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元モンテス男爵
しおりを挟む貴族でなくなった俺は、本当の意味での牢に入れられた。
思っていたよりも綺麗に掃除はされていたし、三食出るし、快適ではないけれど我慢ができないと言うわけではない。
捕まってから三ヶ月ほど経っただろう……。
ユベール兄さんにルネの事を頼んだら、そこは任せておけ。と言ってくれた。
次会えるのはいつか分からないが、ここから出ることができたら、平民として二人で暮らしていくことになる。
ルネには苦労をかける事になるかもしれないが、悪徳と名高い元男爵の家にいるより良いのかも知れない。
取り調べを受けて知った事実が辛すぎてしんどい……。
カジノで破産した男たちや、クスリで正気を失った男たち……
ルシアの付けていたあの甘い香水は媚薬で、意識が朦朧として挙句にムラムラとしてしまうと言う……
ルシアと初めてベッドを共にしたあの日に、嗅いだ匂い……あれが媚薬だったとは
俺はモンテス男爵として罪を償うつもりなのだが、スケープゴートに使われていたので、爵位剥奪財産没収、平民に落とされ、そのうち、ここから出されるらしい。
もはや、俺はただのレオ……
家宅捜査の末、借用書なるものが出てきたんだそうだ。
誰々にいくら貸しただの、何月何日にどこどこでパーティーが開かれただのと言う証拠がわんさか出てきたらしい。
借りた本人のサインが書かれていたので言い逃れはできない。
裏カジノに出入りしていたり、屋敷でパーティーをしていた家は罰金、当主交代など大きな騒ぎになっているのだそうだ。
因みにミランダ伯爵のパーティーで逃してやった男子学生は今回の事件の大きさから逃れる事は良くないと思ったのだろう、自ら罪を認め一ヶ月の謹慎となったそうだ。
その後に男子学生の友人たちもカジノに通っていたと申告し追加で五人ほどが謹慎になったとの事。ミランダ伯爵の娘に誘われ、カジノに通っていたようだ。
中には借金をしている子もいたらしい。借用書がそれを証明している。
念のため医師に診てもらった結果男子学生達にクスリの影響は、なしだと聞いた。
見ず知らずの男子学生達だが、それにはホッとした。人生を棒に振るところだったから。カジノの事は各自反省して、軌道修正する事を祈る……。
そう言えば、ユベール兄さんの友人の教師はどうしているだろうか?
またカジノで謹慎になる生徒が出たのだから頭を悩ませている事だろう。
ミランダ伯爵は爵位剥奪、財産没収となり、その金でクスリで苦しんでいる者たちへの医療に使うとの事だ。
国として、ミランダ伯爵領の港を閉鎖、クスリを流通していた国への激しい抗議と共に、交流自体がなくなりそうだ。
困るのはあちらの方でこちらとしては問題がないとの事だ。
ミランダ伯爵夫人と娘は北にある罪人が預けられる厳しいと名高い修道院へ、息子はクスリと媚薬の影響でまともな神経ではない為強制入院となった。
クスリの影響は多方面にわたっていたので、更に厳罰化すると言う事だ。
クスリの証拠が出てきたことによりまた拘束された……。
ルシアと元ミランダ伯爵は例の輸入禁止となった国へ逃げたらしい。
我が国には二度と足を踏み入れることができない。
そして隣国に逃亡していた前モンテス男爵が何者かによって殺された……
口封じのためかと言う憶測が飛び交ったが、恐らく今回の事で恨みがある者の仕業だろう……。
牢に入れられて一年ほど経った……ようやく世間は落ち着きを取り戻してきたようだ。
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