49 / 71
4-1. 堕ちた使徒、メイド
しおりを挟む
「主さま! さすがですぅ~!」
ルコアが少女姿で飛んできてヴィクトルに抱き着いた。
「おわぁ! ちょ、ちょっと……あわわ……」
いきなり抱きつかれ、勢いでクルクルと回り、焦るヴィクトル。
でも、ルコアが街を守っていてくれたから全力で戦えたのだ。
ヴィクトルはルコアを優しくハグし、
「ありがとう……」
と、言って、甘く香る優しいルコアの匂いをゆっくりと吸い込む。
◇
その時だった、いきなり風景が全てブロックノイズに覆われる。城壁も山も焦げた麦畑もすべて大小の四角の群れと化し、色を失い……、やがてその姿は全て壊れていき……、最後には全て何もない真っ白の世界になってしまったのだった。
「な、なんだ!?」
ヴィクトルは唖然とする。ルコアは全身の力が抜け、まるで糸の切れた操り人形のようにぐったりと崩れていく。
ヴィクトルは必死に支えようとするが、全く力が入らない。とっさに飛行魔法を使おうと思ったが魔力を全く引き出せなかった。
「えっ!?」
支えきれずに、ルコアはゴロンと真っ白な床に転がった……。
「ああっ! ルコアぁ!」
ルコアは意識を失ってしまっている。
「な、なんだこれは!?」
ヴィクトルは周りを見渡すが……、そこは完全に真っ白な世界。何もなかった。真っ白な床に真っ白な空。距離感も狂う異常な空間だった。
一生懸命魔力を絞り出そうとするが一向に引き出せる気配がない。
「一体どうしちゃったんだ?」
急いでステータス画面を見ようとしたが、画面も開かない。全ての魔法、スキルが無効だった。
ここでヴィクトルは気づく。レヴィアは『魔法は後付け』と、言っていた。であればここは魔法のない『オリジナルの世界』なのではないだろうか?
「坊ちゃま! 妲己壊されたら困るのよね」
いきなり声をかけられ、ヴィクトルは驚いて振り返った。
そこには去年、自分を陥れたメイドが立っていた。メイドはくすんだ灰色の髪を長く伸ばし、胸元が大きく開いた漆黒のワンピースに身を包み、いやらしい笑みを浮かべている。
「お、お前は……?」
「改めましてこんにちは、私はヒルド、この星の元副管理人よ。まさかここまで強くなるとは……さすが大賢者だわ」
ヒルドはニヤッと笑った。
ヴィクトルは予想もしなかった展開に驚き、言葉を失った。レヴィアの言っていた心当たりとは、なんとあの偽証したメイドだったのだ。それも管理者権限を持ってる危険な存在……。ヴィクトルは全身の毛がゾワッと逆立ち、絶望が体中を支配していくのを感じていた。
「あら? もう忘れちゃった?」
ヒルドはドヤ顔で見下ろしながら言う。
一体いつから、何のために? ヴィクトルは必死に頭を働かせる。しかし、さっぱり分からない……。
ヴィクトルは大きく深呼吸をすると叫んだ。
「僕を暗黒の森に追放させたのもお前の仕業か!」
「ふふっ、だって坊ちゃまは無職とか選んじゃうんだもの。せっかくの計画が台無しだったわ。エナンドとハンツが坊ちゃまを疎ましく思ってたので、利用させてもらって追放させたの。でもまさか……生き残ってこんなになっちゃうなんてねぇ……」
ヒルドは感慨深げにヴィクトルを見た。
「ここはどこなんだ? 僕たちをどうするつもりだ?」
「ここは予備領域……、いろんなテストに使う空間よ。レヴィアに見つかると面倒だから来てもらったわ。坊ちゃまにはうちの広告塔になってもらうの。何といっても妲己を倒したアマンドゥスの生まれ変わり……、うってつけだわ」
ヒルドはうれしそうに言う。
「広告塔? ドゥーム教か?」
ヴィクトルはヒルドを鋭い目でにらんだ。
「そうよ。宗教がこの星を救うのよ」
ヒルドはニヤッと笑う。
「救う……?」
「今、この星はね、文化も文明も停滞してるの。このままだと消されるわ」
「消される!? いったい誰に?」
「この宇宙を……統べる組織よ。彼らは活きの悪い星を間引くのよ……」
ヒルドは肩をすくめる。
「それで宗教で活性化を狙うのか? でも、ドゥーム教にそんなことできるのか?」
「ドゥーム教はね、信じるだけで儲かるのよ」
「は!?」
「信者は毎月お布施を払うんだけど、その一部を紹介者はもらっていいの。たくさん開拓した人は大金持ちになるのよ」
ヒルドは手を広げ、うれしそうに言った。
「それはマルチ商法じゃないか!」
「そう、信者を通じて大きく金が動くわ。新たな経済圏が広がるのよ」
「バカバカしい! マルチは国民の多くが信者になった時点で破綻する!」
「そうよ。そしたら次の宗教を立てるの」
ヒルドはニヤッと笑う。
「はぁっ!?」
ヴィクトルは混乱をいとわないヒルドの強引な計画に頭が痛くなった。
ルコアが少女姿で飛んできてヴィクトルに抱き着いた。
「おわぁ! ちょ、ちょっと……あわわ……」
いきなり抱きつかれ、勢いでクルクルと回り、焦るヴィクトル。
でも、ルコアが街を守っていてくれたから全力で戦えたのだ。
ヴィクトルはルコアを優しくハグし、
「ありがとう……」
と、言って、甘く香る優しいルコアの匂いをゆっくりと吸い込む。
◇
その時だった、いきなり風景が全てブロックノイズに覆われる。城壁も山も焦げた麦畑もすべて大小の四角の群れと化し、色を失い……、やがてその姿は全て壊れていき……、最後には全て何もない真っ白の世界になってしまったのだった。
「な、なんだ!?」
ヴィクトルは唖然とする。ルコアは全身の力が抜け、まるで糸の切れた操り人形のようにぐったりと崩れていく。
ヴィクトルは必死に支えようとするが、全く力が入らない。とっさに飛行魔法を使おうと思ったが魔力を全く引き出せなかった。
「えっ!?」
支えきれずに、ルコアはゴロンと真っ白な床に転がった……。
「ああっ! ルコアぁ!」
ルコアは意識を失ってしまっている。
「な、なんだこれは!?」
ヴィクトルは周りを見渡すが……、そこは完全に真っ白な世界。何もなかった。真っ白な床に真っ白な空。距離感も狂う異常な空間だった。
一生懸命魔力を絞り出そうとするが一向に引き出せる気配がない。
「一体どうしちゃったんだ?」
急いでステータス画面を見ようとしたが、画面も開かない。全ての魔法、スキルが無効だった。
ここでヴィクトルは気づく。レヴィアは『魔法は後付け』と、言っていた。であればここは魔法のない『オリジナルの世界』なのではないだろうか?
「坊ちゃま! 妲己壊されたら困るのよね」
いきなり声をかけられ、ヴィクトルは驚いて振り返った。
そこには去年、自分を陥れたメイドが立っていた。メイドはくすんだ灰色の髪を長く伸ばし、胸元が大きく開いた漆黒のワンピースに身を包み、いやらしい笑みを浮かべている。
「お、お前は……?」
「改めましてこんにちは、私はヒルド、この星の元副管理人よ。まさかここまで強くなるとは……さすが大賢者だわ」
ヒルドはニヤッと笑った。
ヴィクトルは予想もしなかった展開に驚き、言葉を失った。レヴィアの言っていた心当たりとは、なんとあの偽証したメイドだったのだ。それも管理者権限を持ってる危険な存在……。ヴィクトルは全身の毛がゾワッと逆立ち、絶望が体中を支配していくのを感じていた。
「あら? もう忘れちゃった?」
ヒルドはドヤ顔で見下ろしながら言う。
一体いつから、何のために? ヴィクトルは必死に頭を働かせる。しかし、さっぱり分からない……。
ヴィクトルは大きく深呼吸をすると叫んだ。
「僕を暗黒の森に追放させたのもお前の仕業か!」
「ふふっ、だって坊ちゃまは無職とか選んじゃうんだもの。せっかくの計画が台無しだったわ。エナンドとハンツが坊ちゃまを疎ましく思ってたので、利用させてもらって追放させたの。でもまさか……生き残ってこんなになっちゃうなんてねぇ……」
ヒルドは感慨深げにヴィクトルを見た。
「ここはどこなんだ? 僕たちをどうするつもりだ?」
「ここは予備領域……、いろんなテストに使う空間よ。レヴィアに見つかると面倒だから来てもらったわ。坊ちゃまにはうちの広告塔になってもらうの。何といっても妲己を倒したアマンドゥスの生まれ変わり……、うってつけだわ」
ヒルドはうれしそうに言う。
「広告塔? ドゥーム教か?」
ヴィクトルはヒルドを鋭い目でにらんだ。
「そうよ。宗教がこの星を救うのよ」
ヒルドはニヤッと笑う。
「救う……?」
「今、この星はね、文化も文明も停滞してるの。このままだと消されるわ」
「消される!? いったい誰に?」
「この宇宙を……統べる組織よ。彼らは活きの悪い星を間引くのよ……」
ヒルドは肩をすくめる。
「それで宗教で活性化を狙うのか? でも、ドゥーム教にそんなことできるのか?」
「ドゥーム教はね、信じるだけで儲かるのよ」
「は!?」
「信者は毎月お布施を払うんだけど、その一部を紹介者はもらっていいの。たくさん開拓した人は大金持ちになるのよ」
ヒルドは手を広げ、うれしそうに言った。
「それはマルチ商法じゃないか!」
「そう、信者を通じて大きく金が動くわ。新たな経済圏が広がるのよ」
「バカバカしい! マルチは国民の多くが信者になった時点で破綻する!」
「そうよ。そしたら次の宗教を立てるの」
ヒルドはニヤッと笑う。
「はぁっ!?」
ヴィクトルは混乱をいとわないヒルドの強引な計画に頭が痛くなった。
32
あなたにおすすめの小説
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる