お子ちゃま王子様と婚約破棄をしたらその後出会いに恵まれました

さこの

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噂が事実である事を公表するなんて

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 それから数日後……

「フランチェスカ! 婚約をなかった事にしよう」

 昼食を食べ終わった後にクラウディオが急に言い出した。驚きと共に無言でクラウディオを見ると、後ろでゴホゴホとむせる音がした。


「レナート様、大丈夫ですか? お茶です。飲んでください」

 お茶を渡してレナートの背中を摩った。急になにを言い出すのか、驚くわよね。


「ごほっ。大丈夫です、すみません。驚いてしまって、つい……」


「おい、聞いているのか?!」


 そうだった! 驚いて返事が遅れてしまった……


「理由をお聞かせくださいな」


 まずは理由を聞いてみよう。話はそれからだ。そして落ち着こう。お茶を一口飲んだ。今日のお茶は王宮でいただいたバラの香りがする癒しの茶葉を使ったものだった。

 鼻から抜ける香りがなんともエレガント……


「それはフランチェスカを愛していないからだ!」


「はぁ。理由はそれだけですか?」


 くだらない理由だと思った。そんなの初めから知っている。政略結婚? と言うか……あなたの為の婚約ですもの。それでも愛情(家族愛?)を持って接してきたつもりだったわ。



「噂が事実である事を、ここに宣言する! 私はジュデス・ミルカ侯爵令嬢を愛している。お前とは婚約を破棄し愛するジュディを次の婚約者とする!」


 あーあ……こんな事になろうとは。なぜこの場所で? 今日は天気がいいから中庭へ行こうと言ったから珍しいことがあるものだと思った。

 この前はくだらない噂だとか言っていたのに……


 今日は王妃様のお茶会があるから、野菜は騙す程度に少なめに、お肉をメインにしたものを作ってきたから機嫌が良いと思っていたのに……甘味が足りなかったのかしら

 こんな人がいる所でこんな宣言をするなんて馬鹿げた事を……

 あっ! この話を耳にした何人かの生徒が走っていった。すぐにこの事は学園内で周知される事になるだろう。



「殿下! この事は陛下や王妃様はご存知ですか!」


 お茶を飲み復活したレナートがクラウディオに迫りよる。


「私の婚約に関する事は私が決める。私の人生だからな!」


 そりゃ、存じ上げないでしょうね。となると……


「……畏まりました。その婚約破棄承りました」


 美しすぎるカーテシーを披露するフランチェスカ


「わかれば良い。今の瞬間からフランチェスカとは赤の他人である事をここに宣言する」


 だから誰に向かって宣言してるのよ! 周りの生徒に? 全く見せ物じゃないっての! それにお相手の方も不在だし。ふぅっ。


「はい。今から赤の他人として第三王子殿下と距離をとります。わたくしはここで失礼致します」


 退場は潔く! ですわね。







「フランチェスカ様!」

 私を呼び追いかける足音が聞こえましたわ。


「レナート様? 何か?」

 顔面蒼白のレナート。我儘王子のお世話役って大変よね。でも私はお役御免ですもの。なんだか世界が明るく感じるわ! 満面の笑みでレナートを迎えた。


「きっと冗談です……新たな冗談、です。ははははは」

 乾いた笑いですわね。冗談だと思いたい気持ちもわかるけれど、現実ですもの。



「わたくしの学年は午後の授業がありませんの。今から教室に戻ってから帰宅し、この件を家族に話してから王妃様とのお茶会でこの事を話しますわね。レナート様ともお付き合いが長かったですけれど、今までお世話になりましたわ。これから学園以外でお会いする事はございませんが、お体を労ってくださいませね。あっ。そうだ、これ胃腸薬ですの。レナート様にお渡ししようと思っていたんでしたわ。この薬は胃に優しいのでオススメですのよ」

 そっと薬を渡すと苦笑いをされた。


「本当に婚約破棄を受け入れるおつもりですか……」


「えぇ、お望み通りにして差し上げないと癇癪を起こされても困りますし、もう疲れましたわ。朝もゆっくりできますもの。今まで王宮で教育していただいた教師の方には私からもお詫びしておきますわ」


「そう言う問題では、」

「それではレナート様、ごきげんよう」


 足取り軽く学園から帰宅するフランチェスカだった。




 父は昨日領地から帰ってきたばかりで母と過ごしている事だろう。執事に両親に話があると伝えてもらい着替えてから部屋へと向かった。


「フラン、どうした? 改まって話があるなど」
「そうよ。それに今日は王宮に行く日でしょう?」

 両親に心配をかける事になる。それとも怒られるだろうか……言いにくいが自分の口から言わなくてはいけない。


「今日学園でクラウディオ殿下から婚約破棄すると宣言されました。それを承りました!」


 目を瞑って一気に言った。目を瞑ったのは両親の反応を見るのが怖いから……。

「「……………………」」






 無言の二人。その空間に耐えられなくてそぉーっと目を開いて両親を見た。

 すると二人ともにこぉ。と不敵な笑みを浮かべていた。


「そうかい、分かったよ」
「良くやったわ、フランちゃん」


「え……?」

 どう言うことかわからずに、ただただ両親の次の言葉を待った。



「そもそも私は殿下と婚約をさせたくなかった! あのバカ坊は一生バカ坊だ!」
「そうよそうよ! ウチ伯爵家を馬鹿にしていたんだから! あの我儘クソ王子」


「そうなの? お父様もお母様も婚約を望んでいなかったの?」


 バカ坊ってひどいわね。意外と隠せてないのね……


「「うん!」」

 シンクロするように返事をする二人。そのあと大丈夫か? と優しく声をかけてお父様が労ってくれたし、お母様は怒りのあまり扇子を折っていた。

 そしてあとは任せて良いよ。と言ってくれた。怒られるかと思っていたのに……



「ところでフラン、その格好を見る限り今から王宮に行くのだろう?」

 両親に話を通してから王妃様とのお茶会へ行き、ことの成り行きを説明しようと思っていた。王宮へ行くにはそれなりのドレスアップが必要で今日のドレスは落ち着いたものを選んだ。

「はい」


「フランチェスカ……なんて強い子なんだ……よし! 私たちも行こう! 準備を!」


 お母様も頷いていた。



「「「「はいっ」」」」


 ささっとメイドや執事たちが動き出した。一体これから何が起きるのだろうか……でも両親が味方でいてくれると思うと安心した。


 あっという間に準備が整い伯爵家の使用人の優秀さを改めて思い知った。

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