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4-8. 暗黒龍の祝福
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「なんじゃ、我の事は泣いてくれんのか?」
どこかで蚊の鳴くような声がした。
「へっ!?」
ヴィクトルは驚いて飛びあがった。
しかし、狭い部屋の中にはテーブルがあるだけ……、レヴィアの姿などなかった。
「空耳……?」
首をかしげているとまた声がする。
「ここじゃ、ここ」
声の方を探すと、テーブルの上にミニトマトのような物が動いているのを見つけた。
近づいて見たらそれは真っ赤な可愛いドラゴンの幼生だった。
驚いてヴィクトルは、そのミニトマト大のドラゴンをそっと摘み上げた。
「やさしく! やさしくな!」
手足をワタワタさせながらドラゴンがか細い声を出す。
「レヴィア様……ですよね? これはどうなってるんですか?」
「吐いた血を集めてなんとか身体を再生させたんじゃが……いかんせん量が少なすぎてこのサイズにしかなれんかったんじゃ」
「ご無事で何よりです!」
ヴィクトルは希望が見えた気がしてにこやかに言った。
「それが……。無事じゃないんじゃ。このサイズじゃ管理者の力が使えんのじゃ……」
レヴィアはしおしおとなる。
「えっ? それでは地球には……戻れない……?」
「お主、ひとっ飛び飛んでくれんか?」
「無理ですよ! 魔力を全部奪われてしまいました……」
「か――――! ヒルドめ! なんということを……」
二人はうつむき、嫌な沈黙が続いた……。
「お主、何持っとる?」
「え? 大したものはないですよ?」
ヴィクトルはアイテムバッグから道具やら武器やらを出して並べた。
「宇宙を渡れそうなものはないのう……」
「月は遠すぎますよ……」
そう言いながら最後に暗黒龍のウロコを出した。
「ん!?」
レヴィアが反応する。
「ウロコがどうかしたんですか?」
「これじゃ! ウロコには長年しみ込んだ魔力がある。お主、この魔力で宇宙を渡るんじゃ!」
「え? どうやるんですか?」
「しっかりしろ大賢者! 一番簡単なのはこれを砕いて飲むんじゃ。そうしたら魔力はチャージされる」
「ほ、本当ですか? やってみます!」
ヴィクトルは急いで剣をにぎるとウロコを削ってみる。そして、その削りかすをペロリとなめた……。
ギュウゥゥンとかすかな効果音が頭に響き、魔力が身体に湧き上がるのを感じる。
「おぉ! 行けそうです!」
ヴィクトルはついに見つけた突破口に思わずガッツポーズを見せた。
◇
風魔法を使って丁寧にウロコを粉々にしてソーダで流し込み、MPを満タンにさせる。久しぶりのみなぎる魔力にヴィクトルはつい笑みがこぼれた。
ヴィクトルは空を見上げ、ぽっかりと浮かぶ地球を見ながら、
「急いで戻りましょう! ルコアが心配です」
そう言ってレヴィアをそっと肩に乗せる。
そして、卵状のシールドを何枚か重ねると、窓から飛び立った。
まずはゴツゴツとした岩だらけの荒れ野である月面の上を飛び、飛行魔法が問題なく出せることを確認する。
「では地球に戻りますよ!」
ヴィクトルは地球に向けて飛ぼうとした。
「ちょい待て! お主まさか地球めがけて飛ぼうとしとらんじゃろうな?」
レヴィアが制止する。
「え? 地球に戻るんですよね?」
「か――――っ! しっかりしろ大賢者。月は地球の周りをまわっとるんじゃぞ」
「あ……、地球めがけて飛んだらずれて行っちゃいますね……」
ヴィクトルは回転運動していると見かけ上の力がかかるのを思い出した。まっすぐ飛んでも回転の影響で横にそれて行ってしまうのだ。
「月の公転方向がこっちじゃから……、土星じゃ、あの土星の方向に飛びだすんじゃ」
「えーっと、あれですね、分かりました! それじゃシュッパーツ!」
ヴィクトルは魔力をグッと込め、一気に土星めがけて加速した。
月の重力は軽い、あっという間にグングンと加速していく。
下を見ると真ん丸なクレーターが徐々に小さくなっていく。全然気がつかなかったが、さっきまでいたのは巨大なクレーターの内側だったのだ。見渡せばクレーターが大小織り交ぜて月面を覆っているのが良く分かる。まるで爆撃を受けまくった壮絶な戦場のような造形にヴィクトルは思わず息をのんだ。
「なんじゃ、月がそんなに珍しいか?」
「まさかこんなにクレーターだらけだったなんて、気づきませんでした」
地球から見上げていた時とは全然違う様子にヴィクトルは気圧されていた。
「大賢者も知らんことがたくさんじゃな。そんなことよりもっと加速じゃ! ヒルドに悪さする時間を与えてはならん」
「は、はい……。でもどのくらい加速したらいいんでしょう? ステータス見えないのでわからないです」
「八割じゃ。MPの八割ぶち込め。だいたい分かるじゃろ?」
「え!? 減速はどうするんです?」
「そんなのそのまま大気圏突入じゃ!」
「えっ!? 燃え尽きちゃいますよ!」
「根性で何とかせぇ! 今からシールドをもっと重ねておけ!」
根性論ふりかざすレヴィア。しかし、三十八万キロを渡るのに多少の無理はやむを得なかった。
「……、はい……」
ヴィクトルは言われるままにどんどんと加速した。一刻も早くヒルドからルコアを取り返さねばならない。二度目の人生で誓ったスローライフ、隣にはルコアにいて欲しい。彼女を失う訳にはいかないのだ。
月面がどんどんと小さくなり、いつも見ている、ウサギが杵つきしている模様が分かるようになってきた。まぶしい太陽に美しい青い惑星、地球。そして目がなれると浮かび上がってくる満天の星々に壮大な天の川……。
これが作られた世界だとしても、模倣したオリジナルの世界もやはりこのような世界なのだろう。宇宙と世界の神秘にしばし心を奪われる。
どこかで蚊の鳴くような声がした。
「へっ!?」
ヴィクトルは驚いて飛びあがった。
しかし、狭い部屋の中にはテーブルがあるだけ……、レヴィアの姿などなかった。
「空耳……?」
首をかしげているとまた声がする。
「ここじゃ、ここ」
声の方を探すと、テーブルの上にミニトマトのような物が動いているのを見つけた。
近づいて見たらそれは真っ赤な可愛いドラゴンの幼生だった。
驚いてヴィクトルは、そのミニトマト大のドラゴンをそっと摘み上げた。
「やさしく! やさしくな!」
手足をワタワタさせながらドラゴンがか細い声を出す。
「レヴィア様……ですよね? これはどうなってるんですか?」
「吐いた血を集めてなんとか身体を再生させたんじゃが……いかんせん量が少なすぎてこのサイズにしかなれんかったんじゃ」
「ご無事で何よりです!」
ヴィクトルは希望が見えた気がしてにこやかに言った。
「それが……。無事じゃないんじゃ。このサイズじゃ管理者の力が使えんのじゃ……」
レヴィアはしおしおとなる。
「えっ? それでは地球には……戻れない……?」
「お主、ひとっ飛び飛んでくれんか?」
「無理ですよ! 魔力を全部奪われてしまいました……」
「か――――! ヒルドめ! なんということを……」
二人はうつむき、嫌な沈黙が続いた……。
「お主、何持っとる?」
「え? 大したものはないですよ?」
ヴィクトルはアイテムバッグから道具やら武器やらを出して並べた。
「宇宙を渡れそうなものはないのう……」
「月は遠すぎますよ……」
そう言いながら最後に暗黒龍のウロコを出した。
「ん!?」
レヴィアが反応する。
「ウロコがどうかしたんですか?」
「これじゃ! ウロコには長年しみ込んだ魔力がある。お主、この魔力で宇宙を渡るんじゃ!」
「え? どうやるんですか?」
「しっかりしろ大賢者! 一番簡単なのはこれを砕いて飲むんじゃ。そうしたら魔力はチャージされる」
「ほ、本当ですか? やってみます!」
ヴィクトルは急いで剣をにぎるとウロコを削ってみる。そして、その削りかすをペロリとなめた……。
ギュウゥゥンとかすかな効果音が頭に響き、魔力が身体に湧き上がるのを感じる。
「おぉ! 行けそうです!」
ヴィクトルはついに見つけた突破口に思わずガッツポーズを見せた。
◇
風魔法を使って丁寧にウロコを粉々にしてソーダで流し込み、MPを満タンにさせる。久しぶりのみなぎる魔力にヴィクトルはつい笑みがこぼれた。
ヴィクトルは空を見上げ、ぽっかりと浮かぶ地球を見ながら、
「急いで戻りましょう! ルコアが心配です」
そう言ってレヴィアをそっと肩に乗せる。
そして、卵状のシールドを何枚か重ねると、窓から飛び立った。
まずはゴツゴツとした岩だらけの荒れ野である月面の上を飛び、飛行魔法が問題なく出せることを確認する。
「では地球に戻りますよ!」
ヴィクトルは地球に向けて飛ぼうとした。
「ちょい待て! お主まさか地球めがけて飛ぼうとしとらんじゃろうな?」
レヴィアが制止する。
「え? 地球に戻るんですよね?」
「か――――っ! しっかりしろ大賢者。月は地球の周りをまわっとるんじゃぞ」
「あ……、地球めがけて飛んだらずれて行っちゃいますね……」
ヴィクトルは回転運動していると見かけ上の力がかかるのを思い出した。まっすぐ飛んでも回転の影響で横にそれて行ってしまうのだ。
「月の公転方向がこっちじゃから……、土星じゃ、あの土星の方向に飛びだすんじゃ」
「えーっと、あれですね、分かりました! それじゃシュッパーツ!」
ヴィクトルは魔力をグッと込め、一気に土星めがけて加速した。
月の重力は軽い、あっという間にグングンと加速していく。
下を見ると真ん丸なクレーターが徐々に小さくなっていく。全然気がつかなかったが、さっきまでいたのは巨大なクレーターの内側だったのだ。見渡せばクレーターが大小織り交ぜて月面を覆っているのが良く分かる。まるで爆撃を受けまくった壮絶な戦場のような造形にヴィクトルは思わず息をのんだ。
「なんじゃ、月がそんなに珍しいか?」
「まさかこんなにクレーターだらけだったなんて、気づきませんでした」
地球から見上げていた時とは全然違う様子にヴィクトルは気圧されていた。
「大賢者も知らんことがたくさんじゃな。そんなことよりもっと加速じゃ! ヒルドに悪さする時間を与えてはならん」
「は、はい……。でもどのくらい加速したらいいんでしょう? ステータス見えないのでわからないです」
「八割じゃ。MPの八割ぶち込め。だいたい分かるじゃろ?」
「え!? 減速はどうするんです?」
「そんなのそのまま大気圏突入じゃ!」
「えっ!? 燃え尽きちゃいますよ!」
「根性で何とかせぇ! 今からシールドをもっと重ねておけ!」
根性論ふりかざすレヴィア。しかし、三十八万キロを渡るのに多少の無理はやむを得なかった。
「……、はい……」
ヴィクトルは言われるままにどんどんと加速した。一刻も早くヒルドからルコアを取り返さねばならない。二度目の人生で誓ったスローライフ、隣にはルコアにいて欲しい。彼女を失う訳にはいかないのだ。
月面がどんどんと小さくなり、いつも見ている、ウサギが杵つきしている模様が分かるようになってきた。まぶしい太陽に美しい青い惑星、地球。そして目がなれると浮かび上がってくる満天の星々に壮大な天の川……。
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