捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻

文字の大きさ
51 / 71

4-3. 異次元の応酬

しおりを挟む
 右半身は血しぶきをまき散らしながら、起用にケンケンと一本足で飛びはねる。そして、驚異的な跳躍でレヴィアへと迫った。
 レヴィアは両手をガッと持ち上げ、黒いラインを呼び戻すと、背後からヒルドの右半身にとりつかせた。
 同時にヒルドは右手をレヴィアに向け、グガァ! と、叫ぶと、右手から青いビームをレヴィアに向けて発射する。

 激しい爆発音が次々と起こり、同時に二人の身体が青白く光り始めた。

 レヴィアはクッと歯を食いしばると、目の前を右手でブンと振る。すると、真っ黒い画面を四つ浮かび上がった。そして、目にも止まらぬ速さで両手で画面をタップし始めた。

 ヌォォォォォ――――!
 レヴィアが気合を入れ、タップ速度が上がり、金髪が猫のように逆立っていく。
 
 ぐるぎゅぁぁ!
 ヒルドの右半身は奇怪な音を発し、血をビチャビチャとしたたらせると青いビームをさらにまばゆく輝かせた。

 やがて二人の周りにはバチバチと音を放ちながら、四角いブロックノイズが浮かび上がってくる。
 ヴィクトルは世界の管理者アドミニストレーター同士の常識の通じない戦闘に、なすすべなく呆然ぼうぜんと見つめるばかりだった。

「よぉ――――し!」
 レヴィアは叫ぶと勝利を確信した笑みを浮かべ、画面を右手でなぎはらった。

 ぐぎゃぁぁぁ――――!
 ヒルドは断末魔の叫びを上げながらブロックノイズの海へと沈んでいく。

 レヴィアは腕を組んで、大きく息をつくと、
「静かに……眠れ」
 と、少し寂しそうに声をかけた。

 ブロックノイズが収まっていくと、最後に黒い丸い石がコロンと落ち、転がっていく……。
 怪訝けげんそうにそれを見つめるレヴィア……。

 直後、黒い石はどろんと溶けると、白い床をあっという間に漆黒に変え、広がっていく。

「ヤバいヤバい!」
 レヴィアはそう叫ぶと、ヴィクトルとルコアを抱えてピョンと飛んだ。

         ◇

 ヴィクトルが気がつくと、三人は焼け焦げた麦畑に立っていた。
「主さまぁ――――! うわぁぁん!」
 ルコアがヴィクトルに飛びついてきて涙をこぼす。
 ヴィクトルはポンポンとルコアの背中を叩きながらルコアの体温を感じる。
 ひどい目に遭わされそうになったルコアは、身体を震わせながらオイオイと泣いた。
 ヴィクトルは甘く優しいルコアの香りに癒されながら、ゆっくりとルコアの背中をさすり、心から安堵をする。
 管理者アドミニストレーターの圧倒的な力、それはまさに神であり、とても人間の及ぶものではなかった。ヴィクトルはその絶望的なまでの格の違いを思い出し、思わずブルっと身震いをする。そして、二度と戦うようなことがあってはならないと肝に銘じた。

 ふと見ると、レヴィアは小さな水槽みたいな直方体のガラスケースを手に持っている。
「これ、何ですか?」
 ルコアをハグしながらヴィクトルがのぞき込むと、中では黒いスライムのようなドロドロとしたものがウネウネと動いていた。
「これはさっきいた空間じゃな。奴を閉じ込め、コンパクトにしたんじゃ」
 レヴィアはニヤリと笑う。
「え? ではこのドロドロはヒルド?」
「そうじゃ、暴力で訴えてくる者には残念ながら消えてもらうしかない。さらばじゃ!」
 そう言うと、レヴィアは水槽に力を込めた。
 水槽の中に青白いスパークがバリバリっと走り、水槽はブロックノイズの中に消えていく。怪しげな宗教で社会の混乱を狙ったヒルドは、こうやって最期の時を迎えたのだった。
 ヒルドはヒルドなりに社会の活性化を目指したのかもしれないが、暴力を辞さない進め方が本当に人類のためになるのかヴィクトルには疑問だった。

「ヴィクトル――――!」
 ルイーズが駆けてやってきて、ヴィクトルに抱き着く。
 ルコアとルイーズに抱き着かれ、足が浮いて思わず苦笑いのヴィクトル。六歳児は小さく軽いのだ。
「見てたよ! す、凄かった! ありがとう!!」
 ルイーズは声を詰まらせながら言った。
「麦畑全滅させちゃった。ごめんね」
 ヴィクトルはルイーズの背中もポンポンと叩く。
 レヴィアが横から言う。
「魔石が散らばっとるから、あれ使って復興に当てるとええじゃろ」
「あ、ありがとうございます……。あなたは?」
 ルイーズは金髪おかっぱの美少女を見ると、ポッとほほを赤くして言った。
「我か? 我は美少女戦士じゃ!」
 そう言って、得意げに謎のピースサインのポーズを決める。
 ポカンとするルイーズとヴィクトル……。

「レヴィア様、そのネタ、この星の人には通じませんよ?」
 ルコアが突っ込む。
「あー、しまった。滑ってしもうた……」
 恥ずかしそうにしおれるレヴィア。
 ヴィクトルはコホン! と咳ばらいをすると、
「兄さん、彼女はこの星で一番偉いお方で、今回も彼女に危機を救ってもらったんだ」
 と、説明した。
「一番偉い? 王族の方?」
 キョトンとするルイーズ。
「王族よりも偉い……、この星を作られた方だよ」
 ヴィクトルがそう言うと、レヴィアは腕を組んで得意げにふんぞり返った。
「へっ!? か、神様……ですか?」
「神様……とまでは言えんのう。神の使い、天使だと思うとええじゃろ」
 レヴィアはニヤッと笑った。
「て、天使様。私はこの街の新領主、ルイーズです。なにとぞ我が街にご加護を……」
 ルイーズはレヴィアにひざまずいた。
「我はどこかの街に肩入れする事はできん。じゃが、相談には乗ってやるぞ」
 ニコッと笑うレヴィア。
「あ、ありがとうございます」
 ルイーズは深々と頭を下げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...