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2-14. 荒廃した大地
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「勝敗がついたら……、復興を手伝いに行こう」
「そんなこと言って、アルシェが死んだらどうするのよ!」
ジェイドはムッとした様子で言う。
「あいつは特別なのか?」
「と、と、特別……、なんかじゃないけど……。追放された時にずいぶん助けてもらって勇気づけられたの」
ジェイドはふぅ……と、息をつくと言った。
「分かった、友達に言って彼が死ぬことのないように警護してもらおう」
「えっ?」
「この情報をくれたのも彼女なんだが、友達の妖狐が今、王都で様子をうかがってくれている。本陣が危なくなったら彼だけでも助けだしてもらうよう頼んでみよう」
「あ、ありがとう!」
ユリアはジェイドの手を取り、涙をぬぐう。
「戦争が終わったら彼女に美味しいものでも食べさせてやってくれ」
ジェイドはユリアの手をギュッと握る。
ユリアはゆっくりうなずいた。
◇
しばらく二人は妖狐からの戦況情報を聞きながら、一喜一憂する落ち着かない日々を過ごしていた。
すると、突然、とんでもない情報がもたらされる。
南西にある大きな島国のサグが挙兵してオザッカに攻め込んだというのだ。オザッカは先の王都侵攻で将校たちが囚われ、軍事力に陰りが出ているのは確かだったが、全く予想外の事態にユリアはうろたえる。
「王国が分裂してるからチャンスだと思ったんだろう」
ジェイドが淡々と言った。
「サグがオザッカを制圧したら王国にも……来るかな?」
ユリアが泣きそうな顔で言う。
「反乱をうまく鎮圧できなければ来るだろうね」
「そ、そんな……」
うなだれるユリア。
ジェイドは心配そうにユリアを見つめ、そっとハグした。
事態はさらに混迷を深めていく。
オザッカをあっという間に制圧したサグはその勢いのまま王都へと侵攻していった。
アルシェたちは王都で籠城をし、サグを迎え撃ったが、なんとその時、島国サヌークの軍隊が電撃的にサグの首都を急襲したとの報が駆け巡る。
これですべての国が戦争に突入し、全土が戦火に覆われることになった。
街の人たちは次々と田舎へと逃げだし、街は閑散として経済もマヒする。さらに軍隊の特殊部隊は敵地の農村の田畑を焼き払い、兵糧攻めを図る。
食べ物を失った人々は次々と飢えに倒れ、地獄絵図があちこちで展開されることとなった。
◇
じっとしてられないユリアは、朝早くジェイドに内緒で王都へと飛んだ。
森を越えると焼け焦げた農村が広がり、人の姿はどこにも見えない。あれほど豊かな実りを見せていた豊穣の大地はただの焼け野原となり、まさに地獄と化していた。
ユリアはあまりのことに呆然とし、涙をポロポロとこぼしながら飛ぶ。
うっうっうっ……。
とめどなくあふれてくる涙を止めることをできないまま、ただ、王都へと急いだ。
遠くに王都が見えてきたが、どうも様子がおかしい。いつもならにぎやかに人が行きかい、あちこちから湯気の上がる活気を見せていた街には何の動きも見られない。
はやる気持ちを押さえながら近づいて行くと、そこはゴーストタウンだった。あれほど活気にあふれていた街には誰もいなかったのだ。
「うそ……」
ユリアはその惨状に言葉を失ってしまう。
つい先日まで王国の中心として十万人の人が暮らしていた活気のある巨大な街が、あちこち焼け焦げた廃墟の街と化してしまっていたのだ。
かろうじて中心部の方に人の気配があり、ユリアは急いで飛んだ。
王宮が見えてきたが、美しかった庭園は掘り起こされ、畑となっており、何人かが畑仕事をしている。
ユリアが着陸しようとすると、魔法が飛んできた。急いでシールドを張って防いだが、次々と攻撃を受け、やむなく引き返すことにする。
敵意がない事をちゃんと示して丁寧にやればよかったのかもしれないが、荒廃しきった王都や農村を見てしまったユリアは、もういっぱいいっぱいでそんな余裕もなかったのだ。
「そんなこと言って、アルシェが死んだらどうするのよ!」
ジェイドはムッとした様子で言う。
「あいつは特別なのか?」
「と、と、特別……、なんかじゃないけど……。追放された時にずいぶん助けてもらって勇気づけられたの」
ジェイドはふぅ……と、息をつくと言った。
「分かった、友達に言って彼が死ぬことのないように警護してもらおう」
「えっ?」
「この情報をくれたのも彼女なんだが、友達の妖狐が今、王都で様子をうかがってくれている。本陣が危なくなったら彼だけでも助けだしてもらうよう頼んでみよう」
「あ、ありがとう!」
ユリアはジェイドの手を取り、涙をぬぐう。
「戦争が終わったら彼女に美味しいものでも食べさせてやってくれ」
ジェイドはユリアの手をギュッと握る。
ユリアはゆっくりうなずいた。
◇
しばらく二人は妖狐からの戦況情報を聞きながら、一喜一憂する落ち着かない日々を過ごしていた。
すると、突然、とんでもない情報がもたらされる。
南西にある大きな島国のサグが挙兵してオザッカに攻め込んだというのだ。オザッカは先の王都侵攻で将校たちが囚われ、軍事力に陰りが出ているのは確かだったが、全く予想外の事態にユリアはうろたえる。
「王国が分裂してるからチャンスだと思ったんだろう」
ジェイドが淡々と言った。
「サグがオザッカを制圧したら王国にも……来るかな?」
ユリアが泣きそうな顔で言う。
「反乱をうまく鎮圧できなければ来るだろうね」
「そ、そんな……」
うなだれるユリア。
ジェイドは心配そうにユリアを見つめ、そっとハグした。
事態はさらに混迷を深めていく。
オザッカをあっという間に制圧したサグはその勢いのまま王都へと侵攻していった。
アルシェたちは王都で籠城をし、サグを迎え撃ったが、なんとその時、島国サヌークの軍隊が電撃的にサグの首都を急襲したとの報が駆け巡る。
これですべての国が戦争に突入し、全土が戦火に覆われることになった。
街の人たちは次々と田舎へと逃げだし、街は閑散として経済もマヒする。さらに軍隊の特殊部隊は敵地の農村の田畑を焼き払い、兵糧攻めを図る。
食べ物を失った人々は次々と飢えに倒れ、地獄絵図があちこちで展開されることとなった。
◇
じっとしてられないユリアは、朝早くジェイドに内緒で王都へと飛んだ。
森を越えると焼け焦げた農村が広がり、人の姿はどこにも見えない。あれほど豊かな実りを見せていた豊穣の大地はただの焼け野原となり、まさに地獄と化していた。
ユリアはあまりのことに呆然とし、涙をポロポロとこぼしながら飛ぶ。
うっうっうっ……。
とめどなくあふれてくる涙を止めることをできないまま、ただ、王都へと急いだ。
遠くに王都が見えてきたが、どうも様子がおかしい。いつもならにぎやかに人が行きかい、あちこちから湯気の上がる活気を見せていた街には何の動きも見られない。
はやる気持ちを押さえながら近づいて行くと、そこはゴーストタウンだった。あれほど活気にあふれていた街には誰もいなかったのだ。
「うそ……」
ユリアはその惨状に言葉を失ってしまう。
つい先日まで王国の中心として十万人の人が暮らしていた活気のある巨大な街が、あちこち焼け焦げた廃墟の街と化してしまっていたのだ。
かろうじて中心部の方に人の気配があり、ユリアは急いで飛んだ。
王宮が見えてきたが、美しかった庭園は掘り起こされ、畑となっており、何人かが畑仕事をしている。
ユリアが着陸しようとすると、魔法が飛んできた。急いでシールドを張って防いだが、次々と攻撃を受け、やむなく引き返すことにする。
敵意がない事をちゃんと示して丁寧にやればよかったのかもしれないが、荒廃しきった王都や農村を見てしまったユリアは、もういっぱいいっぱいでそんな余裕もなかったのだ。
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