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第三部 暗殺者編
第154話 クレイ、繰り返し矢を浴びる
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アンリは矢を放った瞬間には、仕留めたと確信していた。弓の達人は『矢が当たってから矢を放つ』と言うそうだ。当たるか外れるかは、矢を放った瞬間にはもう決まっているのだ。的を外す奴は、最初から外れる軌道で矢を放っているに過ぎない。確実に当たる(確信ができる)まで矢を放すべきではない、という事なのだろう。(それが分かるようになるのは一部の達人だけであろうが。)
はたして、アンリが満を持して放った矢は、確実にターゲットに命中した。
だが、様子を見ていたアンリは目を丸くする事になる。頭を射抜かれたはずのターゲットに倒れる様子が見えない。
そして、ターゲットの足元から火が上がり、すぐに消えた。矢は命中するとすぐに発火し灰になる仕掛けがされている。その火が見えたのである。いつもは頭部や胸部などに見える炎が足元に見えたという事は、つまり矢はターゲットに刺さらず、地に落ちたという事になる。
アンリ 「防がれた?! 強力な防具でも身につけていたか?」
アンリの矢は、闇烏が用意した特製の鏃を使っている。よほどの重装甲でなければ金属製の鎧でも貫通できる威力があるのだ。だが、遠目ではあるが、ターゲットは矢を防げるような防具を身につけている様には見えなかった。
ただ、ターゲットは何が起きたのか分かっていないのか、キョロキョロ周囲を見ていた。ターゲットが自分の方を向いた瞬間にはアンリは物陰に身を隠しており、そのまま姿を消した。
* * * *
橋を渡っていたクレイの後頭部で突然音がした。
オートシールドが発動して何かを防いだ音のようだ。
何事かと思ってクレイは振り返ったが、足元に燃える木の棒が落ちていた。これはおそらく矢であろう。
攻撃を受けたのだと理解したクレイはライフルをマジックバッグから取り出し周囲を見た。だが、どこから攻撃されたのか分からない。
もう一度攻撃があるならオートシールドが発動するはず。それを見れば、どちらの方向から攻撃してきたのか分かるはずである。
そして、相手を確認しさえすれば、逃さない自信があった。クレイには転移があるからである。クレイは転移魔法陣を光の魔法によって投写する事で対象物を転移させる事ができる。その投写の射程はほぼ無限である。
それを使えば、逃げようとする相手を自分の近くに転移させてしまう事も可能なのだ。そのまま手足を魔導銃で撃ち、抵抗できないようにして捕らえてしまえばよい。クレイは第二撃を待った。
だが、しばらく待っても追撃はなかった。敵はどうやら一撃目の失敗で逃亡したようである。
クレイ 「襲われる原因に、思い当たる節は……
……あるな」
脳裏に浮かぶは某侯爵の顔……
とは言え確証は何もないのだが。
襲ってきた相手も姿は見えず。足元に落ちた矢は既に灰となり風に舞って消えてしまっていた。
屋敷に乗り込んでダイナドーを直接問い詰めたとしても惚けられて終わりであろう。
逮捕し裁判に掛ければ、隷属の首輪を着けさせて本当の事を自白させる事も可能だろうが、よほど確かな証拠がなければ、高位貴族を逮捕して裁判に掛ける事などできないだろう。裁判となっても、高位貴族の関係者は隷属の首輪による証言を強制できないとも聞く。ダイナドーも言っていたが、この国の法律は貴族のために作られているのだ。
いくら考えても仕方がないので、クレイは諦めて宿に帰る事にしたのであった。
しかし……
クレイはその後も、度々攻撃を受けた。
いつも死角から、油断しているタイミングを狙ってくる。そしてその攻撃は常にクレイの頭または心臓など、正確に致命傷を与える場所へと撃ち込まれていた。おそろしい腕である、プロの暗殺者であろう。オートシールドがなければクレイはとっくに殺されていただろう。
だが、何度攻撃を受けても、オートシールドが攻撃を防ぎ、矢は灰になって消えてしまい、犯人の姿も見えない、という事の繰り返しであった。
(アンリも、ファーストアタックが失敗した事で、証拠を残さないよう、さらに慎重に行動するようになっていたので、クレイも射手の影すらも見る事はできなかった。)
矢を射掛けられるタイミングが絶妙で、目撃者も居ない。証拠の矢も消えてしまう。これでは攻撃されたと言っても誰も信じないだろう。
何度も失敗して焦っていたアンリは、さらに強力な攻撃を行う事にした。矢による物理的な攻撃だけでなく、特殊な魔法効果を付与した矢を使う事にしたのだ。命中すると、矢が刺さると同時に火属性や風属性の攻撃魔法が発動し目標にダメージを与えるのである。
アンリは、クレイの防御は物理的な矢は防げても、同時に発生する魔法攻撃までは防げないと読んだのだ。この矢は非常に高価で、あまり使いたくないモノであったのだが仕方がない。これ以上失敗を繰り返す訳にはいかない。
だが結局、アンリの狙いは外れた。クレイのオートシールドは、物理攻撃だけでなく魔法攻撃をも防ぐ能力があるのだ。
度重なるアンリの攻撃は全てオートシールドによって防がれては居たが、だからと言って放置しておく事もできないので、クレイは対策を講じる事にした。オートシールドを改造する事にした。
リルディオンに行ってエリーに協力してもらいながら、オートシールドの魔法陣の内容をアップデート。シールドに魔法反射の効果を付与したのである。
そして……そんな事とは知らないアンリが、懲りずに再び攻撃して来た…。
はたして、アンリが満を持して放った矢は、確実にターゲットに命中した。
だが、様子を見ていたアンリは目を丸くする事になる。頭を射抜かれたはずのターゲットに倒れる様子が見えない。
そして、ターゲットの足元から火が上がり、すぐに消えた。矢は命中するとすぐに発火し灰になる仕掛けがされている。その火が見えたのである。いつもは頭部や胸部などに見える炎が足元に見えたという事は、つまり矢はターゲットに刺さらず、地に落ちたという事になる。
アンリ 「防がれた?! 強力な防具でも身につけていたか?」
アンリの矢は、闇烏が用意した特製の鏃を使っている。よほどの重装甲でなければ金属製の鎧でも貫通できる威力があるのだ。だが、遠目ではあるが、ターゲットは矢を防げるような防具を身につけている様には見えなかった。
ただ、ターゲットは何が起きたのか分かっていないのか、キョロキョロ周囲を見ていた。ターゲットが自分の方を向いた瞬間にはアンリは物陰に身を隠しており、そのまま姿を消した。
* * * *
橋を渡っていたクレイの後頭部で突然音がした。
オートシールドが発動して何かを防いだ音のようだ。
何事かと思ってクレイは振り返ったが、足元に燃える木の棒が落ちていた。これはおそらく矢であろう。
攻撃を受けたのだと理解したクレイはライフルをマジックバッグから取り出し周囲を見た。だが、どこから攻撃されたのか分からない。
もう一度攻撃があるならオートシールドが発動するはず。それを見れば、どちらの方向から攻撃してきたのか分かるはずである。
そして、相手を確認しさえすれば、逃さない自信があった。クレイには転移があるからである。クレイは転移魔法陣を光の魔法によって投写する事で対象物を転移させる事ができる。その投写の射程はほぼ無限である。
それを使えば、逃げようとする相手を自分の近くに転移させてしまう事も可能なのだ。そのまま手足を魔導銃で撃ち、抵抗できないようにして捕らえてしまえばよい。クレイは第二撃を待った。
だが、しばらく待っても追撃はなかった。敵はどうやら一撃目の失敗で逃亡したようである。
クレイ 「襲われる原因に、思い当たる節は……
……あるな」
脳裏に浮かぶは某侯爵の顔……
とは言え確証は何もないのだが。
襲ってきた相手も姿は見えず。足元に落ちた矢は既に灰となり風に舞って消えてしまっていた。
屋敷に乗り込んでダイナドーを直接問い詰めたとしても惚けられて終わりであろう。
逮捕し裁判に掛ければ、隷属の首輪を着けさせて本当の事を自白させる事も可能だろうが、よほど確かな証拠がなければ、高位貴族を逮捕して裁判に掛ける事などできないだろう。裁判となっても、高位貴族の関係者は隷属の首輪による証言を強制できないとも聞く。ダイナドーも言っていたが、この国の法律は貴族のために作られているのだ。
いくら考えても仕方がないので、クレイは諦めて宿に帰る事にしたのであった。
しかし……
クレイはその後も、度々攻撃を受けた。
いつも死角から、油断しているタイミングを狙ってくる。そしてその攻撃は常にクレイの頭または心臓など、正確に致命傷を与える場所へと撃ち込まれていた。おそろしい腕である、プロの暗殺者であろう。オートシールドがなければクレイはとっくに殺されていただろう。
だが、何度攻撃を受けても、オートシールドが攻撃を防ぎ、矢は灰になって消えてしまい、犯人の姿も見えない、という事の繰り返しであった。
(アンリも、ファーストアタックが失敗した事で、証拠を残さないよう、さらに慎重に行動するようになっていたので、クレイも射手の影すらも見る事はできなかった。)
矢を射掛けられるタイミングが絶妙で、目撃者も居ない。証拠の矢も消えてしまう。これでは攻撃されたと言っても誰も信じないだろう。
何度も失敗して焦っていたアンリは、さらに強力な攻撃を行う事にした。矢による物理的な攻撃だけでなく、特殊な魔法効果を付与した矢を使う事にしたのだ。命中すると、矢が刺さると同時に火属性や風属性の攻撃魔法が発動し目標にダメージを与えるのである。
アンリは、クレイの防御は物理的な矢は防げても、同時に発生する魔法攻撃までは防げないと読んだのだ。この矢は非常に高価で、あまり使いたくないモノであったのだが仕方がない。これ以上失敗を繰り返す訳にはいかない。
だが結局、アンリの狙いは外れた。クレイのオートシールドは、物理攻撃だけでなく魔法攻撃をも防ぐ能力があるのだ。
度重なるアンリの攻撃は全てオートシールドによって防がれては居たが、だからと言って放置しておく事もできないので、クレイは対策を講じる事にした。オートシールドを改造する事にした。
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そして……そんな事とは知らないアンリが、懲りずに再び攻撃して来た…。
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