異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
145 / 184
第三部 暗殺者編

第145話 雇ってやろう からの だが断る

しおりを挟む
トニノフはガルム小隊のメンバーに接触し、クレイが王都に行ったらしいという情報をなんとか聞き出す事に成功した。(ガルム隊のメンバーもはっきりそう言ったわけではなく、勝手に想像で言っただけなのだが、結果的にそれが当たってしまっていただけなのだが。)

そして、慌てて王都に取って返したトニノフは部下であるダイナドー家の騎士団(トニノフはダイナドー家の私設騎士団の団長でもある。実力の伴わない名前だけの団長なのだが)を使って王都内を捜索させた。

王都内の宿を虱潰しに調べさせる。侯爵の権力を使えば宿から宿泊客の情報を聞き出す事は簡単であった。そして、それらしい客を絞っていくと、クレイの泊まっている宿はすぐに分かった。

だが、昼間は宿にクレイは居ない。仕方がないので夜にまた出直すつもりだったトニノフだが、偶然にも市場を散策しているクレイを発見し、声を掛けたのだ。(実はトニノフは、幸運値だけは異様に高いのである。トニノフは運だけで功績を立て、ダイナドーの側近まで上り詰めた男なのだ。)





クレイは、街で家具を売っている店や材木店、木工職人の店などを見て回っていた。クレイはクランの拠点をリフォームした時から、自分は木を加工して何かを作る事が好きらしい事を自覚し、家具作りや木工に興味を持ち始めていたのだ。

そこで、市場で木の椅子やテーブルを売っているコーナーを見つけ、その店の職人と世間話をしていたところ、トニノフに声を掛けられた。職人と名乗りあったところを、たまたま背後をトニノフの部下が通り、トニノフに報告したのである。

トニノフ 「おい、お前はクレイだな? ヴァレットの冒険者の?」

クレイ 「ああ? そうだが、あんたは?」

トニノフの部下 「無礼者め、こちらにおわすはトニノフ・ユコヴァ伯爵であるぞ。口の聞き方に気をつけろ平民が」

トニノフ 「よい、やめろ」

部下 「…は」

クレイ 「…それで、お偉い伯爵様が、俺に何か御用ですか?」

トニノフ 「さる高貴なお方がお前に会いたいと言っている。一緒に来てもらおうか」

クレイ 「ええっと、忙しいのでまた今度でよいですかね?」

部下 「きっさま…!」
トニノフ 「や・め・ろ」

トニノフ 「さすがはダンジョンを攻略するほどの冒険者、ふてぶてしいな。だが、貴族の誘いは命令と同じだ、断ると厄介な事になるとは思わんか?」

クレイ 「…その、猿高貴なお方というのはどなたで?」

トニノフ 「なんか失礼な言葉が聞こえたような気がしたがまぁいいか…ダイナドー侯爵閣下だ。侯爵様が冒険者に直接会うなど滅多にない事だぞ、光栄に思え」

やれやれと思うクレイ。ダンジョンを踏破した事で、貴族が取り込みに動き出すだろうとは言われていたが、早速始まったわけである。ため息をつくクレイ。

クレイはどこの貴族の下にも付かないと強気で居たが、こうして直面してみると、実家の家族の顔が浮かんで、あまり無茶もできないのであった。

しかも相手はヴァレット家より遥かに家格が上の侯爵である。クレイはヴァレット家とは縁を切ったはずではあるが、余計なトラブルを起こせば、やはりどこかで実家に迷惑が掛かるような気がしてしまう。

仕方なくクレイは、侯爵の呼び出しに応じる事にしたのであった。






王都のダイナドー侯爵邸。
応接間に通され待たされているクレイ。

しばらくすると執事がやってきて言った。

執事 「侯爵様がお会いになるそうだ。ついて来なさい」

クレイ (別にこちらはお会いになりたいわけじゃないんだけどね…)

すると執事はジロリとクレイを睨んだ。

クレイ (あれ、口には出てないよね…? 心を読まれた? 執事ってのは、どこも何か特殊なスキルでも持っているのかね???)

執事に案内されたのは侯爵の執務室。

大きな机の向こう側に座っているのがダイナドー侯爵であろう。机の脇にはトニノフが立っている。

ダイナドー侯爵 「お前がクレイか?」

クレイ 「…失礼ですが、あなたは?」

トニノフ 「こっ、ダイナドー侯爵閣下だ! 言葉に気をつけろ」

ダイナドー 「よいよい。冒険者の言葉遣いにいちいち目くじらを立てるほど儂も狭量ではない。して…? お主がダンジョン・ペイトティクバを攻略したという冒険者で間違いないか?」

クレイ 「…はぁ、そうですが」

ダイナドー 「とてもそんなに強そうには見えないな」

クレイ 「一人でやったわけではありませんので」

ダイナドー 「聞いているぞ、奴隷を使ったらしいな?」

クレイ 「……仲間です」

ダイナドー 「奴隷を仲間と呼ぶか。妙な奴だな。まぁ良い。わざわざ来てもらったのは…」

クレイ 「ダンジョンの管理権限なら、もうヴァレット子爵に譲ってしまいましたよ?」

ダイナドー 「…っ、なんだと?」

ジロリとトニノフを見るダイナドー侯爵。慌てた様子のトニノフ。

ダイナドー 「…随分と素早い対応だな。まぁ良い、わざわざ来てもらったのはその件ではない」

本当はその件もあるのだが、あえてそうじゃないと見栄を張ってしまうダイナドー。とは言え、さすがにヴァレット家の領地にあるダンジョンの管理権限だけを侯爵家が奪うのは難しいかもしれないと内心では思っていたので、それほど動揺はないのであった。

クレイ 「?」

ダイナドー 「お前に、私の下で働く事を許可してやろう」

クレイ 「…はい?」

トニノフ 「侯爵閣下がお前を部下として雇って下さると言っているのだ」

執事(小声で) 『いいから黙って拝領致しますと言え。平民の冒険者の分際で侯爵家に仕えるチャンスが貰えるなど、とてつもない幸運な出来事なのだぞ?』

クレイ 「いや、せっかくのお言葉ですが、お断り致します」

執事(小声で) 『おい、何を言っている?!』

トニノフ 「貴族から平民への誘いは命令と同じだと言ったろう? 拒否すれば、無礼として処刑されてもおかしくはないのだぞ?」

ダイナドー 「ああよいよい。教養のない平民の冒険者なのだ、これから教育していけばよいだろう」

クレイ 「ええ~? お断りいたしますぅ~」

心底嫌そうな顔をしてみせるクレイであった。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...