト様の婚約者ですよ」
「しっかりとしなきゃ、セイラに嫌われる」
「そんな事で嫌いにはなりません、ウィルベルト様は誇りある伯爵家の嫡男です、殿下にも負けていませんよ?」
「……セイラ」
「私は怒っているんです! 助けてくれなかったから」
「殿下に迫られてセイラが……と思うと、」
ウィルベルト様の頬をペチンと両手で押さえた
「私の愛する人はウィルベルト様だけです、私の事を疑いますか?」
ウィルベルト様はわたしの両手を捕まえて
「いいや。ありがとう、今の言葉で自信が持てた。私もセイラを愛しているよ」
ぎゅっと抱きしめられました。ごめんと謝ってきたウィルベルト様がなんだか可愛く思えました。なので……頭を撫でながら
「ウィル、愛していますよ」
と言った。
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